プロ馬券師・みねた氏が実践例を交えながら予想理論の金言を伝える『馬券師・みねたの金言』。今回の金言は“「展開が向きそうな馬」が塊で恵まれることは少ない”です。
なお、『競馬放送局』ではみねた氏の厳選勝負レース、重賞予想を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください。
▼今週の重賞ピックアップ
10月19日 京都11R 秋華賞 芝2000m
秋華賞は京都芝2000mで施行。初角となる3コーナーまで約300mです。
登録22頭中、前走の通過順位に3番手以内があるのは11頭。先行占有率が高くなるのは避けられそうになく、差し馬が有利になるでしょう。内枠、距離短縮馬に注意を払いたいメンバー構成です。
1番人気想定はもちろんカムニャック。今年のオークス馬で、始動戦となったローズSも危なげなく勝利を収めました。ということで想定オッズは2.1倍を示しており、ローズSの2.9倍と比較して一層、人気が上がっています。オッズ的に買い時ではありませんが、世代トップクラスの1頭であることは間違いなく、1列目にするか2列目にするかはオッズ次第となるでしょう。
2番人気想定エンブロイダリーは桜花賞馬。1番人気を裏切ったオークス以来の実戦となります。良績のあるマイル方向への距離短縮は間違いなくプラスでしょう。とにかく秋G1に強いルメール騎手騎乗でもあります。想定5.1倍なら、カムニャックではなくこちらを上位に取る手も。
3番人気想定ジョスランは紫苑Sの2着馬。本当にこの人気になるのであれば、同じく前哨戦ローズSの2着馬テレサ(想定8番人気・22.0倍)、あるいは紫苑Sで先着しているケリフレッドアスク(想定12番人気・35.3倍)の方に期待値があるように思えます。
エリカエクスプレスは1番人気に推された京成杯AHで0.5秒差の11着。いかにも期待値の積めそうな、個人的には好きな負け方です。2戦続けて二桁着順にもかかわらず想定4番人気・14.4倍は「人気し過ぎじゃないですか？ 本当ですか？」といった感じですが(笑)、実際はもう少し人気を下げるだろうと睨んでいます。
今年はカムニャック以外のオークス上位馬の次走が奮わず、別路線組にも魅力あり。3歳8月の段階で古馬の混合重賞を勝ち切ったマピュースは魅力的な存在です。想定6番人気・20.5倍なら2ハロン延長に目を瞑ってでも狙う価値は十分。
別路線といえば条件戦組にも注目。2勝クラスを勝っていれば秋華賞での穴馬の資格があります。現状、今年は前走で2勝クラスを勝っている4頭(インヴォーグ、カネラフィーナ、グローリーリンク、ジョイフルニュース)が1頭の出走枠を抽選で争う形になっています。いずれも先行昇級になるのは残念ですが、出走が叶った馬には注目したいですね。
想定オッズも読みにくく、かなり難解な一戦。やはり枠と並びが大きな鍵となるでしょう。なお、枠順確定後の最終結論および買い目は『競馬放送局』をご覧ください。
▼みねたの金言203
「展開が向きそうな馬」が塊で恵まれることは少ない
★ピックアップレース★
9月27日 阪神10R 道頓堀S 芝1200m良
◎11シュタールヴィント
高○1ルーフ
高▲6モンシュマン
穴△16ジャスパーノワール
穴☆13ルミノメテオール
注4セシリエプラージュ
注9レッドエヴァンス
―9月27日の道頓堀Sは◎→高○→高▲の大本線決着。単勝5.2倍、馬連32.8倍、馬単61.3倍、ワイド11.7倍＆14.7倍、そして3連複111.6倍、3連単543.7倍。これは気持ちよかったのではないでしょうか？
みねた)気持ちよかったですね。本線で決まればワイドもW的中になるので回収率も上がりますし。オッズ切り無しの推奨買い目だと◎→注→注の3連複はカットしていますし、オッズ切りがあったとしても、均等に買うのであれば相対的に人気の◎→注→注への比率は低くなります。3列目にあたる注は、的中率担保のために打っているという側面があるので、やはり本線…というか印上位で決まった方が回収率は出るでしょう。
―このレースは1番人気のレッドエヴァンスではなく、2番人気のシュタールヴィントに◎を打てたのが勝因だと思います。ただ、これが意外と難しかったと思うんですよ。能力の高さは感じるのですが、先行馬占有率の低いレースでの距離短縮、コースパターンA(初角までの距離が短いコース)での11番枠ですから、ここも差し損ねての4～5着ぐらいなのかなと思ってしまいました。
みねた)おっしゃることもわかりますが、結局、能力が相当抜けていたのだと思います。ずっと中距離を使っていた馬が初の1200mに対応するのはかなり難易度の高いミッションなので、2走前の「大外枠から上がり最速を使っての0.1秒差」というのは非常に価値があります。父ロードカナロアという血統的にも、むしろ1200mの方が向いていて、「能力の高さで2000mをこなしていた」というのが正確なところだと思います。
―お母さんがマルセリーナという良血なので、まずはクラシック路線を目指しますよね。
みねた)展開が向かないというのは一理あります。ただ、私の場合、過去の予想を見てもらえればわかると思うのですが、展開が向きそうな馬だけを買っているのではなく、展開が向きそうな馬を1頭選んで軸にしているケースが多いです。意外と「展開が向きそうな馬」が塊で恵まれることってないんですよ。例えば、「内・前が有利」だったとしても、その内枠に先行馬が2頭並んだ時点で有利じゃなくなりますから。
―金言18などで触れている「同脚質並びは不利」というやつですね。
みねた)また、基本的に条件クラスはメンバー間の能力差が小さいと考えていますが、シュタールヴィントは1200mであれば能力は抜けているという見立てなので、能力差で差してくるだろうと判断しました。ただ、最大の理由はやはり「オッズ」です。レッドエヴァンスがいたことにより、能力が抜けていると判断しているシュタールヴィントが5.2倍という望外のオッズになりました。これが仮に2.0倍だったら、おっしゃる通り、差し損ねに賭けた方が良いと判断したと思います。
もう1点付け加えるなら、この馬に関しては差し馬ですが先行占有率が低かったことがプラスに働いたと思います。距離短縮の差し馬にとって怖いのは、ペースが速過ぎて追走できず、ノーチャンスの位置になること。先行馬が少なくペースが上がり切らず、4コーナーを8番手で迎えられたことが差し切りに繋がりました。
―そして高○だったルーフが7番人気で2着。
みねた)この馬を高評価できたのが高配当的中の要因ですね。ただ、「コースパターンA」における内枠の先行馬ですから教科書通り、それこそ単行本『競馬場と前走位置取りだけで恒常的に勝つ方法』を読んだ方なら誰でも見つけられた穴馬だと思います。
人気薄だったのは、前走の競走除外が効いているのでしょう。前走欄がひとつ奥に表記されることになるせいか、好走→除外のパターンはオッズが甘くなりやすい傾向があります。
―解説を聞いていると、ルーフが◎でもよかったような気がしてきました。
みねた)それも当然アリですよ。競馬の答えは1つではないですから。このレースで私は◎シュタールヴィントとして120点の解答を出せました。ですが、シンプルに“競馬場と前走位置取りだけ”でルーフを◎にして人気馬に流す馬券で馬連32.8倍を当てるのも正解です。第1回のコラムでお伝えした通り、競馬はほんの少しの要素で着順は入れ替わる、“たまたま”が重なる競技。このレースでもシュタールヴィントの外に出すのに手間取ってルーフが1着、というのは大いにあり得る世界線ですからね。
