競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。
今回のテーマは「ドバイワールドカップデーの振り返り」です。
今年のドバイワールドカップデーが終わりました。まずはペルシャ湾岸地域の紛争が続いている中で、開催が滞りなく行われたことに安堵しています。そして、決して簡単ではない判断の中で参戦した日本調教馬の各陣営に心から敬意を表したいと思います。
ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービー欧州&中東シリーズの最終戦UAEダービーは、サウジダービー4着からの転戦で臨んだワンダーディーンが勝利。ケンタッキーダービーへの出走権を獲得しました。
3連勝でUAE2000ギニーを圧勝していた地元UAEのシックススピードが逃げる中、これを直線で捕らえて2馬身半差の勝利。2着シックススピードと3着パイロマンサーの差は6馬身差ついており、掛け値なしの強い内容だったかと思います。
浦河町の高昭牧場で生産されたワンダーディーン。父ディーマジェスティは産駒の重賞初勝利が海外重賞となりました。また5代母には1988年の桜花賞馬アラホウトクがいる牝系でもあります。
母の父は2012年のJBCクラシックや、2014年の帝王賞、2015年のかしわ記念などを勝ったワンダーアキュート。その父は1999年のケンタッキーダービー、プリークネスSの米クラシック二冠馬カリズマティックで、3代父サンデーサイレンスとともに、ケンタッキーダービーとゆかりのある血統です。
この日、中山競馬場で行われた伏竜Sを無傷の3連勝で勝利して、ジャパン・ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービーからケンタッキーダービーへ向かうことになったダノンバーボンとともに、今年も米国競馬の夢舞台に2頭の日本調教馬が参戦する見込みになりました。
日高生まれのディーンとケンタッキー生まれのバーボンが挑む第152回ケンタッキーダービーは、現地時間の5月2日です。
芝直線1200mのG1アルクオーツスプリント。同週の高松宮記念ではなく、あえて海を渡ったGI馬ルガルは、好発から残り200mで一度は先頭に立つも、最後に地元のネイティヴアプローチにクビ差交わされ2着でした。
サウジに続く2度目の海外遠征だった鮫島克駿騎手とともに、結果こそ、あと一歩の悔しいものではありましたが、人馬とも素晴らしいパフォーマンスでした。
ダート1200mのG1ドバイゴールデンシャヒーンは、去年は3歳でこのレースを制した地元UAEのセン馬ダークサフロンが優勝。2017、2018年のマインドユアビスケッツ以来の連覇達成となりました。
同じく2年連続で参戦したアメリカンステージは12頭中の最下位に終わりました。適鞍を求めながら、同厩の先輩フォーエバーヤングとの1か月半に渡る中東遠征。旅の疲れを癒して、立て直して欲しいと思います。
芝1800mのG1ドバイターフは坂井瑠星騎手と初コンビを組んだガイアフォースが好スタートを決め逃げる展開に。残り300mまで先頭に立っていましたが、これをあっという間に抜き去っていったのがイギリスのオンブズマンでした。
管理するジョン・ゴスデン師によると「おそらく9割の出来」で、2着のクドワーに2馬身差をつけての完勝。ゴドルフィン勢として8年ぶりのドバイターフ優勝を果たしました。
オンブズマンは今後、去年同様にプリンスオブウェールズS(去年1着)、エクリプスS(去年2着)、インターナショナルS(去年1着)というローテーションになる見込みですが、鞍上のW・ビュイック騎手が「2400mも大丈夫」と話しているということで、秋はジャパンカップ参戦の可能性もありそうです。
一方、最後は6着に終わったガイアフォース。単身で海を渡り、自ら馬を引いていたリーディングトレーナー杉山晴紀調教師の姿が印象的でした。僚馬のルガルとともに週末に帰国する予定ということです。
2012年以来の日本馬0、レース史上最少の6頭立てとなったドバイシーマクラシックは、後方2番手に控えた世界ランク1位のカランダガンが、大逃げを打ったウェストウィンドブロウズを残り100mで捕らえて優勝。着差は3/4馬身と大きくありませんでしたが、きっちり差し切る強い競馬で、ダノンデサイルの2着だった去年の雪辱を果たしました。
5歳になったセン馬は今後どのような道を歩むのでしょうか。秋は2年連続でジャパンカップの来日はあるのでしょうか。F・グラファール調教師は、今年はムーニーバレー競馬場の改修により、広いコースのフレミントン競馬場で行われるコックスプレートへの参戦も選択肢として示したようです。世界の競馬界にとって特別な馬カランダガンの今後から目が離せません。
そして、メインのG1ドバイワールドカップ。フォーエバーヤングは勝ったマグニチュードに1馬身差及ばず2着でした。逃げるマグニチュードを右に左に手前を替えながら懸命に追ったフォーエバーヤングと坂井瑠星騎手。その姿には胸を打たれました。それでも、脚色が鈍らなかったマグニチュードが強かったとしか言いようがありません。
3歳シーズンはクラシックの舞台に立てなかったマグニチュードでしたが、8番人気の低評価ながら10馬身近くの差で圧勝したのが去年2月のG2・リズンSでした。その時が、まさに今回のような競馬。米国の威信にかけて完璧に仕上げたS・アスムッセン師と、マグニチュードが最も力を発揮する形でレースを進めたJ・オルティス騎手ともども、チーム・マグニチュードの完璧な勝利でした。
敗れてもなお、毎レースが伝説となっているフォーエバーヤング。考えてみれば、ドバイワールドカップの舞台で本場アメリカの陣営が日本調教馬を最大の強敵として目していること自体が、今まででは考えられない凄いことです。簡単ではない中東での連戦の疲れを癒し、次なる戦いに向かってください。
素晴らしいレースを見せてくれた全ての人馬に感謝!
