大型連休だというのに3度目の緊急事態宣言が東京、京都、大阪、兵庫の1都4府県に出され、今年もGWは(ガマンウィーク)になってしまいました。
しかし、競馬は在宅でも楽しめる貴重な娯楽。緊急事態宣言地域では再び無観客競馬になってしまったものの、中央も地方も競馬が行われているということに感謝したいと思います。
GWの競馬と言えば、地方競馬のダートグレード競走です。今年も5月3日に名古屋のかきつばた記念(JpnIII)、4日に園田の兵庫チャンピオンシップ(JpnII)、このコラムが公開される5日には、船橋でかしわ記念(JpnI)が行われました。
ところで皆さんは、このレースの格付けを表す「JpnI」を何と読んでいますか?
「ジェーピーエヌワン」、「ジーワン」、「統一ジーワン」・・・。そう言えばハッキリしてなくて曖昧だよなという印象があるかもしれません。
実はその通りで、あえて曖昧にさせられているのです。そこで、この表記と読み方がなぜ曖昧なのかの背景と事情を、今回と次回の2回に分けてご紹介します。
今回はまず、日本競馬の格付けの歴史を振り返りましょう。JRAが独自のグレード制を制定したのは1984年です。それぞれの重賞の役割・位置付けを広く認識させ、生産の指標を明確にするため・・・というのが理由でした。
「強い馬づくり」を標榜する中での制定と読み取れますが、実際はファンに対しての興行上の理由が大きかったはずです。
当時は自動車レースのF1ブームで、GI、GII、GIIIもF1、F2、F3みたいな感じかと理解したことを思い出します(その後、K1、M1なども出てきましたね)。「G」は「グレード」の「G」なので、実況アナウンサーは「ジーワン」あるいは「グレードワン」と読んでいました。
一方、中央競馬と地方競馬の交流に伴い、このグレード制を基準にしたダートグレード格付けがスタートしたのが1997年です。「統一GI」「交流GI」などと表記されました。これらの格付けは、この時点では、あくまでも「日本独自の格付け」でした。
ところが2007年、日本の競馬が国際セリ名簿基準委員会に従ったセリ名簿に記載できる「パート1」国に分類されたため、「独自の格付け」と「国際的な格付け」の整合性をとる必要がうまれました。
「パート2」国時代には、JRAだけが認める「GI」と国際的に認められる「国際GI」の2つがありましたが、この時から「国際GI」のみが「GI」であり、それ以外の「GI」は国際セリ名簿基準委員会によって表記の変更を求められました。この時にうまれたのが「Jpn」の格付け・表記です。
そして、今でも忘れられないのが、この時JRAから私たちに告げられた通達です。
“「JpnI」の読み方は「ジェーピーエヌ・ワン」ではなく「ジーワン」と読むように。また「GI」も「グレードワン」と読んではならず、同じく「ジーワン」と読むように”
というものでした。私たち競馬キャスターは「グレード」という言葉を使えなくなってしまったのです・・・。
(後編に続く)
※後編の公開は5/20です。