毎週日曜日更新の当連載『フロントライン』は、現代競馬のキーマンとも言えるノーザンファーム天栄の場長・木實谷雄太氏に、競馬に関するさまざまなお話を伺うロングインタビューコラムです。聞き手:亀谷敬正。
▼今回の主なトークテーマ
・阪神JFのアルバンヌなどGIレースの振り返り
・香港遠征回顧、ロマンチックウォリアーなど香港馬の凄さ
・中山&京都金杯出走馬最新情報
阪神JFのアルバンヌなどGIレースの振り返り
――今回は12月上旬の注目レース振り返りからお願いします。まずステイヤーズSですが、1番人気のクロミナンスが内ラチ沿いを抜けてきての3着でした。
木實谷:折り合いもついていて、あとはスペースさえあれば…というところでしたね。惜しい競馬でした。
――オールカマー後に反動が出て、アルゼンチン共和国杯からステイヤーズSに目標を切り替えたということでしたが、その影響はありましたか?
木實谷:いえ、すっかり回復していました。追い切りではドゥレッツァをアオるぐらいで、むしろ状態は良かったと思います。
――昨年2着のシルブロンは9着、ラスカンブレスは11着でした。レース前の当欄では、シルブロンは身体が絞れれば、ラスカンブレスは精神的に持つかどうか、とのことでした。
木實谷:シルブロンはプラス体重になってしまい、長い距離を走るには身体づくりの面でもう少し必要だったという印象です。ラスカンブレスは懸念していた通り、折り合いの部分ですね。途中でかなり脚を使う形になってしまったので、仕方ないかなと思っています。
――翌日のチャンピオンズCでは先行したシックスペンスが11着という結果に終わりました。
木實谷:スタートして2番手を取れたところまでは良かったのですが、ジョッキーの話ではそこからまったくリラックスすることなく走ってしまって、最後は余力がなかったということでした。あの行きっぷりを見る限り、前半で我慢できていれば脚を使えていたと思うので、次に向けてちゃんと我慢できるようにやっていく必要がありますね。
――翌週の阪神JFはアルバンヌが6着、ショウナンカリスが7着でした。アルバンヌは大幅馬体減に加え、スタートで出遅れてしまいましたね。
木實谷:もうちょっとスムーズだったら、着順は変わっていたように思うのですが、天栄から送り出した時点で体重も減っていましたし、直前の追い切りが少し強くなってしまったこともあって、こちらでの調整も含めて、体重の調整がうまくいかなかったところが響きましたね。
ショウナンカリスは大外枠がかわいそうでした。ただ、それでも大バテせずに頑張って走ってくれたと思います。
――ショウナンカリスは今回が初のマイル戦でしたが、距離的にはいかがでしょうか?
木實谷:今回のように速いペースのマイル戦だと、もう少し体力をつけていく必要がありますね。やっぱり最後は少し止まっているので。
香港遠征回顧、ロマンチックウォリアーなど香港馬の凄さ
――同日の香港マイルではエンブロイダリーが11着でした。外々を回された形でしたね。
木實谷:懸念していた輸送もクリアして、現地でも落ち着いて調整できていました。向こうに行って暖かくなって毛艶も良くなりましたし。ただ残念ながら、この馬にはちょっと馬場が重かったです。結構柔らかい馬場でしたね。
――香港ヴァーズではアーバンシックが10着。脚をタメられませんでしたね。
木實谷:我慢がきかずというところですね。最初の入りがとても遅かったのですが、周りのジョッキーも超一流ですので、内側に入れてもらえず、どんどん外に張り出されてしまいました。結局、外で我慢できずに上がっていってしまいました。
――香港カップのローシャムパークは最後方から良い感じで上がってきましたが、5着止まりでした。
木實谷:3~4コーナーにかけて後方にいた3、4頭でごちゃごちゃしてしまって、外に弾き飛ばされてしまいました。そこから一気に4コーナーにかけて脚を使ってしまったので、あそこでひと我慢できていれば、3着はあったんじゃないかなという内容でした。そういう意味では、ちょっともったいなかった。脚の使いどころひとつだったと思います。
――喉の手術明けから2走して、今後の良化が期待できそうですね。
木實谷:そうですね。そういう感触はありますし、今回の調整内容、取り組みというのは今後の競馬に活かせるものだったと思います。
――ちなみに、ロマンチックウォリアーやカーインライジングなど香港の一流馬に対してはどのような印象をお持ちなのでしょうか?
