競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。
今回のテーマは「凱旋門賞、“悲願”に終止符を」です。
いよいよ今年の凱旋門賞が、日本時間の日曜深夜に近づいてきました。
今年はシンエンペラー(牡3/矢作芳人厩舎)が坂井瑠星騎手とのコンビで参戦する他、日本のレジェンドジョッキー武豊騎手もキーファーズが共同所有するアイルランド調教馬アルリファー(牡4/ジョセフ・オブライエン厩舎)に騎乗する予定の凱旋門賞。国内での馬券発売は9年連続となりました。
日本で初めて海外馬券発売が行われたのが8年前。マカヒキが参戦した2016年の凱旋門賞でした。この時はロンシャン競馬場(当時)の改修のためにシャンティイ競馬場で行われ、前哨戦のニエル賞を勝って臨んだマカヒキは現地で2番人気、国内では1番人気に支持されました。
勝ったのはライアン・ムーア騎乗の4歳牝馬ファウンド(愛 A・オブライエン厩舎)で、優勝タイムは2:23.61のレースレコード(パリロンシャンでのレースレコードは2011年にデインドリームが出した2:24.49)。マカヒキは14着でした。
マカヒキ以降の8年間、日本調教馬は延べ15頭(ディープボンドは2回参戦)が凱旋門賞に挑みました。
最先着は、現地8人気ながら健闘した去年のスルーセブンシーズの4着。一方、現地で上位人気に評価されたのは、上記のマカヒキ以外に2021年のクロノジェネシス(14頭中5人気/7着)、2022年のタイトルホルダー(20頭中5人気/11着)がいましたが、いずれも敗れました。
ただ、今年のシンエンペラーは、現地で4番人気以上、国内では1番人気となる可能性があります。
10/2時点での大手ブックメーカーのオッズは以下の通りです。
▼1番人気
ニエル賞を勝ったソジー(牡3/仏 A・ファーブル厩舎)で4.5~5.5倍
▼2番人気
ニエル賞では3着に終わった仏ダービー馬ルックドゥヴェガ(牡3/仏 カルロス&ヤン・レルネール厩舎)で5.5~6.0倍
▼3番人気
日本のシンエンペラーで、6.0~6.5倍
▼4番人気
愛ダービー馬ロスアンゼルス(牡3/A・オブライエン厩舎)で6.5~7.0倍
6倍前後のオッズに仏日愛の3歳馬4頭がひしめき合う、かつてない激戦ムードとなっています。
これら4頭につづくのが、武豊騎手が騎乗するベルリン大賞の勝ち馬アルリファー(牡4/愛 ジョセフ・オブライエン厩舎)で10.0~12.0倍。ニエル賞2着馬のデリウス(牡3/仏 ジャン・クロード・ルジェ厩舎)が11.0~12.0倍。
一方、追加登録での参戦が報じられたヴェルメイユ賞の勝ち馬ブルーストッキング(牝4/英 ラルフ・ベケット厩舎)も12.0~13.0倍ですが、正式に追加登録されれば一躍、上位人気になる可能性があります。
このほか本稿執筆時点での情報では、1日の第2回取消で登録を残したオーギュストロダンは、その後クールモアが公式に回避すると発表。A・オブライエン厩舎からは、6歳の欧州長距離王キプリオス、5歳馬ルクセンブルク、牝馬オペラシンガーも回避することになり、今年は上記ロスアンゼルスと、ハーツクライ産駒の4歳馬コンティニュアス(ブックメーカーオッズ30倍前後)の2頭出しとなりました。
また、凱旋門賞歴代最多8勝の地元A・ファーブル厩舎からは、マイル~中距離のG1を5勝している5歳牝馬マルキーズドゥセヴィニエ(20倍前後)と、パリロンシャンの芝3000~3100m重賞を3勝している4歳馬セヴェナズナイト(40~50倍)も参戦を表明。こちらは1番人気のソジーとあわせ3頭出しとなりました。
そのほか出走を予定しているのは、
ヴェルメイユ賞2着のアヴァンチュール(牝3/仏 クリストフ・フェルラン厩舎/20倍前後)、
出否は馬場状態次第ながら、参戦となれば2年連続となる去年の独ダービー馬ファンタスティックムーン(牡4/サラ・シュタインベルク厩舎/30倍前後)、
凱旋門賞2勝のクリスチャン・デムーロ騎手とコンビを組むことになったプリンスオブウェールズS・2着馬ザラケム(牡4/仏 ジェローム・レニエ厩舎/40倍前後)、
去年は14着と敗れたものの今年はG1ガネー賞の勝ち馬としての参戦となるアヤザーク(牡5/仏 アドリアン・フアシェ厩舎/60~70倍)、
愛ダービー2着、英セントレジャー3着のサンウェイ(牡3/英 デヴィッド・ムニュイジエ厩舎/40倍前後)
といった顔ぶれです。
日本調教馬の凱旋門賞挑戦は1969年のスピードシンボリからは実に55年という歳月が流れ、初めて手が届きそうになったエルコンドルパサーの2着からも今年で四半世紀となる25年となりました。
エルコンドルパサーと同じトレーナーと鞍上が挑んだナカヤマフェスタの2着からは14年。最後の最後で勝利が手からこぼれてしまったオルフェーヴルの最初の2着から12年。オルフェーヴル2年連続2着、キズナ4着の2013年からは11年です。
2024年の第103回凱旋門賞に挑むのはフランスで生まれた凱旋門賞馬の全弟シンエンペラー。日本調教馬の挑戦回数は22回目。延べ35頭目(32頭目)となります。
日本のレジェンドジョッキー武豊騎手が初めて凱旋門賞で騎乗したのは1994年。吉田照哉オーナーが所有するホワイトマズルに騎乗し4着でした。それから30年。2年ぶり11回目の騎乗となります。
人馬の“悲願”に今年こそ終止符を。
私は今年も東京からパリへ祈りを届けながら、グリーンチャンネルの司会席に座ります。