小説『不夜城』や『少年と犬』などで知られる作家・馳星周さんによる競馬エッセイ『黄金旅程な週末』。ステイゴールドとその一族の熱烈なファンである著者の奮闘振りをお楽しみください。
▼新刊発売のお知らせ
馳星周さんの新刊『フェスタ』が絶賛発売中です。ナカヤマフェスタ産駒で凱旋門賞制覇を目指す生産者、馬主、陣営を描いた群像劇です。
土曜日の初陣は京都1R。オルフェ産駒のゼットメルベーユが4番人気。ここは間違いなく馬券に絡んでくるだろうと自信を持って、ローマンレイクとマックスセレナーデに流したワイド2点。
ところが、メルベーユ、中団追走のままなんの見せ場もなく8着。マジかよ。マックスが3着のローマンが4着。縦目を押さえていたとしても外れだった。
新潟2Rもオルフェ産駒のスマートレザルト。ここは1番人気のホレーショ強いでしょ? あとメイショウフウドウもなかなかなんだよね。というわけで3連複1点勝負。
ホレーショは堂々の1着、フウドウも2着。読みはバッチリ。なのに、肝心のレザルトが6着。くそ~。
ホレーショとフウドウの馬連は10倍超え。だからといって、一族を抜かした馬券は買えぬ。
京都3Rは、尾花栗毛のニホンピロゴルディ。金色に輝く鬣と尾が美しい馬だ。ここはメイショウヨスガラとのワイドで勝負。上がりのかかるレースで、ゴルディ、直線で他馬を差しきって見事1着! が、2着に超人気薄の馬が入ってヨスガラ、ハナ差の4着。やめて~(号泣)。
でも、勝ったからよし。この時期の未勝利勝ち上がりは格別に嬉しい。
東京4Rは一族が3頭出走も、どの馬も力が足りないと見てケン。後悔させてくれと思いながらレースを見守ったがダメだった。
新潟5Rはゴルシ産駒のマイネルガンナー。1番人気のプロスペクトが堅いと見て、馬連ワイド。ガンナー、直線しぶとく追い込んで3着。なのに、プロスペクトがどこにもいない。
うーん、ここのところ、人気薄の一族が激走してくれてるのに中々馬券が取れないなあ。
新潟7Rはウインルピナス。少頭数で波乱も少ないだろうとケンで応援。ルピナス3着。
東京7Rはマンマリアーレが1番人気。確かに近況はいいけど、1番人気に推されるほど信用はならんということでケン。2、3番人気なら馬券買いたかったのだけれど。で、マンマリは8着に沈む。一族の1番人気はほんとに怖い。
京都ハイジャンプはラジェドールとメイショウアツイタが出走。ラジェドールはちょっと力が足りないと思うが、アツイタは不当な人気。結構走るし、鞍上は森一馬だよ?
相手にはサンデイビスを指名。馬連ワイドで勝負。
サンデイビス見事1着もアツイタそれ4。くぅぅぅぅ。でも、前の3頭とは差があったな。
新潟9Rはやぶさ賞。オルフェっ仔のルクスパラディを狙うつもりだったのだが、まさかの最内枠。開幕週ならまだしも、馬場が荒れた千直ではきつい。のでケン。
パラディは8着。先週のエコロレジーナも3番枠だったし、ツキがないわ。
東京9R国分寺特別は一族3頭。ウインエーデルが3番人気だが、モレイラ乗るし勝ち負けでしょ。オメガオリーブは足りないけど、イトカワサクラは行けそう。前走は久々で見所がなかったけれど、叩き2走目で一変が見込める。
2頭のワイド1点で勝負。エーデルは中団、サクラは最後方。うーん、これは厳しいなあ。
エーデル、モレイラの最高の導きがあって1着。サクラもいい脚で追い込んできたが5着同着まで。もう一列前で競馬したかった。
京都10R上賀茂Sは母父オルフェのストライク。2番人気サイモンザナドゥへの馬単。人気薄の馬をつらつら眺めて11番人気ロッキーサンダーとのワイドも追加。
ストライク、後方から差し脚伸ばして2着。1着が14番人気のレガーメペスカ。3着が9番人気のマリアナトレンチ。荒れすぎ。
新潟11R信濃川特別はマイネルメモリーとカンティプール。馬場が荒れた新潟は一族の庭みたいなもの。二頭の馬連ワイドで勝負。
最後の直線、他馬がほとんど外に進路を取る中、カンティプール1頭だけ内ラチ沿いを激走。大丈夫か? そこでいいのか? とハラハラしながら見守ったが、カンティプール粘って2着。メモリーも差し脚伸ばして3着確保。
やった!! ワイド12倍。ありがとう。
さてさて、京都11R都大路S。このレースが我ら夫婦の今週の大目玉。狙うはもちろんショウナンマグマ。前走は番手に控えて4着。前々走は逃げて3着。今回はハナを切れそうな面子だし、1800メートルはベストの距離。馬券内はもちろん、勝ち負けまである。
アルナシームもここは良さそう。マグマとアルナシームの馬連。2頭軸3連複でダノンティンパニーとセントカメリアに流した3連複。これ、絶対当たる気がする!
スタートを五分に出たマグマ。さあ、そのまま押していって後はハナを切るだけだ。
あれ? あれれ?
控えるつもりかよ、ゾエ? ハナを切ってこその馬だぞ。控えても2、3番手までだぞ。
前へ行くと主張するわけでもなく、マグマ、ずるずると下がって5、6番手。まずいぞ、まずいぞ、これは非常にまずいぞ。なにしてくれてんだよ、ゾエ!
はい、不安的中。マグマ、直線に入ってもなにもできぬままただ流れ込んでの6着。
控えたのは鞍上の判断ですか? 陣営の作戦ですか?
どっちにしろあり得ないだろうが~!!
久々に怒り沸騰。妻も激怒で家の中の雰囲気が見る間に悪化していく。
こういう時、犬がいれば緩衝材になってくれるのだが、その犬も今はいない。
そのまま東京メイン京王杯SCに向かうも、千四短すぎるだろう。モレイラ乗るから過剰人気だろう。まったくやってられんぜよ。
頭に血がのぼったままなので、冷静な馬券検討などできるはずもなく、ソーヴァリアントの単勝だけ買ってお茶を濁す。
ソーヴァリ、いいところなく敗戦。レース後のモレイラのコメントは、もっと距離があった方がいい。でしょでしょ。1800メートルがベストだと思うんですよ。ルメさん、普段もっといい馬にしか乗らないから変に感じただけじゃないの? それを鵜呑みにして距離どんどん詰めてって千四で使うとか、どういう厩舎だよ!
マグマで火が点いた怒りに油が注がれる(苦笑)。
ここで妻が天使のような笑顔を浮かべてわたしに言った。
「いつまでも怒っててもしょうがないでしょ。それが競馬なんだから。東京最終で少しでも負けを取り返しましょ」
素晴らしい妻だと思いませんか?
怒りを鎮めて馬券検討再開。
一族の出走がない分、冷静な判断ができる。
わたしの目に止まったのはコーセイ・ミウラのフライヤートゥルー。妻が選んだのがウィンダミア。それぞれ3、4番人気だが、ワイドで15倍はつく。
「よっしゃ、これで行こう」
フライヤーとウィンダミアのワイド。夫婦渾身の一点勝負。
ゲートが開き、ウィンダミアは好発を決めて好位確保。が、フライヤーが出遅れて中団から。だめだよー、イン3ぐらいの予定だったのに。
この位置じゃ万事休すと諦めていたら、直線、先団の馬たちが垂れてくる。フライヤー、その間隙を縫ってじりじりと脚を進めて3着入線。ウィンダミアも2着でワイド的中!
最終的な配当は10倍まで落ちていたが、よしよし。当たればいいの。あれだけ沸騰していた怒りはどこに消えたのかしら?
というわけで土曜競馬は丸く収まった。
日曜は一族の出走が少なく、勝ち負けになりそうな馬は人気している。のんびりやって、ヴィクトリアマイルに集中しよう。
そう妻と話して競馬開始。
東京1Rにハクサンマロン。1、2番人気の馬は両方とも怪しいなあ。ということで人気薄のネムレスクイーンとバルミーパールへワイド2点。
マロン2着もネムレスそれ4。
京都2R、一族3頭。そのうちメイショウアラセツはどう考えても勝ち負け。初出走のゴルシっ仔ペシュブロンシュが面白そう。それから、行ききったら粘りこみそうなメイショウアラジンとのワイド2点。ペシュはどうかわからないけど、メイショウワイドは行けそうな気がする。
アラジン、2コーナー辺りから主張してハナを取り切る。よし、こちらの思惑どおり。あとは逃げ粘ってくれて、追い込んでくるアラセツと一緒に入線してくれればいい。おお、ペシュも好位につけてるぞ。今日はどうかもだけど、いずれ走ってきそうだな。
アラジン、読みどおり逃げ粘って3着。が、アラセツ、まったくいいところなしの6着。勘弁してください。
新潟5R障害未勝利。ステイ直子ザスリーサーティ。相手はガイフウカイセイだが馬連はもちろん、馬単でも10倍いかないのでトラファルガーを入れた3連複と単勝。
ザスリー、好位につけて危なげない運び。よっしゃ、これは勝つぞと思ったら、坂口騎手が手を動かす。
あれ? ちょっと早くない?
そう思う間もなく、石神騎手騎乗のステラナビゲーターが背後に迫ってくる。
手応えが全然違うし(涙)。
ザスリー、ステラに楽に交わされて2着。鞍上の経験の差がもろに出たレースだった。坂口君、たくさん勉強してね。
東京5Rは母父オルフェのトラストボス。モレイラ騎乗ということもあいまって1.3倍のダントツ人気。いやあ、相手も弱いけど、さすがにそれはないっしょ。うちの一族だよ。モレイラ乗っても信用ならんよ。
ということでケン。サルヴェージワークがまさかの逃げの手に出て、トラストボス、捕まえきれずの2着。
ね? 怖いでしょ。それにしてもサルヴェージ騎乗の大野君、トラストに勝つにはあれしかないというレースだった。お見事。
京都6Rはアスターブジエ。馬券内は堅そうと思ったが少頭数で妙味が薄くケン。ブジエ3着も、配当安すぎてケンして正解。
京都9Rにダンツエスプリとナムアミダブツ。エスプリの調教タイムがいい。でも、当てにならない気性なんだよなあ。ナムアミダブツは悪い意味で凄い調教タイム。しょうがなくケン。エスプリ最後方から上がり最速タイで突っ込んで来るも届かずの5着。ナムは最後着。あの調教じゃね。
京都10R錦Sにトオヤリトセイト。数少ないドリジャ産駒で頑張って欲しい。雨が降ればと雨乞いしてみたが、午前中に小雨降っただけに終わってしまった。それでも、3番人気ソレイユヴィータとのワイドを摘まんでみる。
トオヤ、馬体故障で競走中止。軽い骨折のようだが、年齢的にこれで引退かな。寂しい。
新潟11R弥彦Sはミカッテヨンデイイとマリネロ。ミカは足りない。マリネロは連勝中だけど、勝ったのは小倉。新潟の長い直線は厳しそう。せめて丹内乗ってくれてたらなあ。とグチグチ言いながら、それでも1番人気セレシオンとのワイドを購入。
やっぱり、丹内君乗ってない時点でケンすべきだった。鞍上の西塚君、大外枠から、馬場が死んでる内を選んで進んでいって伸びずに敗退。
ヴィクトリアマイル。ライラック、調教微妙だし最内枠はなあ……ウンブライルとのワイド。ライラックとは別にウンブライルとフィールシンパシーのワイドも追加。
ライラック、スタート決めて中団でレースを進めるも直線に入ると早々と失速。やっぱ、マイルは無理っぽい。
さあ、だれが勝つのかしら? モレイラ? ルメさん? それともユタカさんの4501勝目?
直線ごちゃつくなか、1頭、抜けた脚色で外から飛んでくる。ナミュールかと思ったら、テンハッピーローズ。
こうなったら、馬券なんてどうでもいい。
行け、ツム、ツム、ツム、ツム~。
夫婦で叫んでテンハッピーローズと津村騎手を応援。テンハッピーローズ、見事な勝利。
いやあ、大波乱もいいけど、津村騎手の初GI制覇は良かったなあ。おめでとう。
丸田君のナランフレグの時ももらい泣きしちゃったし、なんで初GI制覇ってこんなにも盛り上がるんかのう。
2匹目のドジョウを狙ってこの日も東京最終レースに参戦するも撃沈。
二日間の収支はマイナス。
いいんだ。来週、コガネノソラかホーエリートに取り返してもらうんだから。