『田端到・加藤栄の種牡馬事典』で知られる田端到氏が、馬券術の入門から応用まで競馬予想の考え方・コツを伝授する『王様・田端到の「名馬に学ぶ馬券術」』。
今回のテーマは馬券予想において重視すべきファクターの1つ「ローテーション成績」です。ぜひお楽しみください!
予想の最初にもっとも重視するべき3項目、今回はその3つめです。これには「各馬のローテーション成績」をあげます。前回までは「各馬のクラス別成績」と書いていたのですが、変更します。
競走馬には「適性」と「走力」があり、まずは「適性」を見るための3項目でまとめたい。「クラス別成績」は「走力」をはかるための項目なので、ここで一緒にするのではなく、別枠で取り上げたい。
あらためて整理します。各馬の適性を見るための最重要項目は次の3つ。
(1)各馬の当該競馬場成績
(2)各馬の当該距離成績
(3)各馬のローテーション成績
「ローテーション成績」に、厳密な定義はありません。休み明けの成績が良いか、良くないか。レース間隔を詰めたときの成績が良いか、良くないか。休み明けから叩かれて成績が上昇するタイプか、下降するタイプか。
これらを総合して、今回の臨戦過程は得意なローテなのか、得意ではないローテなのか、どちらとも言えないのかを判断する。そのローテ適性を、出走全馬について見ていく。
全馬などというと「うわ、面倒くさそう」と思うかも知れませんが、一度見れば、次回以降は補足修正なので時間はかかりません。何か傾向を見つけた馬はメモしておいて、毎回それを見ればいい。
7月30日のクイーンSを例に取ります。
▲クイーンSの出馬表
まずは1番のコスタボニータ。戦歴を見て、ひとめでわかるのは休み明けの安定感です。
▲コスタボニータ レース間隔10週以上(新馬を含む)の戦績
レース間隔10週以上(新馬を含む)だと、2着、2着、1着、1着、1着。連対率100%の【3-2-0-0】。それ以外だと、5着、1着、4着、14着、3着、6着。こちらは【1-0-1-4】。
コスタボニータは間隔のあいたレースで大きくプラスの馬とわかります。これがローテ成績です。クイーンSは間隔10週の休み明けで、3着でした。
こういう傾向にすぐ気付けるかどうかは、各人が使用している競馬新聞や競馬ソフトにもよります。休み明けの成績くらいはすぐわかる予想環境が大事です。
続いて2番のウインピクシス。この馬もここは間隔14週の休み明けでした。戦績を見ると、過去の休み明けは新馬の1着と、2022年8月の4着の2回だけ。ほかのレースを見ても、間隔のあいたレースが得意かどうかは判断しにくい。間隔4週(中3週)のときは【2-0-0-0】なので、これはいつか使えるかも知れないとメモしておきます。クイーンSは2着でした。
こんなふうに全馬を見ていきますが、すべての馬にわかりやすい傾向があるわけではありません。むしろ、コスタボニータのように明確な傾向のある馬のほうが少ない。それでOKです。ローテ成績は適性をつかむための要素のひとつですから、これだけで取捨の結論を出せるはずもない。
クイーンSのメンバーでは、10番イズジョーノキセキにも特徴が見つかります。
▲イズジョーノキセキ レース間隔10週以上(新馬を含む)の戦績
休み明けの成績は、6着、1着、4着、1着、1着、2着、5着、1着、10着。全5勝のうち、休み明けで4勝を挙げており、2022年の府中牝馬Sを勝ったのも含まれます。
さらに上記【4-1-0-4】のうち、道悪だったレースを除くと【4-1-0-1】という見事な成績になる。イズジョーノキセキは、間隔のあいたローテで、良馬場だと能力を出す馬とわかります。
ほかのレースを見ても、間隔8週の垂水Sで1着、間隔6週の有馬記念で4着と、どうやら間違いない。クイーンSは休み明けで5着でしたが、この特徴を知っていればいつか役に立つ日が来るかも知れません。来ないかも知れません。
ここでは重賞を例題にしましたが、ローテーション成績は条件戦の馬たちのほうが、もっと有効なファクターです。
重賞レベルの馬は、目標のレースが何か月も前から決まっていて、そこに向かって仕上げていきます。しかし、条件戦の馬たちはもっと大雑把だったり、目標のレースがあっても除外で予定が変わったり、オープン馬ほどローテーションがきっちりしていません。だからこそ、得意・不得意の傾向も出やすい。
そして、ローテーション成績に注目する癖をつけておくと、それが積み重なって「厩舎の特徴」や「血統の傾向」に気付くことがよくあります。休み明けに走る厩舎、走らない厩舎、レース間隔を詰めたときに穴が多い血統など、これらの馬券の大事なポイントにも気付くことがよくあるのです。
その意味でもローテーション成績は超重要な項目であり、必ず検討するべきファクターと言えます。