JRA賞・前編/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ

11日、2021年度のJRA賞受賞馬の発表がありました。

その年に中央競馬で活躍した競走馬や関係者などを讃えるJRA賞。古くは1954年に競馬予想紙を発行していた啓衆社(現在の南関専門紙・ケイシュウNEWS)が設けた「啓衆賞」が最初なのだそうで、その後1972年にJRA機関紙「優駿」主催の「優駿賞」に引き継がれ、1987年からJRA主催の「JRA賞」になりました。

受賞馬は、競馬記者クラブに加盟する記者や競馬専門紙の代表ら報道関係者の投票結果(今回は296名)に基づき、さらにそれらの代表8人で構成される「JRA賞受賞馬選考委員会」で審議のうえ選定されます。「人」が選ぶだけに、これまで物議を醸した選定が無かったわけではありません。

有名なのは1999年の年度代表馬の選定です。春秋天皇賞を勝ち、ジャパンカップで凱旋門賞馬モンジューらに勝ったスペシャルウィーク、そのスペシャルウィーク相手に宝塚記念と有馬記念で2戦とも勝利したグラスワンダー、そしてフランスに滞在しG1サンクルー大賞を勝利し凱旋門賞で僅差の2着という結果を出したエルコンドルパサーの黄金世代三つ巴の争い。結果、エルコンドルパサーが最優秀4歳以上牡馬と年度代表馬に選ばれ、スペシャルウィークとグラスワンダーには特別賞が授与されました。国内で1度も走らなかった馬が受賞した1999年のJRA賞は、20年以上経った今でも競馬ファンの酒席の話題です。

競馬というのは、同じG1格付けのレースでも、賞金や実際の格はそれぞれ大きく違います。国内外、国、中央と地方。その場所によって「競走馬の能力は一定ではない」だけに、その中から一定の部門に分けて選ぼうとすれば悩ましい問題を引き起こすのは当然です。獲得賞金順とかポイント制といった客観的評価を可視化する方法も1つの手ですが、そうなると、直視したくない現実を見る競馬ファンも出てくるかもしれません。

2018年の最優秀3歳牡馬は暮れの有馬記念を勝ったブラストワンピースが選ばれましたが、この年のダービー馬は先日急死したワグネリアンでした。ちなみに私は(投票権は持っていませんが)ダートG1級3勝のルヴァンスレーヴがふさわしいと思っていました。有馬記念、ダービー、ダートG1級3勝。ちなみに賞金で比較すると、①有馬記念②ダービー③ダートG1級3勝の順になるので得票順と同じです。もしポイント制だったら･･･。それぞれ何ポイントになるのでしょうか。これはこれで揉めそうです。

さて、ネットを騒がせているマルシュロレーヌが何の受賞もならなかった問題。先日のグリーンチャンネルの中継でも話した通り、私個人的には2021年の日本競馬最大のニュースは、マルシュロレーヌのBCディスタフ制覇の快挙だと思っているので、何らかの賞をあげてほしかったと思っていますが…。この件は、また次回にしようと思います。