日曜日、東京競馬場では共同通信杯が行われます。去年の勝ち馬は後の年度代表馬エフフォーリア、3着馬は後のダービー馬シャフリヤール。他にもGIを6勝したゴールドシップをはじめ過去10年の優勝馬のうち7頭が後のGI馬。3着まで広げると、その数は13頭にまで増えます。去年のエフフォーリアが4番人気だったように、当時の評価を覆して、その後大活躍する馬も多く、先々の出世馬を見つけ出したいものです。
さて、この共同通信杯には「トキノミノル記念」という副題が付けられています。1951年に皐月賞と日本ダービーの二冠を制したトキノミノルは、10戦全勝で日本ダービーを優勝した17日後に破傷風のためこの世を去り「幻の馬」と呼ばれました。1984年に制定された顕彰馬制度で初年度に殿堂入りした1頭で、共同通信杯がまだ「東京4歳ステークス」という名称だった1969年からトキノミノルの名が副題となりました。
現在、JRAの重賞で馬名を冠されたレースには、他にセントライト記念、シンザン記念、それに、2020年に改称した弥生賞ディープインパクト記念がありますが、副題に馬名が冠されているのは、この「共同通信杯(トキノミノル記念)」だけです。かつては、1951年から80年まで中山競馬場の芝1800mで行なわれていた「TBS杯クモハタ記念」や、秋の福島の父内国産馬限定戦としてお馴染みだった「カブトヤマ記念」がありましたが、こちらは2003年に役目を終えました。
名馬の名を後世に伝えるという意味で、認知度が高い重賞に馬名を冠したレース名がもっと増えてもいいのかなと個人的には思います。一方で「弥生賞」のレース名変更には、昭和・平成からの競馬ファンの1人として、私も多少抵抗がありました。伝える立場としても「報知杯弥生賞ディープインパクト記念」は少し長すぎます(笑)。
かと言って副題扱いですと「共同通信杯(トキノミノル記念)」と副題まで記載されているものは少ないようです。競馬の伝え手として、名馬の名が冠された意味を意識しながら、レース名を出来るだけ副題まで紹介したいと思っています。このレースが「GⅢ」であるのが不思議なほどの出世レースとなっているだけに、尚更です。
さて、トキノミノルのオーナーは大映の社長・永田雅一氏だったこともあり、死後、トキノミノルをモデルとした映画が制作され1955年に公開されました。この映画「幻の馬」は、日本ダービーが節目の80回目を迎えた2013年にグリーンチャンネルで放映され、私も拝見しました。作品のクオリティはともかく(お察しください)、東京競馬場の初代スタンドやコース、60年以上前の「大ケヤキ」、バリヤー式発馬機によるスタートの様子を色鮮やかなカラー映像で見ることができる大変貴重な映像資料です。角川書店からDVD化もされていますので、観ていないという方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
2022/02/10 (木)
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。