『田端到・加藤栄の種牡馬事典』で知られる田端到氏が、馬券術の入門から応用まで競馬予想の考え方・コツを伝授する『王様・田端到の「名馬に学ぶ馬券術」』。
今回のテーマは前回に引き続き「馬体重の考え方」です。ぜひお楽しみください!
前回は、レースによって馬体重の重い馬が強い重賞と、軽い馬が強い重賞があるという話をしました。
今回は個別の馬に関する馬体重の見方をまとめていきます。大幅プラスや大幅マイナスはどう考えればいいのか。「大幅」とは、10キロ以上の増減を指します。
【ポイント1】休み明けより、休み明け2戦目の大幅増減に要注意
まずはこれです。馬体重は休み明けの馬で気にされがちですが、休み明けは大幅プラスでも走ることが多く、単純な数字だけ見ても判断が難しい。それよりも馬体重の増減を気にするべきは、休み明け2戦目だという提案です。
2戦目に馬体重が大幅に増えるのは、どんな理由があるか。普通に考えれば、休み明けを走った後、馬体をゆるめたケースです。あるいは、汗をかきにくい時期に入り、馬体が絞れない。
2戦目に馬体重が大幅に減るのは、どんな理由があるか。休み明けを走った後、反動が出て、カイバ食いが悪くなった。あるいは、まだ太かった休み明けを叩いて、今度は絞れたケース。
いずれにしろ、休み明けのレースが好走だったとしたら、2戦目の馬体重は大幅プラスでも大幅マイナスでも良くない。
例を挙げます。ステラヴェローチェの21年菊花賞がそうでした。休み明けの神戸新聞杯(不良馬場)をプラス18キロで勝利して、続く菊花賞は2番人気。しかし、馬体重はマイナス12キロ。これを受けて「神戸新聞杯は大幅プラスだったから、戻っただけだろう」と気にしない手もありましたが、それより「休み明けの不良馬場を激走した反動が出たのでは?」と考えたほうが自然でしょう。
結果、菊花賞のステラヴェローチェは4着どまり。タイトルホルダーが悠々と逃げ切る中、馬券に絡めませんでした。
反対に、クリソベリルの20年チャンピオンズCは、2戦目に馬体重大幅プラスの例です。前走で休み明けのJBCクラシックを快勝して、ここは休み明け2戦目。しかし、馬体重はプラス12キロ。自身最高の554キロでした。馬体をゆるめたのか、何かあったのか、それはわかりません。
結果、チャンピオンズCのクリソベリルは、1番人気でチュウワウィザードの4着に完敗。
たった2例ですが、休み明けよりも、2戦目の馬体重増減が大事だという考え方を説明するための事例です。
【ポイント2】2歳牝馬の大幅増減は危険信号
これはデータから示します。2歳牝馬のG1阪神JFで、馬体重の増減が10キロ以上あった3番人気以内の馬の成績は下の表。
▲阪神JFで馬体重の増減が10キロ以上だった3番人気以内の馬(2013~22年)
過去10年で【0-0-1-4】、過去5年なら【0-0-0-4】です。昨年の阪神JFでもモリアーナがプラス14キロで出走して、2番人気12着に大敗しました。
一方、牡馬中心の朝日杯FSで同じデータをとると【1-0-1-0】。21年の1着ドウデュースなど、どちらも馬券に絡んでいます。
2歳牝馬の馬体重の増減は、牡馬と違って重要なファクターだとわかります。よく言われるように牝馬は精神面がデリケートで、若駒ならなおさらのこと。さらに阪神JFの場合、関東馬だと「関西への初の長距離輸送」というファクターが加わることもあります。モリアーナは関東馬でした。
これが3歳秋になると、傾向はまったく変わります。紫苑Sと秋華賞は、馬体重大幅プラスの馬がよく好走するのです(大幅マイナスは良くない)。ひと夏を越えて成長した証が、馬体重に表れます。
馬体重の考え方は年齢や季節によっても変わるという、いい例です。
【ポイント3】高齢馬は「連対時の馬体重」に注目
連対時の馬体重という考え方も大事です。その馬が何キロから何キロのときに馬券になったか。
ただし、この見方は若い馬には通用しません。3歳や4歳ではどんどん成長して馬体重が増えていく馬も多いため、連対時の馬体重も更新されてゆく。名牝グランアレグリアは新馬の458キロから、ラストレースの5歳のマイルCSでは506キロまで増えました。
これが高齢馬なら、どうでしょう。目安として6歳以上とします。6歳以上の馬がどんどん馬体重を増やしていくような例は少ない。そこで「連対時の馬体重」が重要になります。
今まで連対したことのある体重のゾーンから外れていたら消し。そのゾーンに戻ったら買い、という馬券術です。
【ポイント4】その馬の適正馬体重や、好走馬体重のクセを見つけよう
馬体重がプラスのときに好走する馬、マイナスのときに好走する馬、それぞれに馬体重のクセがあります。すべての馬に、わかりやすいクセがあるわけではありませんが、なかにはシンプルな傾向を持つ馬がいます。
秋華賞、有馬記念、宝塚記念などを勝ったクロノジェネシスは、馬体重がプラスだと6戦全勝。それ以外は10戦1勝(新馬除く)だったことを知っているでしょうか。
馬体重が不明の海外レースは除き、海外の次走はその前のレースからの増減とします。これでいくと、
・プラス体重【6-0-0-0】
・マイナス体重【1-1-2-1】
・増減なし【0-1-2-0】
これがクロノジェネシスのクセです。
▲クロノジェネシス・プラス体重時の成績(国内のみ)
▲クロノジェネシス・マイナス体重時の成績(国内のみ)
もう1頭あげます。大阪杯を勝ったレイパパレは小柄な馬としても人気を集めましたが、適正馬体重がありました(下記は国内のレースのみ集計)。
・439キロ以下だと【6-2-1-0】
・440キロ以上だと【0-0-0-4】
これがレイパパレのクセです。21年の大阪杯を制した後、4歳秋は1番人気のオールカマー、エリザベス女王杯を440キロ台で敗退。馬券に絡まないレースが続き、馬体重が430キロ台に戻ると、再び金鯱賞と大阪杯で連対。その後、また440キロ台で敗戦続きでした。
▲レイパパレ・馬体重439キロ以下の成績(国内のみ)
▲レイパパレ・馬体重440キロ以上の成績(国内のみ)
すべての好走・凡走の理由を馬体重にこじつけるつもりはありませんが、このような個々の馬の特徴を見つけると、馬券の取捨に役立つことは間違いありません。