亀谷敬正自身が先週のレースや予想などを振り返る「先週の亀レビュー」。競馬の構造理解や次週以降のヒントなどが満載です。ぜひご一読ください!
▼先週のトピックス
・皐月賞のディープ後継種牡馬の1、2着に思うこと
・ディープ直仔と後継種牡馬では成功する繁殖牝馬のパターンが変わる理由
・楽しみが多い東京芝1400m
皐月賞のディープ後継種牡馬の1、2着に思うこと
皐月賞は勝ち馬のジャスティンミラノ、2着コスモキュランダともにディープインパクトの後継種牡馬の産駒。そしてノーザンファーム絡みの1、2着。
やはり、今年のキズナは一味違いますね。
▼参考動画/亀谷敬正の競馬血統辞典
【2024年牡馬クラシック展望】パレスマリスの可能性、逆転ならエピファネイア&キズナ!/亀谷敬正のGIアプローチ特別編
なお、この動画は共同通信杯の前に収録したものです。
皐月賞の1、2着馬は、欧州型スプリント血統の繁殖。欧州型のスプリント血統は多くがディンヒルを持つように、オセアニア血統の影響を強く受けていますから、オセアニア系繁殖の1、2着ともいえます。
基礎知識として記しますが、ジャスティンミラノの母父エクシードアンドエクセルはオーストラリアの生産、競走馬であり、父はディンヒル。コスモキュランダの母サザンスピードもディンヒルを持つ馬でオーストラリアの生産、競走馬です。
オセアニア繁殖や欧州型スプリント血統馬の繁殖は「ディープインパクト直仔」とは相性がいまひとつでした。
ところが「ディープ後継種牡馬」やドゥラメンテの産駒は、ディープ直仔とは欧州型のスプリント血統と相性が良いのです。
ドゥラメンテ産駒のドゥレッツァも母モアザンセイクリッドはオセアニア(オースラリア)で生産された繁殖牝馬。その母父はディンヒル。オセアニアを代表する種牡馬でした。
そして、コスモキュランダの母と同様、ドゥレッツァの母モアザンセイクリッドも既にノーザンファームはセリに出したため、ノーザンファームにはいません。ジャスティンミラノはセレクトセールにも上場されず、クラブでも募集されなかった馬です。
これほどまでに、ノーザンファームが放出したオセアニア系繁殖の仔に走られてしまうのは、パラダイムシフトが起きているからだと思うのです。その原因は、ディープ後継種牡馬が成功する確率の高い配合パターンは、ディープインパクトやハーツクライ直仔と異なるから。
ディープ後継種牡馬の産駒は、ディープ直仔とは成功しやすい繁殖牝馬のパターンが異なることも、結果を残せなかった繁殖牝馬の仔が続々と結果を出している原因のひとつだと考えられます。
単行本「血統の教科書2.0」などでも書いたように、サンデーサイレンスとディープインパクトも成功する配合パターンは異なりました。これと同じように、今度は「ディープ直仔と後継種牡馬は配合パターンが異なる」ことによって引き起こされたパラダイムシフトが起きている、ボクはそう思うわけです。
ディープ直仔と後継種牡馬では成功する繁殖牝馬のパターンが変わる理由
ではなぜ、サンデーサイレンスとディープインパクト、そしてディープインパクトと後継種牡馬では、成功する配合パターンが異なるのでしょうか? その根本的な仕組みは「血統ビーム」の根本概念を説く理屈とほぼ同義です。
「血統ビーム」では「欧州競馬と米国競馬は、競馬で勝つために必要な能力が逆方向を向いている。よって競馬には両立しない能力がある」という基本概念を提唱しています。
その概念に基づき、「日本の芝の根幹距離競馬は、欧州血統と米国血統の中間的バランスが要求されることが主である」とも定義しています(基本的なことは「血統の教科書2.0」に書かれています)。
たとえば、サンデーサイレンスはディープインパクトよりも米国要素が強いです。あたりまえの話ですが、サンデーサイレンスはケンタッキーダービー馬です。ディープインパクトは欧州の至宝ハイクレア牝系です。
日本向きの欧州と米国の中間的なバランスを成り立たせるには、サンデーサイレンスはフランス血統が向いていますし、ディープインパクトにはアメリカ血統が向くわけです。
サンデーサイレンスに米国血統では米国要素が強くなりすぎてしまいます。逆に、ディープインパクトに欧州血統だと、欧州要素が強くなりすぎてしまいます。ディープインパクトに欧州の名血サドラーズウェルズとでは、日本で活躍する確率が著しく下がる一方で、欧州では驚異的な確率で成功しています。
これほどまでに、同じ種牡馬の産駒でも成功配合が異なるのは、同じ種牡馬の産駒でも国によって成功しやすい繁殖牝馬の方向性が違うからでしょう。
この概念に基づいて考えると、ディープ直仔と後継種牡馬も成功パターンは異なるはずです。ディープ後継種牡馬は往々にしてディープよりも米国要素が強いからです。
ディープインパクトは母父ディンヒル系との配合馬で日本の芝2000m以上のG1勝ち馬を1頭も出せませんでした。また母父サドラーズウェルズ系との配合馬でG1を勝った牡馬はJRAの芝競馬では1頭もいません(先ほども書いたように欧州では驚異的な勝率にも関わらず)。
ところが、ディープ直仔が出走しない皐月賞になった途端、ディープ後継種牡馬の産駒が1、2着。2頭はいずれもディープ直仔の時には日本で大成功出来なかったディンヒルの影響を受けた繁殖牝馬。
ディープ直仔時代に良さを出せなかったことで低評価になってしまった繁殖牝馬が、ディープ後継種牡馬が主となったクラシックレースでまとめて息を吹き返したわけです。
今にして思えば、2024年の皐月賞はパラダイムシフトの象徴でもあった。数年後にそう振り返ることになるのではないでしょうか。
楽しみが多い東京芝1400m
さて、今週末からは春の東京開催が開幕。我々にとって楽しみな舞台のひとつが東京芝1400m。
年明けの東京芝1400mではリアルサロンスペースに集ったサロンメンバーの皆さんと検討した雲雀Sで100万馬券を的中。300万円以上の馬券を皆さんと共有できました。
▼参考記事
先週末(2/10~2/11)のリアルサロンレポート
▲2024/2/10(土)東京10R、共同馬券購入企画“亀馬券プロジェクト”で352万5480円を的中
東京芝1400mは「亀AI」で抽出できる特定のパターンや、特定の血統を買い続けるだけで穴馬券が当たりやすい舞台。2022年以降の東京芝1400mの古馬混合戦も、
・「亀AI」の評価A~E
もしくは
・YouTubeチャンネル『亀谷敬正の競馬血統辞典』買いパターン
に該当する全ての単勝を買っても単勝回収率290%、複勝回収率105%。63%のレースで該当馬のいずれかが馬券になっています。
東京芝は主流能力が発揮しやすいため、人気馬が走りやすいのですが、東京芝1400mは人気馬も走りにくい舞台。ちょっとした不利な条件になってしまうと、人気馬が力を出しにくい舞台です。
2022年以降、東京芝1400mの古馬混合戦は単勝10倍以内の単勝回収率が54%、複勝回収率が71%。単勝10倍以内の馬のワイドBOXも回収率65%。単勝10倍以上の人気薄が複数馬券圏内のレースは40%。
単勝オッズは確定するまで分からないので、「スマート出馬表」の推定人気順位1~5人気の馬で検証しても、単勝回収率64%、複勝回収率71%。
逆にいえば、人気薄はちょっとした恵まれる要素があれば、人気馬を逆転しやすいので期待値が高い条件。今開催もおいしいレースを見逃さないようにしたいものです。