名馬を題材にしながら、初級者向けの入門編から、中級者向けの応用編まで、馬券術のファクターや考え方をまとめていく連載。第5回に取り上げるのは、ウインブライトと季節適性です。
ウインブライトはつい2020年まで現役の競走馬だったので、知っている人は多いでしょう。さすがに前回のシンボリルドルフは昔に遡りすぎたのではないかという反省もあり、最近の馬にしてみました。
ウインブライトは芝1800mから芝2000mの重賞を7勝した中距離の名馬です。国内のGI勝ちはありませんが、香港のGIを2勝。中山の重賞を4勝したことから「中山の鬼」の異名もありました。
全24戦のうち、22戦で松岡正海騎手が手綱を取り、5歳の中山記念では松岡騎手が骨折後の手術でプレートを埋め込んだまま騎乗したという、執念のエピソードも知られます。
2着以内に入った重賞を並べると、以下のようになります。
「中山と香港の鬼」であるだけでなく、もうひとつの特徴が読み取れます。それは「冬に強い」ことです。12月から2月を冬とするならば、ウインブライトの冬の重賞成績は【4-2-0-0】。連対率100%でした。
中距離の王者なら、東京や阪神の重賞でも好走できたはず。しかし、秋の天皇賞は8着と10着。大阪杯は12着。中山の鬼なら、中山で凡走がなかったかというと、3歳の皐月賞は8着、5歳のオールカマーは9着。
4月の香港クイーンエリザベス2世カップを勝っているのだから、冬馬呼ばわりは失礼かもしれませんが、単純に「中山と香港の鬼」だったわけではないと、わかるのではないでしょうか。4月から10月の国内重賞は【0-0-0-7】でした。
こんなふうに競走馬には、冬に強い馬や、夏に強い馬など、得意な季節がはっきりしている「季節馬」がよくいます。これを見つけることが、馬券戦術の上でとても役に立ちます。
冬馬が存在する理由は、
・冬という寒い季節が合う。暑さが苦手。
・冬の芝や、冬のダートが合う。
・中山競馬場が得意(12月と1月に開催されるため)。
・冬に組まれるレースに向く。例えば長距離重賞は冬に多い。
夏馬が存在する理由は、
・夏という暑い季節が合う。体調が良くなる。
・汗をかきやすいため、馬体が絞れる。
・ローカル競馬場が得意。または現地滞在の競馬が得意。
・冬に調子が落ちる。例えば裂蹄は、寒いと症状が出やすい。
などなど。これを見つけるには、競走馬には得意な季節があるという前提で戦歴をながめること、厩舎陣営の「暑い季節は良くない」といったコメントに敏感になること。
つい先週の2月4日アルデバランS(中京ダート1900m)でも、冬馬の激走がありました。10番人気で2着にきたホウオウルバンは、一年前の冬にダートで3連勝。全4勝が12月から3月に集中している馬です。それが暖かい季節は凡走が続き、人気を落としたところでアルデバランSを激走!
ちょうどサウジアラビアの招待レースが話題の今のタイミングでいうと、2021年2月のリヤド・ダートスプリントを快勝したコパノキッキングも、毎年冬になると調子を上げる馬でした。
これらに注目して、季節馬を見つけてください。ここまでが入門編。次回は季節馬を見つけるための応用編です。
【第5回】季節適性をウインブライトに学ぶ(入門編)/王様・田端到の「名馬に学ぶ馬券術」
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田端到
1962年、新潟生まれ。週刊誌記者を経てフリーのライターに。辛辣ながらも軽妙な文章には定評があり、馬券初心者からベテランまで多くのファンを持つ。近著に「田端到・加藤栄の種牡馬事典」シリーズ、「金満血統王国」シリーズなど。ウェブサイト・noteでは競馬マガジン『王様の極楽競馬天国』を連載中。