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競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ
2023/09/14 (木)

今さら聞けないセントライトのハナシ/大澤幹朗の競馬中継ココだけのハナシ

今週末の中央競馬は土~月の3日間開催。「JRAアニバーサリー」が実施される18日(敬老の日)の中山のメインレースは、第77回セントライト記念(GII)です。

ところで、皆さんはセントライトについてどれだけ語れますか?何しろ戦前・戦中の馬。「日本初の三冠馬!」と即答はできても、それ以上のこととなると言葉が詰まってしまう人が多いのではないでしょうか。そこで今回は、今さら聞けないセントライトのハナシです。

セントライトの父は、船橋のダイオライト記念(JpnⅡ)のレース名にもなっているダイオライト。下総御料牧場がトウルヌソルの後継としてイギリスから輸入した種牡馬で、現役時は英国2歳チャンピオンにして、3歳クラシック初戦2000ギニーを優勝。24戦6勝の成績で引退後、日本が初めて輸入した英国クラシック優勝馬です。

セントライトが生まれたのは下総御料牧場ではなく、当時、御料牧場と二大勢力を分け合っていた民間の小岩井農場でした。当時、小岩井農場は御料牧場との種牡馬交換を率先して行っていたようです。馬運車のない時代に岩手県の雫石と千葉県の成田を汽車と徒歩で往復するのは大変な移動だったことでしょう。

セントライトの母フリッパンシーは、小岩井農場が種牡馬シアンモアと同時期にイギリスから輸入した牝馬でした。セントライトの後も、皐月賞と菊花賞を制し、種牡馬として1135勝をあげたトサミドリを出すなど、GI馬4頭、顕彰馬2頭を輩出した史上唯一の繫殖牝馬です。

セントライトのオーナーは出版社の社長だった加藤雄策氏。1939年の第8代ダービー馬で、種牡馬としても6年連続リーディングサイアーを獲得したクモハタのオーナーでもありました。管理したのもクモハタと同じ田中和一郎調教師(東京)で、“大尾形”尾形藤吉調教師とともに「尾形・田中時代」を築いたトレーナーでした。田中師は後に「幻の馬」トキノミノルも管理し、3頭の顕彰馬を手がけた史上ただひとりの調教師です。

さて、黒鹿毛のセントライトは馬体重が500㎏ほどある当時としてはかなりの大型馬でした。1941年3月15日、横浜(根岸)の新馬戦で力強い走りを見せ勝利すると、2週後、当時は横浜で行なわれていた皐月賞(横浜農林省賞典四歳呼馬)で同じ小岩井産の最高額取引馬ミナミモア(父シアンモア)に3馬身差をつけ快勝しました。

4月、中山での2戦も連勝しデビュー4連勝としたセントライトは、5戦目、初となるホーム東京での古馬相手のハンデ戦で58㎏を背負い2着と初黒星を喫します。しかし翌週には、この年の秋の帝室御賞典(現在の天皇賞秋)を制する1歳上の古馬エステイツを破り、6戦5勝で翌週の東京優駿に挑みました。

ダービーの1番人気はミナミモアで、セントライトは2番人気。3番人気は同厩の桜花賞(中山四歳牝馬特別)優勝馬ブランドソールでした。重馬場で行われたレースは、セントライトが2着馬ステーツに8馬身差をつけて圧勝。この着差は1955年のオートキツと並びダービー史上最大着差です。

夏を休養にあてたセントライトは、9月に始動すると66㎏や68㎏という今では考えられない斤量を背負わされ、菊花賞前は4戦して2敗を喫します。迎えた三冠最終戦の菊花賞(京都農林省賞典四歳呼馬)は6頭立ての少頭数で行われ、セントライトは2着ミナミモアに2馬身半差をつけて優勝。日本初の三冠を達成しました。

セントライトは菊花賞を最後に12戦9勝(12戦中11戦は小西喜蔵騎手が騎乗)の成績で引退。というのも、帝室御賞典に向け使おうとしたレースで72㎏というハンデを背負わされることが判ったからでした。

セントライト像
▲京都競馬場・三冠馬メモリアルロードのセントライト像

セントライトが三冠を達成した1941年といえば、12月8日、真珠湾攻撃によって日本が太平洋戦争に突入した年。戦況が悪化する中、故郷の小岩井農場に戻り種牡馬となったセントライトは、1947年の春の天皇賞(平和賞)を勝ったオーエンス、1951年の秋の天皇賞を勝ったオーライト、1952年の菊花賞を制し父子制覇を果たしたセントオーらを出しましたが、父を超す馬は出ませんでした。

何より不運だったのは、終戦後、GHQによって小岩井農場のサラブレッド生産が禁じられ、岩手畜産試験場に移ったことです。交配相手にはアラブや中間種が含まれるなど不遇となり、種牡馬としての前途は閉ざされたのでした。

最後に、現在の競走馬の血統表に「セントライト」の名前は残っているのでしょうか。

2005年に牝馬として宝塚記念を制するなどGI競走3勝をあげたスイープトウショウ(2020年死亡)の6代母トミユキの父を調べてみてください。「セントライト」の名前があるはずです。1970年代にトウショウ牧場(2015年閉鎖)が基礎繫殖牝馬として購入したチャイナトウショウ(トミユキの孫)の牝系が枝葉を伸ばし、「セントライト」の名前を残してくれているのです。

スイープトウショウと言えば、父ディープインパクトのラストクロップでもある最後の仔スイープアワーズ(牡3、友道康夫厩舎)が7月の未勝利戦を勝ち上がりました。日本調教の現役馬は4頭しかいないディープインパクト産駒最終世代の1頭がセントライトの血を引いているとは…。あらためて競馬における血統のロマンを感じます。

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大澤幹朗 近影

大澤幹朗

1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。

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