亀谷敬正 オフィシャル競馬サロン
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2026/03/08 (日)

上原佑紀調教師・独占インタビュー~注目3歳馬の動向と期待の古馬勢、調教で大事にしていること

上原佑紀調教師が開業後ほどなくして、レースの使い方や馬作りに大変興味を抱いた。そして奇遇にも、上原佑紀調教師は海外研修時代から、亀谷のコラムや配信を見てくれていたという。

そんな縁もあって、亀谷競馬サロン・リアルサロンスペースにもお越しいただき、競馬観や育成論について語り合う機会にも恵まれた。

今年の3歳世代には、グリーンエナジー、フォルテアンジェロ、ライヒスアドラーなど、クラシック戦線を担う馬たちが揃い始めている。その調整過程を通して、上原佑紀厩舎の調教理念の一端に迫る。

聞き手:亀谷敬正

お話を伺った上原佑紀調教師



【グリーンエナジー】
3歳 3戦2勝 京成杯(GIII)・1着

――グリーンエナジーはセレクトセールの上場馬ですが、この馬はセリでも見られてましたよね?


上原佑紀調教師(以下、上原師):見ていました。良い馬だなと思っていましたが、まさか自分の厩舎に入るとは思いませんでした(笑)。後日、オーナーサイドから電話があって打診されたんです。嬉しかったですね。非常に馬格があって、歩きも柔らかい馬です。


――元々はゴドルフィンの繁殖牝馬ですからね。母系にダルシャーンが入っていて、まだまだ緩いですよね。京成杯を勝ちましたが、今後のローテーションはどのように予定されていますか。


上原師:オーナーとも相談したのですが、皐月賞へ直行しようと考えています。勝った後は思わず「ダービーに直行も考えています」と口走ってしまったのですが(笑)。


――トニービンとダルシャーンの影響で緩さがある分、東京での伸び勝負には高い適性を示しそうですよね。


上原師:そう思っています。京成杯ではまだ直前で強い負荷をかけていませんし、それだけ成長余地があると思っています。


――皐月賞に直行するのは、レース間隔を空けて成長を促す意味合いもあるのでしょうか。


上原師:間隔を空けて成長を促すことで、ダービーの頃にはもう少し強い負荷の調教ができると考えています。


――中間の外厩はチャンピオンズヒルズですか?


上原師:はい。チャンピオンズヒルズは施設が本当に素晴らしいです。特に坂路の傾斜と馬場のクオリティが安定しています。


――チャンピオンズヒルズにはどんな申し伝えをするのでしょうか?


上原師:折り合いと操縦性を重視してもらっています。あとはレース目標と、「これくらいに戻したい」というイメージを伝えて任せています。


――ちなみに、チャンピオンズヒルズで連携しているスタッフはどなたになりますか?


上原師:奥野さんが多いですね。若くて非常に熱心です。彼には「時計を出すことよりも、道中のリズムを重視して欲しい」と伝えています。例えば、後ろから馬に来られた際にムキになって走るのではなく、我慢させる練習ですね。精神面のコントロールを一番にオーダーしています。


――帰厩のタイミングは、どれくらいの時期を考えられていますか?


上原師:1か月前ぐらいに戻したいですね。外厩で土台を作ってもらって、最後の仕上げと細かい癖の修正は自分の手元でやりたいです。


――ゆとりのあるローテーションでどこまで成長するか、そして一段強い負荷をかけた時にどの程度上昇するのか、楽しみですね。


上原師:期待しています。



【フォルテアンジェロ】
3歳 3戦1勝 ホープフルS(GI)・2着

――フォルテアンジェロも皐月賞へ直行ですか?

上原師:はい。この馬もまだ体が幼くて、440キロそこそこしかありません。あまり攻めすぎると減ってしまうので、成長を促しながらの調整になります。まだまだ成長途上の馬という感じです。今は成長を促すことを重視していますが、適性的には皐月賞が結構面白いのではないかと思っています。


――成長曲線的には秋以降も見据えていきたい感じでしょうか?


上原師:そうですね。現状でフォルテアンジェロが力を出せる範囲までの負荷はかけますが、それ以上に追い込み過ぎないようには気を配っています。


――フォルテアンジェロの外厩はノーザンファーム天栄ですよね。天栄からはレースのどれぐらい前に戻しますか?


上原師:基本的には1か月前には戻してもらうようにお願いしています。


――外厩から1か月前に戻すのはどの馬も同じですか?


上原師:体質の弱い牝馬などは体が減ってしまったりするので、そういう馬は2週間前という場合もあります。


――天栄で連携を取ることの多い厩舎長はどなたになりますか?


上原師:厩舎長の高橋さんですね。主任は岡崎さんです。基本的には岡崎さんと厩舎長とコミュニケーションを取ることが多いですね。

フォルテアンジェロに関しては、操縦性は結構優等生なので、主に体力面の状況を共有しています。馬がまだ成長途上で非力なので、「負荷をかけすぎずに成長を促す」といった点を共有しています。


――先生のところは、小さい馬でもしっかり乗りますよね。


上原師:小さい馬や成長途上の馬でも追い切りはしっかりやりますが、その翌日、翌々日の調教メニューは軽くします。


――フォルテアンジェロの父フィエールマンも、古馬になってから調教の負荷が上がりましたし、若駒時代は軽くすることで古馬になって成長を見せましたからね。秋以降の上昇も楽しみですね。



【リゾートアイランド】

3歳 4戦2勝 ジュニアC(OP・L)・1着

――リゾートアイランドはセレクトセール出身ですが、厩舎に入られた経緯は?


上原師:この仔は自分で選ばせてもらいました。オーナーの柳田さんは、リゾートアイランドが初の所有馬なんですよ。予算4000万ということだったんですが、ちょうど落札できました(笑)。


――選んだ決め手は?


上原師:馬体です。


――この馬は母父がフランケルです。そこは重視されましたか?


上原師:血統も好きなんですけど、この馬に関しては馬体と、予算です(笑)。結果的にフランケルの血が入っていて良かったです。フランケルは「日本に入っても絶対成功するだろうな」と思っていましたし。


――先生のところには欧州血統の要素が強い馬が多いですよね。その点は意識されているのですか?


上原師:大物を出すのは結構ヨーロッパ血統なのかな? というイメージは確かにありますが、たまたまですね。


――というのも、先生の「調教スタイル」にも合うのかなと思いまして。堀厩舎にいらっしゃいましたし、ヨーロッパの厩舎でも働かれていますから。


上原師:そう言われると、そうですね。


――例えば、アメリカ血統の馬は乗り込み過ぎると気持ちがキレてしまう場合があるように思っています。「乗りすぎるとキレてしまう馬」っていますでしょうか? 具体的な馬名は出せないでしょうが(笑)


上原師:牝馬は乗り込み過ぎてはいけないケースもあると思いますね。そういう馬に関しては、追い込まないように気をつけています。気持ちがキレやすい馬は、キレる前にどこかでリセットしないといけないですよね。とはいえ、「クラシックを諦めるわけにはいかない」とかが出てきてしまうこともあるでしょうね。



【ライヒスアドラー】

3歳 2戦1勝 東スポ杯2歳S(GII)・3着

――ライヒスアドラーは弥生賞で皐月賞の出走権を狙う形ですね。ただ、今後に向けては2着以内で賞金を加算したいですね。


上原師:そうなんですよ。3歳初戦は共同通信杯を目標に進めていたのですが、賞金加算が狙えそうな状態には仕上がりませんでした。そこでオーナーサイドと相談して、弥生賞に切り替えさせてもらいました。


――ここまで2戦は中山、東京ですが、適性的には?


上原師:デビュー戦の中山でも相当強い勝ち方をしていますからね。この馬は佐々木大輔が主戦なんですが、大輔も「中山の方が向いているかもしれない」という話でした。皐月賞にはもちろん出したいと思っているので、そのあたりも含めて弥生賞を選びました。

※取材後、ライヒスアドラーは弥生賞で2着。



【ポッドベイダー】
4歳 11戦5勝 大和S(OP)・1着

――ポッドベイダーはダートに転向して好調ですね。OP勝ちで今後は交流重賞も視野でしょうか。


上原師:次走は東京スプリントを予定しています。


――今後もダート路線ですか? 芝でもマーガレットS勝ちがありますが。


上原師:またどこかで芝も使いたいとは考えているのですが、成長して乗り込み量を増やしていくにつれて、ダート向きのパワーがついてきた感じがします。


――パワーと相反する柔らかさが減ってきたと。


上原師:そうなんです。2歳の時は柔らかさがあったのですが、パワーアップとともに硬さが出てきているので、ダートに切り替えていきました。


――パワーと柔らかさを同時に伸ばしていくのは難しいと思うのですが、そのあたりはどう調節していくのでしょうか?


上原師:基本的には長所を伸ばしていこうと。ポッドベイダーの場合、今はパワーが長所なので、そちらを伸ばしていきます。


――そのような場合、調教メニューも変わっていくのでしょうか?


上原師:ポッドベイダーは、既に坂路中心のメニューになっていますね。


――坂路でパワーを強化していくと、柔らかさと伸びは減っていきますよね。


上原師:そうですね。長所のパワーを強化していくことになります。



【ニシノティアモ】
5歳 12戦5勝 福島記念(GIII)・1着

――ニシノティアモは喉の手術明けから4連勝で重賞も勝ちましたね。


上原師:デビューの時からすごく才能を感じていたのですが、喉が最初から問題だったんです。DDSP(走行中に「ゴロゴロ」と喉が鳴る病気)がグレード3ぐらいで、「どこかで手術したいな」っていうのはデビュー前から思っていました。

それでも2歳の時からそこそこ走っちゃったんで、なかなかタイミングがつかめずにいて。ちょっと1勝クラスで頭打ちになってきたタイミングでオーナー(西山茂行氏)から手術の承諾を得ました。


――喉の手術が成功したことも大きいですよね。どこでされたんですか?


上原師:これは三石でやってもらいました。


――ドクターは上原先生が選ばれたんですか?


上原師:はい。うちでお世話になってる獣医さんにドクターを紹介してもらいました。


――獣医さんとの連携も大事ですよね。


上原師:もちろんです。堀先生の下で働かせてもらっている時からお世話になっている先生です。そこも堀先生に感謝です。


――喉を治して復活するのに、どれくらいの時間がかかるのでしょうか?


上原師:経過にもよりますが、喉の場合は術後2週間ほどで乗り出せます。


――とはいえ、すぐにレースには出れませんよね。


上原師:3か月ぐらいは必要ですかね。


――それは、オーナーには痛いですよね。


上原師:オーナーにご理解をいただきまして、その休養期間に馬自体が成長したことも大きかったです。



【上原厩舎が調教で大事にしていること】

――最後に好調・上原厩舎の調教について伺います。調教で大事にしていることについて教えていただけますか。


上原師:私は馬術部出身ですので、角馬場でのフラットワーク、つまり準備運動を非常に重視しています。ハミ受けの確認や体の左右差を整える作業を、時間をかけて丁寧に行ってから、本調教に入ります。


――以前は先生ご自身も積極的に調教に乗られていましたが、最近は乗る機会を減らしていますよね。


上原師:研修先で藤沢先生から「調教師は自ら乗るのではなく、下から全体を見る立場であるべきだ」と教わりました。その考えを実践したいのです。


――スタッフ全体が安定して質の高い調教をできる体制を築くことが重要だということですね。今後のさらなる飛躍を楽しみにしております。本日はありがとうございました。

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