『田端到・加藤栄の種牡馬事典』で知られる田端到氏が、馬券術の入門から応用まで競馬予想の考え方・コツを伝授する『王様・田端到の「名馬に学ぶ馬券術」』。
今回のテーマは「血統とローテーション」です。ぜひお楽しみください!
血統を馬券に活用するというと、血統を知らない人ほどすぐ「距離」の話をしたがります。短距離血統だ、長距離血統だと、菊花賞のときだけ血統を気にする人も、いまだにいます。
もちろん、血統の距離適性は大事ですが、それよりも大事だと思っているのが、血統のローテーション適性や、産駒の好走・凡走リズムへの影響です。
疲れが溜まりやすい体質かどうかは血統の影響が大きく、そういう馬はローテを詰めると成績が落ちる。連戦を重ねても平気な血統は、きつめのローテも気にしない。
ほとんど語られていませんが、ローテの影響を受けやすい血統のひとつとして、ロードカナロアをあげます。
ロードカナロア産駒は7月2日までに平地のJRA重賞を60勝しています(芝59勝、ダート1勝)。これをレース間隔で分けると、どうなるか。それも年齢というファクターを加えるとどうなるか。
まずは2歳と3歳のロードカナロア産駒の重賞、レース間隔成績が下表です(間隔4週とは中3週、間隔3週とは中2週のこと。以下同)。
▲2歳と3歳のロードカナロア産駒の重賞、レース間隔成績(2023年7月2日まで)
2歳と3歳の重賞24勝のうち
・レース間隔4週以内 / 2勝。勝率2.7%
・レース間隔5週以上 / 22勝。勝率15.0%
恐ろしい差です。若い時期のロードカナロア産駒は、レース間隔を5週以上あけるかどうかで、これほど勝率に差が出てしまう。
これを4歳以上の重賞36勝で同じ集計をするとこうなります。
▲4歳以上のロードカナロア産駒の重賞、レース間隔成績(2023年7月2日まで)
・レース間隔4週以内 / 6勝。勝率6.7%
・レース間隔5週以上 / 30勝。勝率12.5%
今度はぐっと差が詰まっているのがわかります。間隔2週以内でなければ、もう気にしなくていいレベルです。
3歳までのロードカナロア産駒は、レース間隔がきわめて重要。4歳以降になると、それほど気にしなくても良い。
ああ、こんなおいしいネタを無料コラムに書いていいんでしょうか(笑)。このデータは「産駒の年齢によっても傾向は変化していく」という大事なことも教えてくれています。
直近にちょうどいい例題の有名馬がいます。ベラジオオペラです。レース間隔と一緒に、同馬の戦歴を追ってみます。
・新馬・1着
・セントポーリア賞・1着(間隔10週)
・スプリングS・1着(間隔7週)
・皐月賞・10着(間隔4週)
・ダービー・4着(間隔6週)
レース間隔をじっくりあけて、新馬戦からスプリングSまで3連勝。無傷のまま、皐月賞へ向かいました。しかし、その皐月賞はレース間隔4週。ロードカナロア産駒の危険なローテです。皐月賞のベラジオオペラは3番人気を集めながら10着に大敗しました。
次走は日本ダービー。「ロードカナロア産駒に2400mは長い」「皐月賞で大敗したカナロア産駒に2400mが持つわけない」。そんな前評判から一気に9番人気まで人気を落としたベラジオオペラでしたが、今度はレース間隔6週。買えるローテです。
結果はご存知の通り。3着のハーツコンチェルトときわどいハナ差の4着でした。ゴールの瞬間には、ベラジオオペラが3着だと思った人も多かったくらいの僅差で、これは好走に入れるべき走りでした。
これらのベラジオオペラの好走と凡走は全部、ローテが理由と言いたいのではありません。皐月賞で大敗したのは道悪のハイペースを先行したことが一番の理由だろうし、ダービーで好走したのはスローペースの上がり勝負で内を突いた要因もあるでしょう。
それでも、3歳のロードカナロア産駒がレース間隔によって大きく成績が分かれることを知っていれば、皐月賞のベラジオオペラに大枚をつぎ込むことは避けられただろうし、ダービーのベラジオオペラは巻き返しがあるかもしれないと、予想の中に盛り込むことはできたはずです。
血統を馬券に活かす上で、種牡馬ごとのローテの傾向はきわめて大事であることを意識してください。