最近の競走馬は色んな名前がつけられていて、馬名の由来を調べるのも楽しいですよね。競馬中継中にも私が馬名の意味をデジタル世代の相方に尋ねてサクサクっと調べてもらう…ってことがよくあります。今月6日の土曜午前の中継でも、そんなことがありました。
東京競馬場の未勝利戦に出走した馬の名前は「プリーチトヤーン」。例によって私が「どんな意味?」と隣の黒澤詩音に尋ねると、すぐに調べてくれました。
「チチチチハハトハハチチハハです。」
「?????」
しばらく、この娘は何を言ってるんだろう…と首をかしげていたのですが(笑)、どうやら「父父母の名前がプリーチで、母父母の名前がヤーン」というのが馬名の由来とのこと。そんなやりとりをツイートしたところ、プリーチトヤーンを管理する斎藤誠調教師ご本人が「プリーチとヤーンは全姉妹なんですよ」と教えてくださいました。
1989年生まれのPreachはA.P. Indyとの間に、タピットやパイロの父でもあるPulpitを出しました。その2歳上の全姉Yarnはヨハネスブルグの母であるMythや種牡馬Tale of the Cat(父Storm Cat)、米G1を2勝したMinardiなどを出した名牝。それぞれの子孫が血を紡ぎ、全姉妹のクロスが実現しているわけです。
6日のレースで2着だったプリーチトヤーンは20日の土曜日にも東京競馬場の未勝利戦に出走してきて、この日、パドック解説だった勝馬の野口誠さんと血統の話になりました。野口さんによると、2018年の米国3冠馬ジャスティファイもPreachとYarnの全姉妹クロスを持っているとのこと。プリーチトヤーン(父パイロ、母父Tale of the Cat)は3×3、ジャスティファイ(父Scat Daddyその父ヨハネスブルグ、母母父がPulpit)は4×4。それぞれPreachとYarnの全姉妹クロスを持っているのです。
調べてみると、プリーチトヤーンと同じ2歳世代で既に勝ち上がっている中にもPreachとYarnの3×3全姉妹クロスを持つ馬がいました。7月の函館で勝ち上がりコスモス賞で3着に入った藤沢和雄厩舎のフィフティシェビー(父Tapit、母父Tale of the Cat)です。
実は今年の凱旋門賞を勝ったドイツ調教馬のトルカータタッソも「全姉妹クロス」を持ちます。トルカータタッソの父アドラーフルークの祖母Alyaは、アーバンシー(凱旋門賞馬。ガリレオ、シーザスターズの母)やキングズベストの母であるAllegrettaの全妹。トルカータタッソの4代母がAllegrettaなので、3×4の全姉妹クロスを持っているのです。
馬名の由来をきっかけに「全姉妹クロス」について注目させてくれたプリーチトヤーン。20日のレースは惜しくも2戦続けての2着でしたが、土曜午前のキャスター2人の間では、特注目の競走馬なのです。
2021/11/25 (木)
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。