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競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ
2024/01/18 (木)

美しき金色のファルコ/競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ

競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。今回のテーマは「美しき金色のファルコ」です。


6日の中山金杯でスタートした1月の中山競馬は、アメリカジョッキークラブカップ(AJCC)が行われる21日が最終日です。今週はそんな新春の中山開催の度に私が思い出す、ある競走馬についてのハナシです。

その馬の名は、トウショウファルコ。

1985年5月16日生まれのトウショウファルコは、父がグリーングラス、曾祖母はトウショウボーイの母として知られる名牝系の祖ソシアルバターフライという血統で、先週のコラムでも取り上げた1970年代後半の競馬の主役「TTG(トウショウボーイ、テンポイント、グリーングラス)」のうち2頭の血脈を受け継ぎ、藤正牧場(のちのトウショウ牧場)で生まれました。

腰の甘さや爪の弱さという弱点を抱えていたためにデビューが遅れ、また、瞬発力勝負や競り合いに弱く、4歳(現3歳)秋に2勝目を挙げてからは900万下(現在の2勝クラス)で惜敗を繰り返していました。

トウショウファルコの「晩成」は、本格化までに時間を要した父グリーングラス譲りだったのでしょう。腰の甘さが消え、足腰がしっかりしてきたのは6歳(現5歳)の夏でした。格上のG3七夕賞で3着、函館のOP特別UHB杯でも3着に入り、オープンクラスでも通用する力を証明してみせたのです。

その年の秋に東京スポーツ杯(東京競馬場・芝2400mの特別戦)でついにオープン勝ちを果たしたトウショウファルコは、暮れの中山で賞金的にギリギリ出走可能だった準OPのフェアウェルSを快勝。光り輝く年明けの活躍につながるのでした。

迎えた7歳(現6歳)の初戦、トウショウファルコは日刊スポーツ賞金杯(現在の中山金杯)に挑みました。皐月賞2着馬シャコーグレイド、G3カブトヤマ記念の勝ち馬ハシノケンシロウ、G3クイーンS勝ちのイナズマクロスらを相手に、ハンデ55キロの6番人気という評価の中、柴田政人騎手の頭脳的なロングスパートで後続を引き離し一気に先頭でゴール。1分59秒6という優秀なタイムで重賞初制覇を果たしました。

3週間後、今度はG2のAJCCに出走。シャコーグレイドら金杯組に加え、GI馬メジロライアンや重賞2勝馬カリブソングらの強敵を相手に、トウショウファルコは自らハナに立ってスローペースの逃げを打ちます。そして、苦手な瞬発力勝負にはさせまいと、金杯同様に3コーナーから一気にペースを上げロングスパート。これが功を奏して逃げ切りに成功し、2着のシャコーグレイドに1馬身半差をつけ、重賞連勝を飾ったのです。

新春の中山での輝かしい連勝の後、相次いで脚の故障に見舞われたトウショウファルコは、その年の秋の天皇賞(15着)を最後に引退。このラストランが唯一のGIレース出走でした。

「重賞2勝、GI出走1回」という成績で、なぜ30年以上も経った今も「忘れられない馬」なのでしょうか。

その理由は、美しい栗毛の肌と、輝くように風になびく白いたてがみという、誰もが惹かれる「尾花栗毛」の容姿にありました。馬名の「ファルコ」は、当時、大人気だった漫画「北斗の拳」に登場する金色の光輝を纏った将軍ファルコから名づけられたものでした。

美しい容姿のトウショウファルコは、引退後、東京競馬場で誘導馬となり、1995年から4年半にわたって競走馬たちの先導役を務めました。1999年11月7日、誘導馬としての最終日の昼休みには、競走馬としての引退時にもなかった引退式も行われ、ファンからのあたたかい拍手に送られたのでした。

トウショウファルコが最後に過ごしたのは、日本初の近代洋式競馬が行われた横浜(根岸)競馬場があった根岸競馬記念公苑内にある「馬の博物館」でした。サラブレッドの代表として“展示”されたのです。

今回、馬の博物館のご厚意で、当時のトウショウファルコの画像を提供していただくことができました。根岸に来た時はすでに14歳だったトウショウファルコ。年齢を重ねても変わらずに美しいその姿をご覧ください。

馬の博物館繋養時代のトウショウファルコ(馬の博物館提供)
▲馬の博物館繋養時代のトウショウファルコ(馬の博物館提供)


2005年10月21日、トウショウファルコは老衰のため19歳で生涯を閉じました。馬の博物館がある根岸競馬記念公苑には追悼の石碑が設置されていますが、今月私が訪れたところ、たくさんのお花が供えられていました。中山金杯やAJCCのレース名を聞いて、きっと私のように、36年前の新春の中山で燦然と輝いていた栗毛の馬体と、冷たい風になびく金色のたてがみを思い出していたに違いありません

根岸競馬記念公苑のトウショウファルコの石碑
▲根岸競馬記念公苑のトウショウファルコの石碑


さて、今回、トウショウファルコの貴重な画像を提供してくださった横浜市根岸の「馬の博物館」ですが、収蔵資料の修復等のため、今月28日を最後に長期の休館に入ることになっています。現在はフィナーレ展「うまはく所蔵優品選」が開催中です。私のお気に入りスポットである「馬の博物館」については、週末に「根岸ステークス」を控える次週のコラムで取り上げようと思います。

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大澤幹朗

1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。

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