小説『不夜城』や『少年と犬』などで知られる作家・馳星周さんによる競馬エッセイ『黄金旅程な週末』。ステイゴールドとその一族の熱烈なファンである著者の奮闘振りをお楽しみください。
▼直木賞「少年と犬」映画化のお知らせ
第163回直木賞を受賞した馳星周さんの名作小説『少年と犬』(文春文庫)が映画化されることになりました。公開は2025年3月20日です。
この上ない滑り出しとなった3月の中央競馬。今週も行くぞ! と、妻ともどもハイテンションで週末に臨んだわけだが、その結果やいかに? 2場開催は一族にも我ら夫婦にも分が悪いというのが懸念材料。
土曜は阪神1Rから。グリンダとオルロジェール。ロジェールを狙ってみましょう。
1番人気メイショウバスクとのワイドでスタート。が、結果は荒れて、バスクもロジェールも大敗。
中山1R。キタノライブリーが5番人気。オッズとしては、上位人気馬たちとはかなり差がある。美味しいじゃないの。ここは中山の横山家ということで、武史ジョッキーのサードウインドとのワイド。ライブリーの鞍上も横山騎手だから、横山ワイドだ。
ここで妻が「デンリッレハウエルが気になる」と言う。じゃあ、馬券買う? と訊いたら、「朝イチで自信ないからやめとく」との返事。ああ、そんなことないよと押し切ればよかった。
結果は1着武史君、2着ライブリー、そして3着がデンリッレ。一応15倍のワイドは取ったが、デンリッレも買い足しておけば56倍だった。悔しい。
でも、まあ、上々のスタートを切れたということでよしとしておこう。
この後しばらくは一族のいないレースが続く。2場開催じゃよくあること。
中山4R障害未勝利。グランナヴィールが3番人気、アルデドゥオーモ5番人気、コスモエスメラルダがブービー人気。まあ、初障害だから仕方がない。
障害競馬は一族の庭だぞ! ナヴィールとドゥオーモの馬連ワイド。ワイドは配当がつかないから倍額で勝負。1番人気のサラフィエルが強いから3連複とも思ったのだが、障害はなにが起こるかわからないしね。
ドゥオーモが番手、ナヴィールがその後ろでの序盤。3~4角でドゥオーモが位置を下げていく。入れ替わるようにナヴィールが逃げるカイトレッドの後ろへ。
交わせ、交わせ! 馬券外れてもいいから、勝て、ナヴィール!! 勝利は目前と思われた次の瞬間、外からプラチナムレイアーが飛んできてナヴィール2着。がっかりしてたら、終わったかに見えたドゥオーモが盛り返してきて3着入線!
ワイドは8倍だったけど、倍額買ってたからねえ。3連複にしなくて大正解だった。
続いては阪神5R。ブライトノヴァが8番人気。急遽の乗り替わりなれど、北村友一騎手のアンテステーリアとのワイドを買ってみる。
アンテ3着も、ノヴァ走らず。
中山6R。ロードスカイブルーが4番人気。ミスターボビーが8番人気。とりあえず、2頭のワイド。
それから、スカイブルーと調教良さげな丹内騎手のプロフェータとのワイドを。
堅い決着で、プロフェータは4着、スカイブルーは5着。1、2着とはかなり離されたので、悔しくはない。
阪神7Rはペネトレイトゴーが1番人気。川田大魔神様、よろしくお願いしますよ。なんでもいいから勝たせてください。
ここは5番人気タケノシンセイとの馬連。2番人気ジュンラトゥールを入れた3連複。
ペネトレイト、3番手で競馬を進めるも、直線、失速。うそー。結果は大荒れで、タケノシンセイ3着、ペネトレイト4着。
中山7Rのシュードタキライトは8ヶ月の休み明け。叩いてからの方が良さげだけど、仕上がってれば勝ち負けだよ。ルーキー舟山騎手の1番人気レーヴブリリアントとの馬連を摘まむ。
ブリリアント見事1着も、タキライトは掲示板まで。やっぱり、叩いてからだった。舟山君、初勝利おめでとう! いい馬用意してもらったね。
阪神9Rにパンデアスカル。人気はないけど、鞍上が阪神得意の幸騎手。京都じゃ買いたくないけど、ここなら買える。1番人気ブリタニア、3番人気イングランドアイズへワイドで流す。
アスカル、馬群後ろ目から直線、脚を伸ばすも僅差のそれ4! イングランド1着のブリタニア3着だから、これはぐやじいよう。
中山9R、潮来特別はナムアミダブツ。近走さっぱりだけど、中山は得意。3番人気、カフェグランデとのワイドを!
ナムアミダブツ、直線、じりじりと脚を伸ばして4着。これは頑張った4着だぞ。
中山10Rの上総Sにストライクとマイネルクロンヌ。クロンヌは足りないけど、ストライクも中山が大好物。6番人気なら涎が出る。
2番人気パシアンジャンを相手にピック。馬連ワイド。それから、マイネルクロンヌは買えないけど代わりにねと、1番人気ロードクロンヌとのワイドも追加。
まずはスタートでパシアンジャンが大きく出遅れてジエンド。こうなりゃ、代わりのクロンヌとストライクに縋るしかない。
ストライク、直線、インを突いて馬群を捌き、脚を伸ばすが先に抜け出したクロンヌを捉えきれずの2着。まあでもいいよ、ワイド取らせてもらったから? え? オッズ10倍切っちゃうの? 買った時はもっとついてたのに~(涙)。
悔しさを噛みしめながら、両重賞へ。
フィリーズレビューは一族いないしパスするかと思っていたのだが、妻が「チェルビアット買う!」と宣言。
チェルビアットの母はキューティゴールド。つまり、ゴールデンサッシュ牝系だ。親戚と言えなくもない。おまけに鞍上は妻の推し騎手、北村友一。
全然人気がないので、気楽に複勝を購入。気楽にレースを見る。
するとするとすると!
道中後方待機だったチェルビアットが直線でするすると伸びてくる。
来い、チェルビアット!!
お気楽さなど吹き飛んで、叫びまくる夫と妻。
そうしたら、来ましたよ、チェルビアット、2着! 複勝は16倍。朝イチの悔しさを重賞で取り返した妻だった。
いつもいつも、頭が下がります。
そして、中山牝馬S。もちろん、ホーエリートから。
相手をどうするか吟味する夫婦。妻のピックはシランケド。わたしのピックはクリスマスパレード。エリートとクリスマスの馬連ワイド、シランケドとのワイド、3点で勝負!
エリート、まずは中団からの競馬。二の脚もしっかり効いて、成長を感じられる走りっぷり。これなら行けるっしょ。
直線、末脚炸裂、これは勝ったろ! と思ったら、シランケドがもう一段上の末脚を披露。悔しいけれど、差されてしまった。現状の力の差かな。3着にクリスマスパレードで、馬連こそ逃したものの、ワイドをダブルでゲット。それぞれ11倍と12倍。先週に引き続き、馬券収支は大幅プラス。
おお、凄いぞ3月。2場開催なのに、こんなに一族が激走して、こんなに馬券が当たるとは。
翌日曜日。妻は所用で上京。わたしひとりで競馬に臨むことに。調子に乗って馬券買いまくると後で大目玉だから、気を引き締めて行かねば。でもまあ、一族の出走少ないし、買えるレースもあんまりないんだよなあ。
というわけで、馬券を買うレースは障害未勝利、クリノフィガロが出る阪神8R、ウインエーデルとショウナンマグマの大阪城S、そして、弥生賞に絞ることに。
まずは障害未勝利。スズカマジェスタとウイングランブルーは共に初障害。しかし、障害が得意な血筋、どちらかが馬券に絡む可能性はある。
1番人気ミラクルジニアは強いんだけど、鞍上の伴騎手、ここのところ乗れていない。ならば、2番人気のソルドラードから一族2頭に流したワイド。ついでに、マジェスタの単勝も。
グランブルーが好発決めて好位から。マジェスタは後方から。グランブルーはどこかでタレるんだろうなあ。マジェスタは押し上げていけるかな。などと思いながらレースを見守る。
すると、4角手前からマジェスタが捲り上げて行って、中々の手応え。おお、これ、もしかして頭ある? おれ、単勝持ってるんだよ!!
とぬか喜びした次の瞬間、飛越後、着地したマジェスタが転倒。他の馬たちを巻き込む大惨事に。
言葉がない。マジェスタとグレイトゲイナーが天に還ってしまった。グランブルーが3着に入ったが、当然、喜びなどなく、胸が重い。
今まで頑張って走ってくれて、本当にありがとう、マジェスタ。
しばらく競馬から離れ、読書をしたり、犬と戯れたり。
なんとか気分を持ち直すことに成功して、阪神8R。クリノフィガロ、前走は5着に負けたけど、休み明けで太め残りだったし、道中不利もあった。叩き2走目のここは勝ち負け。1番人気キャピタルサックスへの馬単。そして、面白い穴馬を2頭発見。ルフトクスとダブルジョーク。それぞれ9番人気、8番人気だけど、穴をあけそうな匂いがぷんぷん。
フィガロから2頭に流したワイドを購入。
どれか当たりそうな気がする~。
ところが。パドック見ると、フィガロ、馬体重プラス2キロ。絞れてないじゃん~。大丈夫かよ。
不安は的中し、フィガロ、直線で失速。
1着キャピタル、2着ルフトクス、3着ダブルジョークという見事すぎる縦目を食らった。ルフトクスとダブルジョークのワイド買っておけばよかったよ~。
大阪城S。ウインエーデルの調教がめっちゃいい。陣営も鞍上に松山騎手を据えてきたってことは、勝算ありと見た。ここは狙うしかあるまい。まずは、去年3着の実績がある一族、ショウナンマグマとのワイド。
ウエストナウが1番人気だけど、ここはデビットバローズじゃないの? というわけで、デビットとの馬連。その2頭から、3番人気オールナットと4番人気トーセンリョウを入れた3連複でどうでしょう?
エーデルはまずまずのスタート、マグマはやや出負けから最後方。なんだよ、先行して味の出る馬なのに。この時点でマグマは終了。
エーデル、中に入れられず、中団の外目。こりゃ、きついか。
それでも応援。
直線、そこから伸びてこいと叫びまくるも、坂の途中で失速。やっぱり、外外回らされてはいくら調子がよくてもきつい。
相手に買った3頭で1~3着を独占。ウエストナウ要らないまではよかったか。
そしてメインの弥生賞。まずはマイネルゼウスの複勝を。そして、本命のアロヒアリイ。まだまだ体は緩いけど、ポテンシャルは相当なもの。勝てとは言わんが、なんとしてでも皐月賞の権利は欲しい。
問題は相手。1番人気のミュージアムマイルはここがメイチじゃないだろうし、少し渋った馬場がどうか。ナグルファルは過剰人気。ジュタも乗り替わりで買いづらい。となると、ヴィンセンシオ。それから、ホープフルSでまくりを打って穴をあけたファウストラーゼン。相当スタミナありそうだもんな、この馬。ホープフル組が馬券に絡むというならこの子でしょ。
というわけで、本線はヴィンセンシオとの馬単馬連。ファウストラーゼンとのワイドを保険に。
ここで、東京の妻から電話。
「ベストシーン買って」
いいよお、亀谷さんの推奨馬だし、アロヒとのワイド買いましょう。
「それと、ルメさんとのワイドも」
なるほど。ルメー田辺馬券ね。了解です。
ということで、ベストシーンとアロヒ、ヴィンセンシオのワイドを追加。懐に余裕があると、点数気にせずに買えるのがいいねえ。
アロヒ、まずまずのスタートを決めるも、すぐに後方へ引いていく。あれ? ヴィンセンシオが押し出されるようにハナ切って、なんかどスローですよ? そんな位置で大丈夫?
不安に駆られながらレースを見守っていると、ラーゼンがホープフルと同じように捲り上げて行ってハナを奪う。お、これでアロヒにも芽が出てきた。直線よーいドンにはならなさそう。
三角手前でアロヒが位置押し上げていって、ミュージアムマイルと併走。なんか、お爺ちゃんのオルフェっていうより、ゴルシっぽい走り。
4角で大きく外に膨らんで、口向きの悪さも見せながら直線へ。ミュージアムマイルを振り切って、前を行くラーゼンとヴィンセンシオにぐんぐん迫っていく。
差せ、差せ、差せ~!!!
くぅ惜しい。ヴィンセンシオにわずか届かず3着。ラーゼンが押し切って優勝。ワイドは17倍。
体緩いし、気性幼いし、春のクラシックで結果出せるかどうかは微妙だけど、秋に本格化したら、菊は取りそうな気がする。来年、天皇賞春をヘデントールとワンツーしてくれたら最高なんだが。
この馬を負かしたゴーソーファーは、オークスの本命だな。
というわけで、妻が留守でもなんとかプラス収支を守り、先週、今週と大勝。
この調子で突き進んで行きたいが、一族が走ってくれないと我が家の馬券も当たらんのよねえ。