『田端到・加藤栄の種牡馬事典』で知られる田端到氏が、馬券術の入門から応用まで競馬予想の考え方・コツを伝授する『王様・田端到の「名馬に学ぶ馬券術」』。
今回のテーマは「当日の馬場傾向」です。ぜひお楽しみください!
予想をする際の手順として、まず過去の戦歴から出走各馬の「適性」を調べる。出走各馬の「走力」をはかる。ここまでを6回かけて説明してきました。この時点で予想の8割か9割は終わったようなものです。
続いてやるべき作業は、レースの展開を読むことです。展開を読むには、
(1)当日の馬場が、前の馬に有利なのか、後ろの馬に有利なのか。内の馬に有利なのか、外の馬に有利なのか。
(2)そのレースで逃げそうな馬はどれか。逃げ先行馬は多いか、少ないか。ペースは速くなりそうか、遅くなりそうか。
このふたつを考える必要があります。今回は(1)の「当日の馬場傾向」の確認の仕方について説明します。
確認方法は簡単です。その日のレース、または前日のレースで、先行した馬が好走しているか、後ろに付けた差し馬が好走しているか、レース結果を見ればいい。初心者の場合、午前中の馬券を買うことは少ないでしょうから、午後のレースを検討する前に、午前のレース結果を確認すればいいのです。
ちょうど先週の競馬はこれを説明するのにピッタリでした。ローカルの最終週というのは馬場が使い込まれた後のため、前の馬が有利か、後ろの馬が有利か、明確な傾向が出やすいためです。
9月2日の札幌。芝レースの逃げ馬の成績はどうだったか、並べてみます。札幌2歳Sの日です。
▼9月2日・札幌芝。逃げ馬(3角先頭)の着順。
01R/1着(1番人気)
03R/1着(3番人気)
05R/1着(6番人気)
07R/2着(5番人気)
09R 知床特別/7着(14番人気)
10R 日高S/1着(3番人気)
11R 札幌2歳S/1着(3番人気)
芝のレースは7つあり、逃げ馬は【5-1-0-1】。なんと強烈な結果でしょう。7戦5勝。札幌2歳Sも逃げたセットアップが4馬身突き放して、楽勝しました。
札幌は前の週にゲリラ豪雨のような大雨があり、最終週でだいぶ芝が傷んでいました。その結果がこれです。
この傾向にどの時点で気付けたか。鋭い人はこの日の競馬が始まるから予測していただろうし、そうでなくても午前中の1Rと3Rで逃げ切りが決まった時点で気付かなくてはいけません。1Rは人気馬が逃げて10馬身ぶっちぎり。3Rは2頭がやり合いながら逃げたのに、その2頭がワンツーして馬連70倍台の配当になりました。
当日の午前中の結果を確認するという作業を、ルーティンに入れてあれば「今日の札幌芝は逃げ馬が有利」と誰でも気付けたはずです。これが当日の馬場傾向の恐ろしさです。
その後も5R、7Rと逃げ馬が連対し、10Rではセッタレダストが逃げ切り、11Rでもセットアップが逃げ切りを決めたのは前述の通り。唯一、9Rは逃げた馬(14番人気)が馬券に絡みませんでしたが、勝ったのは2番手につけたクールムーアでした。
▲札幌2歳Sの結果と通過順位
札幌は洋芝のコースですが、洋芝は馬場が荒れるとこんなふうに逃げ馬が断然有利になり、差しが届かなくなる日があるので注意しなくてはいけません。逆に言えば、この日、逃げて好走した馬は馬場の恩恵があり、今後の評価をする際に少々割り引く必要も出てきます。
札幌と正反対の傾向が出たのは小倉でした。こちらも夏開催の最終週です。
馬場が傷むと、前の馬が有利になるか、後ろの馬が有利になるかは一概に決まりません。差しが利きにくくなり、前の馬が有利になるケースもある。馬場が傷んだ分、スタミナを要するレースになり、前の馬がいつもと同じペースで先行するとバテてしまい、後ろの馬が有利になるケースもある。
9月3日の小倉芝1200の結果をピックアップします。小倉2歳Sの日です。芝1200は馬場の有利不利が出やすい距離であることは、以前にも説明しました。
▼9月3日の小倉芝1200の結果。枠連と3連単
02R/枠連4-5・3連単8-5-11
07R/枠連8-8・3連単18-17-15
09R/枠連7-8・3連単17-14-12
11R/枠連8-8・3連単10-9-5
一目瞭然。2Rを除くと、枠連は7-8と8-8だけ。上位を外枠の馬が占めて、その多くは差し馬でした。ある程度キャリアのある人なら知っている、ローカル終盤の芝1200によく見られる「外差し競馬」です。小倉2歳Sは1着アスクワンタイム、2着ミルテンベルクと、ピンクの帽子の差し馬2頭で決まりました。
▲小倉2歳Sの結果と通過順位
この外枠有利の傾向は、午前中の2Rだけ見ても判断できません。ヒントは前日土曜のメイン競走、テレQ杯・芝1200mにありました。
テレQ杯は1着バンデルオーラ、2着タツリュウオーと、外枠の差し馬同士で決まり、枠連7-8。馬連は万馬券、3連単は37万馬券。先行した1番人気メイショウソラフネと、2番人気アネゴハダは大きく沈みました。傷んだ馬場で先行馬が失速し、傷みの少ない外を回った外枠の差し馬が台頭するという現象です。
この土曜メインの結果を受けて、おお、きたきた、ローカル最終週の名物「外枠の差し馬有利の馬場だ!」と、意識できたかどうか。それが日曜の馬券成績に大きくつながったはずです。
展開を読むには、まず当日の馬場傾向を知ること。そのためには、午前中のレースや、前日のレースの結果から、前が有利か後ろが有利かを確認すること。この作業をルーティンの中に入れておきましょう。