競馬予想TV!などのメディアで活躍中のキムラヨウヘイ氏と、競馬雑誌・サラブレの人気長寿企画「金満血統王国」でお馴染みの大臣によるクロストークコラム『競馬“真”格言』。
今回のトークテーマは中京記念。果たしてどのような格言が提唱されるのか、ぜひお楽しみください!
大臣: 函館2歳Sは早生まれの牝馬を狙えということで推奨した1月生まれの牝馬ブトンドールが見事1着。人気薄を狙うつもりが、4番人気と予想外に人気だったのがちょっと残念でしたが。
キムラ: この時期の2歳戦で最も人気に影響する持ち時計では一番遅い馬だったので、数年前だったら人気になっていない馬だと思います。
大臣: 逆に函館2歳Sは過去4年、持ち時計1位の馬が1番人気になって凡走しているので、今年はてっきりクリダームが1番人気になるのかと思ったら。
キムラ: クリダームが1番人気のスプレモフレイバーから大きく離された3番人気だったのも非常に意外でした。
大臣: 函館2歳Sは持ち時計の速い馬が強いレースじゃないということが、多くの人に知れ渡ってきたのかな? Hペースで逃げて2着粘ったクリダームは、この後も重賞で活躍しそうな「本当に強い馬」だったんじゃないですか?
キムラ: 今年の函館2歳Sは1、4、5着が牝馬。3着のオマツリオトコは牡馬の1月生まれ。そんな中、クリダームは函館2歳Sで有利な属性ではない3月生まれの牡馬なのに2着に好走。レース内容からも今後も重賞で活躍できる可能性が高い馬だと思います。
大臣: じゃあ、中京記念の格言にいきましょう。
【格言】ダート重賞では前走GI組は素直に買うべし、芝重賞では前走GI組は疑うべし
キムラ: 中京記念は通常はその名の通り中京で行われるレースですが、2年前が阪神、去年と今年だけが小倉での変則開催。今回は使い捨てになってしまう小倉の中京記念というよりも、中京記念だけではなく芝のGIIIレース全般にも使える格言として“前走クラス別の成績”をテーマとします。
まず、この中京記念でも人気を背負って飛ぶパターンの1つは、前走GIレース出走組となっています。
大臣: 中京記念は、中京で行われようが、阪神で行われようが、小倉で行われようが、毎年のように前走GIレース出走組が人気馬がコケまくってるレースなんですよね。
キムラ: 過去10年で前走GIレース出走組の上位人気馬(1~5人気馬)は[1-0-1-17/19]、複勝率10.5%、単勝回収率25%、複勝回収率16%と散々な成績になっています。これはあくまで人気上位馬の話で、人気薄だと前走GIレース出走組の数字は悪くないですが。
▲過去10年 中京記念の前走クラス別成績(1~5人気限定)
大臣: ちなみに去年の中京記念は、前走がヴィクトリアマイルだったディアンドルが牝馬で55キロを背負い4番人気で8着。一昨年の中京記念も前走がGIレースで人気になっていた3頭が全て4着以下に凡走しました。
キムラ: これは中京記念特有の傾向というよりも、実は芝のGIIIレース全てでそうなんですよ。2021年以降の芝GIIIレースにおいて、前走GIレース出走組の上位人気馬(1~5人気馬)は単複回収率71%で、サンプル不足の前走・新馬戦出走組を除けば、他のどのクラスの出走組よりも低い数字になっています。
大臣: マーメイドSやラジオNIKKEI賞も同じ傾向がありますね。前走GIレース出走組の人気馬がよくコケる。これは春の大目標であるGIで目一杯に仕上げた馬が、行きがけの駄賃的にメンバーレベルの下がったGIIIで安易に賞金を狙いにいき、重いハンデを背負わされて凡走するパターンが多いからだと思うんだけど。
キムラ: 確かにそうですね。実はこれと真逆の傾向が見られるのがダートの重賞レースで、近年は毎年の様に前走中央GIレース出走組を買うだけで、単複回収率がプラスになるという結果が続いています。これらの要因としては芝とダートにおけるGIレースの価値の違いにあります。
1年間の中で様々な距離、コース、年齢、性別などのカテゴリー別に数多くのGIレースが設定されているのが芝路線です。それに対して、オールマイティーな施行条件で、フェブラリーSとチャンピオンズCという僅か2つのGIレースしか設定されていないのがダート路線です。
大臣: 交流重賞のGIでも、帝王賞や東京大賞典は中央のGIレースに匹敵するレベルにあるけど、これらのレースを勝てるのはダート路線のトップオブトップのほんの一部の馬だけですよね。
キムラ: 芝のGIレースとダートのGIレースでは、出走馬の平均クオリティにかなりのギャップが生じるというわけです。そんな芝でもGIレース好走(出走)という一見まばゆい実績は、世間では高評価されるのが常。それが過剰評価される中では、前走GIレース出走組は押しなべて次走で美味しくない馬になりがちです。
ダート路線ではほんの一握りのGI&GIIレースに対して、その他大多数のGIIIレース&OP特別レースという構図で、クラス間のレベルの格差は大きいです。
大臣: だからダート重賞は前走より格の下がったレースに出てきた馬を安心して狙えますよね。オメガパフュームやテーオーケインズがJRAのGII、GIIIに出てきた時とか。JRAのGIII・アンタレスS→地方交流重賞のGIII・マーキュリーSも明らかに格下がりだから、バーデンヴァイラーも頭から狙えましたよ。ヒモは間違えたけど(笑)。
キムラ: 芝路線(2~3歳限定戦除く)で年間に施行されるクラス別のレース数は、GIレース=12、GIIレース=22、GIIIレース=35、OP特別=47と、バランス良く配置されているので、クラス間のレベル格差はそこまでは大きくありません。
それが芝GIIIレースの上位人気馬(1~5人気馬)について、前走クラスが高ければ高いほどに回収率が低くなり、前走クラスが低ければ低いほどに回収率が高くなる(前走3勝クラス→前走OP(非リステッド)→前走OP(リステッド)→前走GIII→前走GII→前走GIの回収率順)という逆転現象に繋がっているものと考えられます。
大臣: ということで今年の中京記念のメンバーを見ると、ミスニューヨークがいかにも危なそうですね。前走がヴィクトリアマイルでハンデは牝馬で54キロ。小倉芝1800m巧者で、去年のこのレースでも8番人気4着と好走してるので人気になるでしょ。去年は52キロで、今年はそこから2キロ重くなっています。