『田端到・加藤栄の種牡馬事典』で知られる田端到氏が、馬券術の入門から応用まで競馬予想の考え方・コツを伝授する『王様・田端到の「名馬に学ぶ馬券術」』。
今回のテーマは「逃げ馬の見つけ方」です。ぜひお楽しみください!
「展開を読む」の2つめは、逃げ馬のチェックです。そのレースで逃げそうな馬はどれか。逃げ先行馬は多いか、少ないか。ペースは速くなりそうか、遅くなりそうか。これを調べる具体的な方法をひとつ紹介します。競馬新聞やスポーツ新聞を使っている人向きの方法です。
これら新聞の出馬表には各馬の馬柱が組まれ、馬柱には各レースの通過順が記されています。逃げた馬なら通過順は「1-1-1」、5番手に付けて途中で3番手に上がった馬なら「5-3-3」と記されます。
出馬表をながめて、通過順に「1」があったら、それをマーカーペンでマークして色を付けます。なんだその受験生の英単語学習みたいな作業は、と思われるかも知れませんが、バカにしてはいけません。
通過順1、つまり先頭に立ったという馬柱に全部、色を付けると、いろんなことがビジュアルでわかるようになります。
そのレースに逃げ馬が多いのか、少ないのか。逃げ馬は内枠にいるのか、外枠にいるのか。その逃げ馬は毎回逃げているのか、それとも逃げるときと逃げないときがあるのか。
さらにやってみるとわかるのは、逃げ馬の記憶が自分の中に強く残り、いろんな発見につながる効果があります。
モズスーパーフレアを例題にします。2020年のG1高松宮記念を制した快速の逃げ馬ながら、成績はムラがありました。G3重賞で人気を背負い、負けてしまうことも多かった馬です。
これは実際にマーカーペンで色を付けた出馬表を見ないとピンとこない話なのですが、そこは脳内で想像してください。モズスーパーフレアには以下のような特徴がありました。
単騎ですんなり逃げると強い。しかし、他にも逃げ馬がいるとモロい。例えば同型のビアンフェがいるレースは好走できなかった。
内枠に入ると、先手を取るためにハイペースで行き過ぎてしまい、良くなかった。外枠のほうがマイペースで先手を取れるため、成績は良かった。
▲モズスーパーフレアの枠番成績
1着だった20年の高松宮記念(クリノガウディーの降着による繰り上がり)。前走で逃げた馬は、モズスーパーフレアのみ。短距離G1にしては逃げ馬の少ないメンバーだった。
モズスーパーフレアの存在は他の差し馬にも影響を与えました。例えばアウィルアウェイという20年のスプリンターズSで大穴の3着に来た馬は、モズスーパーフレアが出ていたレースだけ、差しが届くという面白い特徴がありました。ハイペースになるからです。
毎回ていねいに逃げ馬をチェックしていると、差し馬の好走のツボにも気付くことがある。
ちなみにこの「通過順1の色塗り作戦」は、私の発案ではありません。競馬ライターとして活躍した、かなざわいっせいが提案した馬券術です。
かなざわさんが連載していた、誰かの捨てた競馬新聞の書き込みを調べるというコーナーが元だったと記憶しています。通過順1の馬だけでなく、通過順2の馬や、3の馬も、別の色のマーカーペンでマークするという気合いの入った展開読みの方法でした。今回は、かなざわいっせいリスペクトでお送りしています。
こうして逃げ馬が多いか、少ないか、逃げ馬は内枠にいるのか、外枠にいるのかなどをチェックすることで、レース展開が映像として見えてくるようになります。ペースが速くなるか、遅くなるかも読めるようになります。
付け加える提案があるとしたら、通過順が2桁の馬もマークすることでしょうか。通過順2桁とは、早い話、後方に位置した馬です。
後方に控える馬を出馬表で色分けすると、また別の景色が見えてきて、展開を読みやすくなる。試してみてください。