亀谷敬正 オフィシャル競馬サロン
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黄金旅程な週末
2024/04/18 (木)

#13 なんで今日に限ってテンション高いの? 新たな絶対王者だろう?/黄金旅程な週末

小説『不夜城』や『少年と犬』などで知られる作家・馳星周さんによる競馬エッセイ『黄金旅程な週末』。ステイゴールドとその一族の熱烈なファンである著者の奮闘振りをお楽しみください。

▼新刊発売のお知らせ
馳星周さんの新刊『フェスタ』が3月5日に発売されました。ナカヤマフェスタ産駒で凱旋門賞制覇を目指す生産者、馬主、陣営を描いた群像劇です。


フェスタ



 4月13日土曜日は、現在執筆中で障害競走をテーマにした『飛越(ジャンプ)』のための取材という名目で中山競馬場へ。もちろん、マイネルグロンを応援するためだ。

 前日から東京泊。銀座の美味い鮨屋でご馳走してもらい(鮨は東京が一番だなあ)、その足でホテルに移動してみんなで馬券検討会。楽しい夜を過ごした。

 土曜は朝一から中山競馬場へ。中山に専念しようということで、他の二場はパス、のはずだったのだが、阪神2Rにレインボーライン産駒が2頭。イエデゴロゴロは勝ち負けだろうと参戦することに。

 1番人気アストラカとの馬単馬連。イエデゴロゴロまさかの出負け。後方馬群の中でなにもできずに敗退。マジかよ~。

 中山4R、オルフェ産駒のバスターウルフが1番人気。ここは勝つでしょうと馬単を3点。バスター、好位につけて直線、抜けだしをはかるもタンゴノアールに差されて2着。返しは買ってないんだよ、馬単。

 藤岡康太騎手の不慮の死を受けて、もう騎手を罵るのはやめようと心に誓ったのに「コーセーミウラ、てめえ、この野郎」と罵声をあげてしまう。反省。

 中山5Rもオルフェっ仔のピーエムドレミ。過去の競走は出遅れがあったり不利があったり。右回りの方がよさそうだし、ここは一発あるかもと2番人気ドリームクルーズとのワイド。ドレミ、好位につけ、近くにドリクルもいる。これはもらったかと思ったが、ドレミ直線伸びず。まだ時間がかかるか……。

 中山7Rは母父ステイのヒシタイカン。新馬戦のパフォーマンスから期待していたのに、その後は鳴かず飛ばず。そろそろ力を示して欲しいが、気性的に信用ならない。日和って、1番人気セイウンパシュートとの2頭軸3連複で人気薄に流してみる。

 タイカン、押し出される感じでハナを切り、スローに落として逃げ切りをはかる。おお、これはいいぞ、手応えも悪くない。行け、タイカン、勝て、タイカン!!

 タイカン、見事逃げ切り。2着にセイウンパシュートが来たが、3着も人気馬。くそ~、馬単が正解だったか。信用しきれなかったよ、タイカン。

 でも、勝ったからよし。

 続いて福島8R、ゴルシ産駒のタイラーテソーロが舐められた人気。日本一ゴルシ産駒の乗り方をわかっている丹内が鞍上だよ? みんなわかってないね。ここで一発当たり馬券が欲しいと参戦決定。タイラーから人気3頭への馬連ワイド。

 タイラー、道中後方待機から捲り上げていって直線突き抜ける。見事な勝利も、2、3着にも人気薄が来て大荒れ。馬券は外れたが、一族2連勝。マイネルグロンの中山GJ制覇に向けて舞台は整ったぞ。

 中山8Rはオルフェっ仔のベンガン。鞍上三浦騎手で弱気の虫が頭をもたげるが「コーセー、バスターウルフの借りをここで返せよ」と1番人気ティニアとの馬連ワイド。ベンガン、直線で伸びきれず。

 中山10R下総S、母父オルフェのストライク。昇級戦だが、力は足りるはず。1番人気ホウオウバリスタも強いと見て2頭軸3連複、相手は横山武史騎手のアクションプランと津村騎手のレッドプロフェシー。

 ストライク、中団から脚を使って逃げるアクションプランを猛追するも2着まで。3着にホウオウバリスタでこの日の初当たり! 4着にレッドプロフェシーが来て、読みも完璧。配当は17倍弱だったが、家にいるときより一点の金額を多めにしていたので一気に負けを取り返した。

 レース終了後は大急ぎでパドックへ。中山GJに出走する馬たちの周回はすでにはじまっていた。ゴルシ産駒のワンダークローバーとマイネルグロンがお目当て。ワンダーはよそ見しまくりだが、可愛いのう。ゴルシの子供はなんでみんなこんなに可愛いのかのう。グロンだって可愛いもんなとグロンに視線を移したら、口から泡を吹いている。

 マジ? 過去数戦、こんなことはなかったよ? なんで今日に限ってテンション高いの? 大人になったはずだろう? 新たな絶対王者だろう?

 パドックを見ているうちに、どんどん不安が膨らんでいく。

 前走から中一ヶ月。使い詰めるとよくないのかなあ。

 それでも、ここは譲れないと、まずはワンダーとの馬連ワイド。ワンダー、人気はないけど、スタミナは父親譲り。消耗戦になれば一発はあるはず。

 そして、グロン頭固定の3連単。2着もイロゴトシで固定。復帰してからの戦績はぱっとしないが、この馬は強い。3列目にジューンベロシティ、エコロデュエル、ニシノデイジーを配して、いざ勝負。

 ワンダーはテンが遅く最後方から。これは織り込み済み。しかし、グロンもスタートがよくない。

 いやいや、石神騎手は道中押し上げていくはず。人馬を信じよう--自分に言い聞かせながらレースを見守る。

 しかし、押し上げるはずのグロンは一向に動かず。石神騎手が促しても先団に取りつくのがやっと。

 こんなはずじゃない、こんなはずじゃない。そう胸の奥で繰り返したが、グロン、結局いいところなしで6着フィニッシュ。ゴール後石神騎手が下馬。

 どうか、深刻な怪我じゃありませんように。

 競馬に絶対はないが、それでも勝ち続けたオジュウチョウサンの偉大さに思いを馳せる。

 グロン、必ず戻ってこいよ。

 馬券はプラス収支だったが、わたしも妻も意気消沈して帰途についたのだった。

 翌日曜は夫婦そろってくたびれており(田舎者に東京の混雑はしんどいのだ)、馬券参加は福島民放杯と皐月賞だけにする。

 午前のレースで一族が2勝しており、この日も好調な様子。頑張れ、メイショウタバル。目にもの見せてやれ。

 まずは福島民報杯。ステイ直子のマイネルファンロン、母父ステイのショウナンマグマ、フェスタ産駒のバビット。マグマにもバビットにも前走では美味しい思いをさせてもらった。

 まずはファンロンの単複。中央競馬ではただ1頭残った平地を走るステイゴールドの直仔。引退するまで単複は買い続ける。それから、丸田騎手騎乗のリフレーミングからマグマとバビットへのワイド。藤岡康太騎手とは同期のマルちゃん。期するものがあるはずだ。

 どうか、マグマとバビットでハナを争いませんように。そう祈りながらスタートを待つ。

 まずは、バビットが外から被せていってハナを奪う。よし、これで行けると思ったのも束の間、他の馬が注文をつけて、バビット3番手に。それじゃだめだよ、まなみちゃん。マグマは控えても走るけど、バビットはだめなんだ。

 最内枠のファンロンは松岡騎手が出していって中団確保。これなら勝負にはなる。

 バビットは案の定三角手前で下がりはじめた。マグマは好位追走で前をうかがっている。

 ファンロンもいつの間にかポジションを下げていて、こりゃだめだな(涙)。

 直線、マグマが抜けだしをはかって先頭に。

 いっけ~、マグマぁ。粘れ、粘れ、粘れ~!!!!

 声を限りに叫んだが、ゴール直前、後ろから飛んできた馬たちに飲み込まれて惜しい4着。くぅぅぅぅぅぅぅっ。惜しい競馬だったなあ。よくやったぞ、松本君。

 さあ、いよいよ皐月賞。

 重馬場の毎日杯、後続をぶっちぎって異様な時計で勝ったメイショウタバル。ここでも期待大。自分のリズムで逃げられれば、ユーバーレーベンに続くゴールドシップ産駒のGI制覇も夢ではない。

 まずはタバルの単勝。抜けた存在の馬はいないのだから荒れる可能性も大いに高い。ならば、我ら夫婦のレギュラー馬券、ワイドが炸裂してもおかしくはないだろう。ということで、タバルからミスタージーティー、アーバンシック、コスモキュランダへのワイド。妻の希望でアーバンシックとキュランダのワイドも押さえた。

 テレビ画面を通して見るタバルはパドックでも返し馬でも落ち着いている。これなら行けるだろう。やったれ、タバル!!

 スタート直後、タバルは先手を主張して出ていく。んが、シリウスコルトとアレグロブリランテも好スタートを決めてタバルに圧をかけていく。だめだだめだだめだ、それだと3頭とも自滅じゃないか。なに考えてんだよ!!

 タバル、ハナを取り切るも勢いが止まらない。ただでさえ前進気勢が強いのに、それに拍車がかかってしまっている。

 1000メートル通過57秒5。アナウンサーの声が聞こえた瞬間、我らの皐月賞は幕を閉じた。いくらなんでも速すぎる。

 案の定、タバルは直線で失速。最後着に終わってしまった。

 まあ、負けた原因がはっきりしているので大きな落胆はない。というか、ステイゴールド一族推しが、いちいち大敗を気にしていたら身が持たない。ステイゴールド自身が人間の期待を裏切り続けた馬なのだ。負けても負けてもただ応援するのみ。勝ったときの喜びはひとしおだ。

 厩舎が違ったら、鞍上が違ったらと思うことがないでもないが、そういう厩舎、そういう鞍上というのが一族の宿命なのだ。ノーザン生産でノーザン系のクラブ馬で一流の厩舎、一流の騎手になったって能力を発揮できるとは限らないしね。ノーザン系でものになった一族といえば、ラッキーライラックと、一族ファンにとっては幻のGI馬、ギルデッドミラーしかいないんだし。

 ドリジャやオルフェだって白老F、フェノーメノは追分F、フェスタもゴルシも日高の馬。そんな環境でディープやキンカメに次ぐ種牡馬となったステイゴールドなのだ。いつか、逆境を跳ね返してくれるに違いない。

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馳星周 近影

馳星周

1965年北海道浦河町生まれ。1996年『不夜城』で小説家デビュー。2020年『少年と犬』で直木賞受賞。

馬産地で生まれ育ったがゆえに馬を嫌い、長らく競馬とは無縁で過ごしてきたが、七年ほど前から夫婦で競馬にはまり、ステイゴールド一族を応援する日々を送る。好きが高じて競馬小説も書きはじめ『黄金旅程』、『ロスト・イン・ザ・ターフ』などを上梓。2024年春、凱旋門賞を目指すホースマンたちを描いた『フェスタ』を刊行予定

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