小説『不夜城』や『少年と犬』などで知られる作家・馳星周さんによる競馬エッセイ『黄金旅程な週末』。ステイゴールドとその一族の熱烈なファンである著者の奮闘振りをお楽しみください。
▼直木賞「少年と犬」映画化のお知らせ
第163回直木賞を受賞した馳星周さんの名作小説『少年と犬』(文春文庫)が映画化されることになりました。
▼文庫版発売のお知らせ
馳星周さん初めての競馬小説『黄金旅程』が文庫版として9/20(金)に発売されております。ぜひご一読を！
さて、今週は天皇賞だったが、府中の芝2000・GIは、我が一族はほぼお呼びでない。今年も出走はなく、菊花賞とは違い、我ら夫婦のテンションは著しく低い。
それでも、土曜の重賞、スワンSにはトゥラヴェスーラがいる。今週のメインはこのレースだと思い定めて競馬に臨む。
土曜最初のレースは東京2R。一族5頭が大挙して挑む。このうち、リアライズオーラムとピエナフェーヴルは勝ち負け。ルメさんの馬がダントツ1番人気だが、飛んでもらいましょう。
リアライズとピエナの馬単返し。2点で勝負。
2頭とも好位での競馬。直線、リアライズが抜け出しを計って、少し遅れ気味でピエナも追っていく。ルメさんの馬は手応えが悪い。
よっしゃ、ワンツーもらおうぜ！
リアライズの1着は固そうだ。後は、ピエナがもう1頭交わすのみ。
来い、来い、来い、ピエナ！！
我ら夫婦の絶叫に応えて、ピエナ見事に2着入線。馬単は14倍。まずまずのスタートだし、なにより、一族ワンツーは超気持ちいい。
新潟3Rにイエデゴロゴロ。前走は痛恨の出遅れだったんだよなあ。今度はスタート決めてくれよ。今シリーズ絶好調、西塚騎手の馬とのワイド。
ゴロゴロ、出遅れたわけじゃないが、いい時のようなスタート決められず5着。くそぅ。
新馬戦の間は昼食休憩。
午後は新潟6Rから。母父ステイのマリエンプラッツが4番人気。前走見所があったウインブライト産駒のハイタッチマドンナへのワイド。スパイラルとディフューズは足りないよなあ。馬券は買わずに応援。
ところが、どう考えたって来ないと思っていたディフューズが激走して3着。複勝は50倍超え。ああん、複勝だけでも買っておけばよかった～。特大のじゃない砲。悔しい。
京都7Rにアレンテージョ。4ヶ月の休み明けだが、苦にしないタイプだし、京都では2走続けて2着の実績もある。鞍上の西村君も手の内に入れているだろう。勝っておくれ。
1、2番人気に流した馬連2点。
が、アレンテージョ、まったく走らずの7着。なんでよ～？
東京8Rにニシノコイゴコロとヘラクレスノット。ヘラクレスは足りないが、コイゴコロは持久戦になればしぶとい。
ルメさんも川田もいるけど、ここはリューセイでしょ。3番人気、シンハナーダとのワイド。
一族2頭並んで好位での競馬。ヘラクレスは早々と脱落したが、コイゴコロ、粘る、粘る。
1着シンハナーダの3着コイゴコロでワイド22倍。よっしゃ～！ ありがとう、コイゴコロ。
東京9R伊勢崎特別にグロッシェン。ここは勝ち負けというより必勝ですね。ダントツ1番人気で少頭数。妙味ないので馬券は買わずに応援。
グロッシェン、完勝。フェブラリーSに行かないかなあ。
新潟10R直江津特別にゴルシっ仔のウインメイフラワー。人気はないけど、今の新潟芝は脚質的に合うはず。3番人気コスモオピニオンとのワイド。
コスモ3着も、メイフラワー7着まで。やっぱ、叩いてからだったか。
さあさあ、今週のメインレース、スワンS。
トゥラヴェスーラは13番人気。は？ GI・3着馬だよ？ 前走も直線差し脚伸ばして5着だよ？ 今の京都、外差し利くよ？
9歳だから？ 舐めてんじゃねーぞ。
まずはタイトルを獲ってほしいので単勝を。次いで、強い逃げ馬のクランフォードとのワイド。それから、先週の菊花賞同様、後ろから行く馬とのワイドも買いたいね。どれがいいかな？
あ、オフトレイルが面白そう。それに鞍上も菊のアドマイヤテラと同じレジェンドじゃないですか。柳の下のドジョウじゃないけど、今週もレジェンドにお膳立てしてもらいましょう。
オフトレイルとのワイドを追加！
レースはウインカーネリアンがハナを奪って、早々にクランフォードの目はなくなった。トゥラとトレイルは最後方から。いいよ、いいよ。じっと脚溜めて、直線で弾けてくださいな。
直線、馬群後ろ目にいたダノンマッキンリーが強い競馬。トレイルとトゥラも懸命に末脚を伸ばす。勝つのはマッキンリーだろうけど、トレイル2着っぽい。あとは、トゥラヴェスーラが来てくれれば完璧。
トゥラヴェスーラ、来い、来い、差せ！！
来ました！ 差しました！！ 見事な3着。
な、言ったろう？ 年齢なんて関係ないんだから。堅実に走る馬なんだから。外差し馬場なんだから。
オフトレイルとのワイドは80倍超え。これで今週の勝ち確。いや、今月の勝ち確じゃん。
ほんとにありがとう、トゥラヴェスーラ。大好きだよ。
この時点で我々は満腹だったのだが、京都最終にクリノフィガロがいた。馬券内確実でしょ。4番人気か。相手どうしようか？ あれ？ クリスチャンの3番人気とのワイドで10倍以上つくの？ じゃあ行っちゃえ。
ということで、フィガロとヴィンテージボンドのワイドを。
フィガロは馬群後方からの競馬。ヴィンテージは好位。フィガロ、もうちょい前での競馬がよかったなあ。
直線、クリスチャンがさすがの騎乗。上手いなあ。でもって、フィガロが内めをついて伸びてくる。
またまた来たよ、フィガロ2着。ヴィンテージ1着。馬連だったかあ。軍資金に余裕があるんだから馬連ワイドで行っておけばよかった。
それでもワイドは14倍。
満腹の上にデザートまで戴いちゃって、申し訳ないぐらい。
明日は天皇賞、お気楽に楽しもう。
爽快に目覚めた日曜日。新潟1R、朝イチから一族が5頭登場。マイネルアレスは馬券内確実として、相手は……ウインバーテックス、残りの3頭はちょっと足りないもんねえ。
懐に余裕あるもんだから調子ぶっこいて2頭の馬連ワイド。
が、一族全頭、なんの見せ場もなくレース終了。そんなあ、時計のかかる新潟芝なのに。一族のための馬場なのに……
京都1Rにオルフェっ仔のアイルビリーヴ。新馬戦2着で、今回も2番人気。しかし、危ういオルフェっ仔だ。危険な香りがする。ケンで応援。やっぱり4着。オルフェ産駒にはこれがあるからなあ。
新潟2Rに母母父ドリジャのトリリオンボーイ。ドリジャも曾お爺ちゃんかあ。前走2着も、今回は相手強化。厳しいと見てケン。結果7着。
京都2Rにオルフェっ仔のホウオウアンジュ。母父ステイのパーフェクトは除外。アンジュ1番人気だけど、この子もまた危険な香りが漂う。1番人気の一族馬を2、3着に想定した馬券など買いたくないのでケン。で、アンジュ3着。
京都3Rにポッドエルマーとドラギニャン。ドラギは足りないけど、ポッドは馬券内十分。3番人気ディープサミットが強いと見て2頭の馬連。1番人気を入れた3連複の2点。
ポッドエルマー、好位での競馬も直線失速。なんだよ、ゾエ～～～！
東京3R、エポカ産駒のガーネットウインク。ガーネットは6番人気。5番人気のガジュノリホワイトが面白い。2頭のワイドと思ったのだが、1番人気のダンケルドも強いでしょと3連複で。
結果、2、3、4着。クリスチャンが上手すぎるんですけど～(涙)。
新潟4R障害未勝利。母母父ステイのテクネチウムと母父ステイのイチリュウオー。テクネチウム、前走はパドックがよく見えなかったけど、今回は行けそう。よし、2頭のワイドだ。
テクネチウムがハナを切る。が、イチリュウオー、大きく出遅れ。馬券はジ・エンド。こうなったらテクネチウム、勝て～！！
はい。楽勝でした。馬券は外れても、勝ったから問題なし。
午後は新潟7Rから。復活をかけるフルレゾンとゴルシっ仔が2頭。ゴルシ2頭は足りないかな。ならば、妻推し国分恭介のジーティームソウとフルレゾンのワイドで。
フルレゾン、デファイには届かなかったけど、きっちり2着。で、3着にムソウが来てワイド21倍。恭介、先週に引き続きありがとう！
新潟9R湯沢特別にパンジャとモカラルビー。クロコスミアの娘であるモカラに勝ってほしいが、格上挑戦な上、調教がよろしくない。パンジャも距離が短すぎる懸念があるけど、ここは勝っておくれ。
1番人気のクロシェットノエルは、今の馬場が合いそうだけど、飛んでください。パンジャから3、4番人気の馬への馬連2点。
が、パンジャ、まったくいいところなく惨敗。モカラも見所なし。
京都10R古都Sにアスティとゴールデンスナップ。自己条件のスナップ、ここは勝たないとね。ダントツ1番人気で馬券妙味ないんだけど、アスティとのワイドだけ押さえる。
「鞍上、浜中君だけど大丈夫かな？」
と妻が不安そうに呟く。メイショウタバルの菊花賞が頭から離れんのよな。
馬が強いからなんとかなるだろうとレースを見守る。
淀の長丁場。最後の向こう正面で動いていって、直線、後続を突き放す競馬が見たい。
が、スナップ、動かず、動かず。ようやく直線でトップギアに入ったものの、1着馬ははるか彼方。
なにやってんだよ、浜中！！！
我が家における、一族に乗ってくると腹立たしい騎手ナンバー1の座は、浜中君が戸崎君から奪い取りました。
新潟メイン、ルミエールAD。今年最後の千直にカンティーユ。千直は確かはじめてだけど、スピードあるからねえ。8枠マイヨアポアとの馬連。千直名人、杉原君のクムシラコとのワイド。
カンティーユ、1枠から被せてきたマウンテンムスメにやられてハナを切れず。馬群の中で首を振り振り、すぐに走る気をなくす。もう、この気性だからしょうがない。
マイヨアポア1着のクムシラコ4着。
京都11RカシオペアSにショウナンマグマがいるが、鞍上浜中君なのでケン。大正解。
そして天皇賞。妻と一緒にダノンベルーガを買おうと決めた。ドウデュースとの馬連。リバティアイランドを入れた3連複。
最内枠で一発あるかもとベラジオオペラとベルーガのワイドも追加。
結果は、ドウデュースによるドウデュースのためのレース。2、3着が波乱で3連複100倍越え。こんな馬券買えないよう。
それにしても、レジェンドはやっぱりレジェンド。千両役者ですね。
今週のラストは東京12RペルセウスS。ベルダーイメルとフルムが登場。ベルダーは信用しづらいけど、やる時はやる馬。そしてフルム。夏の間小回り使われて負け続け、人気を落としているけど、本来はワンターンのコースが得意。陣営はなんで小回り使うのか。まあ、おかげで美味しいオッズで馬券買えるのだが。
川田騎手騎乗、アームズレインから一族に流したワイド2点。外れたって、今週は大勝ちだ。
レースはアームズレインか番手から。しめしめ。川田騎手ならそう乗ってくれると思っていた。フルムはそのちょっと後ろ。ベルダーは後方。その位置からじゃちょっと届かないかな。
直線抜け出るアームズレイン。その後ろにエミサキホコル。フルムが追いすがってくる。
行け、行け、フルム。どうせなら2着でフィニッシュだ！！
わずかに及ばず、フルム3着。それでも、ワイドは14倍。素晴らしい週末を見事に締めくくってくれた。ありがとうよ、フルム。
トゥラヴェスーラのおかげで今週は大勝ち。
まさに、信じるものは救われるだ。
これからも、一族馬券で邁進するのみ！
