函館競馬は今週末が6週間の開催最終週です。土曜日には世代最初の2歳重賞・函館2歳S(G3)、日曜日には59回目を数えるハンデ重賞・函館記念(G3)と、2つの重賞が組まれています。
函館競馬の馬券検討で重要なファクターと言えば「函館巧者」探しです。夏になるたび、この四文字熟語が競馬ファンの脳裏に浮かぶ理由は、函館競馬場のコースが独特の特徴を持っているからでしょう。
函館コースの特徴をざっと挙げると…
・芝が洋芝である
・最後の直線が約260mとJRA全10場で最も短い上に実は高低差約1mの下りである
・3~4コーナーがスパイラルカーブ(入り口が緩やかで出口が急な複合曲線コーナー)である
・2コーナーから3コーナー過ぎにかけて高低差3.5mの上りである
こんなところでしょうか。一見、オーソドックスな小回りコースに見えて、なかなかに“クセ強”のコースです。
これらコースの特徴や、夏であること、滞在競馬であること、といった条件が競走馬の能力・適性と噛み合い、他場と比べて函館でこそ良績を残す「函館巧者」。その代表的存在といえば、やはりエリモハリアーでしょう。
2歳時2002年のデビューから10歳の2010年まで足かけ9年間、計63戦を走ったジェネラス産駒の騙馬は、生涯の9勝のうち4勝を函館競馬場であげ、重賞・函館記念を3連覇するという快挙を成し遂げました。
エリモハリアーの函館初勝利は5歳だった2005年の夏。格上で挑んだ巴賞でした。不良馬場の中、本田優騎手を背に7番人気ながら勝利してオープン入りを果たすと、つづく函館記念は北村浩平騎手とのコンビで臨み、こちらも6番人気の評価ながら快勝して重賞初制覇を果たしました。巴賞→函館記念の連勝は1990年のラッキーゲラン以来、15年ぶりの快挙で、これ以降、同一年に両レースを連勝した馬は出ていません。
翌2006年の夏、エリモハリアーは安藤勝己騎手とのコンビで函館のレースに参戦しました。1番人気に支持された巴賞ではクビ差の2着と惜敗しますが、再び1番人気に推された函館記念は馬込みから抜け出して勝利。レース史上4頭目、函館競馬場が洋芝になった1995年以降では初めてとなる函館記念連覇を達成しました。
その後、屈腱炎を患い療養に入ったエリモハリアーは、翌年の夏、“自分の庭”函館で復帰しました。しかし10か月というブランクが響いて復帰初戦の巴賞は11頭中最下位という大敗を喫します。そして、つづく函館記念。前年1番人気だったエリモハリアーは7番人気という低評価でレースに臨みました。
この年の函館記念のパートナーは武幸四郎騎手。巴賞につづいてのコンビでした。道中、中団の6~7番手を追走したエリモハリアーは、最後の直線で、逃げたマイソールサウンド、軽ハンデ52キロの牝馬ロフティーエイム、1番人気のアドマイヤフジ、追い込んできたサクラメガワンダーらとの追い比べを制し、見事3連覇を達成。1年ぶりの勝利は、この時点でJRA史上4頭目の同一重賞3連覇という偉業達成となりました。
エリモハリアーは翌2008年も4連覇を目指して函館記念に出走するも4着。函館競馬場が改修工事を行った2009年も現役を続け、10歳となった2010年には「函館競馬場グランドオープン記念」に出走しましたが、16頭立ての最下位に終わり、この年の函館記念(13着)を最後に競走馬を引退しました。
引退後の2011年からは函館競馬場の誘導馬を務めたエリモハリアー。誘導馬を引退した2018年の暮れ、腸炎により18歳で世を去りました。
函館コースは10戦して4勝2着1回。馬場コンディションもパートナーもハンデも問わずに走りました。現在でも史上7頭しかいないJRA同一重賞3連覇を果たした2007年の函館記念。実況の舩山アナウンサーが叫んだフレーズがエリモハリアーの全てを表していました。函館の申し子!
2023/07/13 (木)
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。