競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。
今回のテーマは世界最大の障害レース「グランドナショナル」です。
障害競馬が盛んなイギリスでは、9日からシーズンのクライマックスとなるグランドナショナル開催がスタートします。イングランドの北西部リヴァプールにあるエイントリー競馬場で3日間に渡って行われるフェスティバルの最大の注目は、最終日のメインレース「グランドナショナル」です。
レースはハンデ戦で行われ、ハンデの上限は11ストーン12ポンド(75㎏)です。最大34頭の出走馬は、エイントリー競馬場の1周2.25マイル(3,600m)の左回りの周回コース「ナショナルコース」を2周。全部で30の障害をジャンプしながら、4マイル514ヤード(約6.907m)の距離を駆け抜けます。
賞金総額は100万ポンド(約2億1100万円)、1着馬賞金は50万ポンド(約1億550万円)。英国ダービーを上回る馬券を売り上げ、イギリス国内で最も人気があるレースが、グランドナショナルです。
近代競馬の発祥地イギリスでは、16世紀頃、王侯貴族が馬を駆って、川や溝、牧柵などの障害物を飛び越えながら獲物を狩る狩猟が流行っていました。これが起源となって、スティープルチェイス(障害競走)やクロスカントリーに派生していきました。
1829年に開場したエイントリー競馬場は、これら自然の野原をコースにしていた障害レースを常に行える競馬場として造られました。それまでは、クロスカントリーから生まれたレースの途中経過を見ながら楽しむことは不可能でしたが、エイントリー競馬場のスタンドからはレースの一部始終を見ることができました。
1836年には非公式でグランドナショナルと同等のレースが始まったとされ、公式には1839年に「リバプール・グランドナショナル・スティープルチェイス」という名前で第1回のレースが行われました。そして1847年、レース名は現在の「グランドナショナル」になりました。
イギリスの競馬場といえば、自然の地形を活かし、起伏が激しく、左右非対称なコースが多く存在しますが、障害レースのグランドナショナルこそが最も人気があるレースであるという事実からも、近代競馬発祥地イギリスの人々が、原初的な競馬の形、競馬の原点を大切にしていることがわかります。
さて、今年のグランドナショナル。大手ブックメーカー「ウィリアムヒル」の前売りオッズは、8.0倍~13.0倍に5頭がひしめく混戦模様となっています。
1番人気は、一昨年の優勝馬で、去年は2馬身半差の2着だった10歳セン馬アイアムマキシマスで8.0倍です。緑に黄色の横縞の勝負服で知られる名オーナー、JP・マクマナス氏の所有馬で、管理するのは2年連続で英国障害チャンピオントレーナーに輝いているアイルランドのウィリー・マリンズ調教師。一昨年のアイアムマキシマスと去年のニックロケットでグランドナショナルを連覇中のトレーナーです。
11.0倍の2番人気も同じW・マリンズ厩舎のグランジクレアウエスト。前走で、グランドナショナル過去2年の優勝馬アイアムマキシマスとニックロケットがいずれも勝利しているボビージョチェイスを快勝して有力馬に浮上しました。また、アイアムマキシマスと同じ勝負服の2頭イロコとジャグワー、それに牝馬のパニックアタックの3頭が13.0倍の3番人気タイで並んでいます。
中山大障害のモデルにもなり、140か国以上で5~6億人が視聴するという世界最大の障害レース「グランドナショナル」にも、ぜひ注目してみてください。
