毎週日曜日更新の当連載『フロントライン』は、現代競馬のキーマンとも言えるノーザンファーム天栄の場長・木實谷雄太氏に、競馬に関するさまざまなお話を伺うロングインタビューコラムです。聞き手:亀谷敬正。
▼今回の主なトークテーマ
・エリザベス女王杯に挑むテルツェット最新情報
・日本馬が凱旋門賞を勝つための道とは?
エリザベス女王杯に挑むテルツェット最新情報
――今回はエリザベス女王杯に出走予定の馬についてお伺いします。
木實谷:今のところ使う予定はテルツェット1頭になります。昨年と同じ臨戦過程になりますが、1年経って、成長を感じていますので、いい結果を期待しています。
――テルツェットだけということは、ローズS・2着のサリエラは出られるコンディションにない?
木實谷:ローズSの反動は大きく、筋肉の硬さがほぐれなかったり、馬体重が戻らなかったりと、現状はまだ回復に努めている段階です。例えるなら、素質のある小学生の女の子がプロ野球の試合に出たようなものですから。まずは回復に専念したいと思っています。
――出走予定のテルツェット、状態はいかがでしょうか?
木實谷:クイーンSは蹄の状態に少し不安があったのですが、回復し、ここまで順調に調整を進めることができています。秋華賞上位の3歳馬も出てくるようですし、あとは相手関係でしょうね。
日本馬が凱旋門賞を勝つための道とは?
――なるほど。今年のエリザベス女王杯は外国馬の参戦もあるようですが、このタイミングで凱旋門賞について振り返ってみたいなと。今年は日本馬が全く走れませんでした。
木實谷:天栄の馬がいないので詳細は分かりませんが、直前の雨も影響があったのかもしれませんね。私もフランスで使わせていただいた時に、馬場を歩くとネチョネチョというか、まとわりつくような馬場でしたから。
――これは個人的な意見ですが、種牡馬選別の場としては、凱旋門賞の馬場は最悪だと思うんですよね。アメリカとヨーロッパの比較で言うと、馬場が均一になりやすいアメリカの方が、結果的に良い種牡馬、繁殖が産まれています。
凱旋門賞の馬場は運の要素が強すぎるんですよね。極端に言うと、パン食い競争の要素が入るというか。単に脚が速い方が勝つわけではないというか。
木實谷:そういう表現は初めて聞きました(笑)。
――別にパン食い競走がダメとは言ってないですよ(笑)。どんな馬場になるか分からない状況に対応できる準備も強さの1つではありますから。ただ、その強さを日本で結果を残している馬に求める必要があるのかな?と。ノーザンファームはこれからも凱旋門賞に挑戦し続けるのでしょうか?