毎週日曜日更新の当連載『フロントライン』は、現代競馬のキーマンとも言えるノーザンファーム天栄の場長・木實谷雄太氏に、競馬に関するさまざまなお話を伺うロングインタビューコラムです。聞き手:亀谷敬正。
▼今回の主なトークテーマ
・現役引退が決まったイクイノックスを振り返る
・朝日杯FSのシュトラウス、関西遠征に向けて
・ターコイズS出走馬の最新情報
現役引退が決まったイクイノックスを振り返る
――イクイノックス、ジャパンCも素晴らしかったです!
木實谷:ありがとうございました。天皇賞・秋同様、好位から楽に抜け出して、非の打ち所がないレース振りだったと思います。天皇賞・秋はペースが速かった分もあって、最後は少し苦しくなりましたが、ジャパンCは最後まで楽な感じで走りきることができて、本当に素晴らしかったです。
――木實谷さんも安心してレースをご覧になったのでは?
木實谷:残り200mで後続の脚色を確認できたのもありますが、イクイノックス自身の走りや、ルメール騎手の手応えを見て大丈夫だなと思いました。前回と違ってイクイノックス自身の通過ラップも緩かったですし、1コーナーで3番手のポジションをとれてからは、比較的冷静にレースを見ることができたと思います。
――春の時点で今年の最大目標はジャパンCだと伺っていました。天皇賞・秋を使うことでジャパンCにピークを持って行く、中3週で上昇させるということでしたが。
木實谷:上昇したかどうかは、内容を見て皆さんに判断していただくことかと思いますが、レースで馬自身が証明してくれたのかなと思います。
――馬が本格化したら、中3週ぐらいで使うのが理想的なローテーションなんでしょうか? 上昇曲線を描くという意味では。
木實谷:基本的に競走馬は1走ごとに強くしていく、パフォーマンスを上げていくものだと考えています。ただ、若い時期はレース後の疲労の回復に古馬より時間が掛かるため、次のレースに向けての調整期間も長く見ておく必要があるんですよね。それが成長とともに回復が早くなって、次のレースの目標も早めに設定できるようになってくるということです。
ですから、イクイノックスもデビュー当初は回復に時間が掛かって、なかなか次走の予定を立てるのに苦労したのですが、今ではレース後、次走でパフォーマンスを上げるために3週間もあれば十分という感じですね。
――ボクはスピードと体力では成長曲線が違うということを発信しているのですが、なかなか理解されません(笑)。イクイノックスは晩成タイプだったのでしょうか?
木實谷:成長曲線に関して言えば、馬ごとに個体差があるのは間違いありません。イクイノックスは東スポ杯2歳Sの時からスピード能力の高さを証明していましたが、4歳になって、体が丈夫になり、トレーニング量を増やせるようになってからは、更にパフォーマンスを上げることができました。
丈夫になったということが、体力がついたという認識であれば、スピード能力と体力の成長曲線は、亀谷さんが仰るように違うのかもしれませんね。
――木實谷さんは数多くの名馬に携わってこられましたけど、それこそアーモンドアイと比べると、イクイノックスはどういう馬でしたか?
木實谷:アーモンドアイは早くから完成されていたと思います。桜花賞から凄いパフォーマンスでしたし。この感じを維持できればいいなという感じでした。イクイノックスは身体が丈夫になって、乗り込めるようになって、そしてパフォーマンスも上がってきたという馬ですね。正直、まだ上がありそうなぐらいですから。底が見えない馬でした。
――そういう意味ではイクイノックスの方が育てる難しさがあったのでしょうか?
木實谷:改めて我慢することの大事さを教えてくれた馬でした。我慢せずに出走スケジュールを組んでいたら、才能を開花させられなかったかもしれません。
朝日杯FSのシュトラウス、関西遠征に向けて
――さて、イクイノックスが引退しても、2歳にも素質馬が目白押しです。朝日杯FSに出走するシュトラウスは東スポ杯2歳Sを勝っての参戦になります。
