毎週日曜日更新の当連載『フロントライン』は、現代競馬のキーマンとも言えるノーザンファーム天栄の場長・木實谷雄太氏に、競馬に関するさまざまなお話を伺うロングインタビューコラムです。聞き手:亀谷敬正。
▼今回の主なトークテーマ
・オーソリティ、サウジ&ドバイの両獲りへ!
・ソングラインの長距離輸送、装着した鼻テープ
・ダートの本場アメリカでの鍛え方
オーソリティ、サウジ&ドバイの両獲りへ!
――オーソリティのネオムターフC、ソングラインの1351ターフスプリント優勝、おめでとうございます。コンシリエーレもサウジダービーで3着と大健闘でしたね。
まずはオーソリティについて伺います。シーザリオの仔であるエピファネイアやリオンディーズの産駒と同じように、オーソリティもシーザリオ(オーソリティの母母)の影響が大きい印象があります。
木實谷:オーソリティはオルフェーヴル産駒なので、デビュー当初はステイゴールドの系統らしく、東京よりも中山のような小回りコースの方が向くのではと思っていました。デビューから函館、中山、中山、中山と使ったのですが、結果的には私の見込み違いだったようで(苦笑)。
――結果は、広い、平坦、直線の長いコース巧者ですね。
木實谷:まだ使ってはいないですが、昨年の春はダート戦線に転向するプランもありました。筋肉量も豊富で、パワーもあるので、ダートでも走りそうな気がするんですよね。ただ、シーザリオの仔はからっきしダートは走らないので、血統的に半信半疑な部分もあります。
――(母シーザリオの)エピファネイアの仔もダートを走りそうですが、実際は走らない馬が多いです。
木實谷:なかなか馬は走ってみないと分からないものですね(笑)。
――次走はドバイシーマクラシックですね。サウジからドバイというローテーションになります。
木實谷:今回の臨戦過程は、関東のノーザンファーム生産馬としては初めてなので、いろいろ試行錯誤しながらという部分は大きいですが、500キロを超える大型馬で、普段とは勝手の違う環境下での調整は大変だと思います。
馬が運動する時間はそうでもないですけれど、基本的に暑いので、その辺の過ごし方と、球節の骨折とか既往歴のある馬なので、坂路コースやウッドチップコースのない中でどれくらい乗り込めるかというところだと思います。
ジャパンCの時は在厩でうまくいきましたけど、休み明けのアルゼンチン共和国杯がプラス12キロ、中2週のジャパンCがプラス2キロでしたから、ウェイトコントロールも一つの課題ですね。
――ちなみに、体重計の数字は気になるものですか? 調教師でも気にしない方もいますよね。
木實谷:数字も目安としては大事だとは思います。仮に重いと判断すれば、普段は1000m乗るところをちょっと距離を長くしようとか、色々工夫ができますよね。ただ、今回はいつもと馬場が違うので、脚元にどこまで負担をかけずに乗れるかとか、選択肢の少ない中で判断していかなくてはなりません。
幸い、サウジからドバイへの移動後も脚元の状態は変わりなく順調に調整ができていると聞いていますので、このまま無事にレース当日を迎えてほしいと願うばかりです。
――そう考えると、サウジが本命だったとかあります?
木實谷:そんなことはありません。サウジもドバイも両方狙っています。ドバイの方が賞金も高いですしね。左回りに良績があることを念頭に、春から初夏にかけて国内だとオーソリティに適したレースがなかったものですから、当初から2つともターゲットにしていましたよ。
ソングラインの長距離輸送、装着した鼻テープ
――次はソングラインについてお聞きします。阪神に輸送した桜花賞、阪神Cが惨敗だったので、輸送競馬が苦手だと思っていたのですが、今回は飛行機輸送とはいえ、長距離輸送で結果を出しました。