競馬評論家・TARO氏による、騎手の分析を中心にした回顧&展望コラム『TAROのジョッキーズファイル』。今回のテーマは「石田拓郎騎手」です。
なお、『競馬放送局』ではTARO氏の厳選勝負レース(予想)を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください!
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チャンピオンズカップは、終わってみれば坂井→川田→三浦というダートジョッキーが上位を占めるという結果に。やはり大一番になればなるほどジョッキーの影響は大きくなりますね。
上手く下げて外3番手につけた坂井騎手の判断も見事でしたし、馬群で溜めた川田騎手、最後まで追い続けるスタミナを見せた三浦騎手も馬の能力を引き出しました。
さて、今回は若手騎手が抱えるジレンマから、関東の3年目・石田拓郎騎手を取り上げます。恐らく今回が当コラム初登場になると思います。
~上手く乗っても見る目がない陣営からは評価されない現実~
石田騎手は2023年デビュー。しかしルーキーイヤーは106戦未勝利と苦戦しました。それでも2年目に7勝を挙げると、3年目の今年は12月第1週終了時点で13勝。地味ながら勝ち星を伸ばして来ています。
『道中の動きが見えてくるジョッキー事典』のなかでも、「密かに注目」、「2025年はまず15勝くらいして乗りウマを増やしていければ楽しみ」と書きましたが、そのラインも(って勝手にこちらが考えた数字ですが)、あと2勝に迫ってきました。ここまで来たらなんとか到達して、来年以降のさらなる上昇に繋げてほしいです。
実はこの秋の福島開幕週でも、石田騎手の印象的な騎乗があったんですね。リラベガという馬で挑んだ新馬戦です。
初日の福島芝1200mということで、馬場はイン有利が顕著。しかしリラベガは8枠15番と、この時点でかなり絶望的でした。そんな中でリラベガに騎乗した石田騎手は、8枠15番から最内に潜り込むことに成功。道中もスムーズで、あとは直線捌ければ…という手応えでした。
ただ、直線はさすがに開幕週ということもあり進路が開かず、8番人気4着。それでも1~3番人気の逃げ先行型が粘り込むレースだったことを考えれば、
「厳しい条件の中でかなり上手く乗った」
と感じるレースでした。馬場を考えてロスなく内を回れるというのは、力のない馬で挑むには必須のアプローチですからね。ところが、陣営の評価は違ったようです。
管理する調教師は次走出走の際に、
「前走は絶対に開かないところに突っ込んでしまって…。ワンテンポ待ってスムーズだったら突き抜けていた」
とコメント。ちょっと新聞を二度見してしまうほど驚いたのですが、外枠から馬群に入れて道中追走し、直線はワンテンポ待って、鮮やかに馬群を捌く…そんな横山典騎手が年に数回見せるような神騎乗を常に望んでいるのでしょうか。
いずれにしても、これが若手騎手の難しさです。
「しっかり考えていい仕事をした」
にも関わらず、実績も見る目もない上司に全否定される。まさにブラック企業そのものではないですか。なお、リラベガは次走、横山武騎手に乗り替わって2番人気8着でした。
余談ですが石田騎手の初戦の騎乗は、大手競馬ポータルサイトの掲示板でも酷評されていました。ああいうところに書く人たちなので仕方ない面があるとは思いますが、少なからず影響力があるのは困ったものです。
~“差せる若手の穴ジョッキー”として注目~
少々話が脇道に逸れました。ちなみに、当の石田騎手は、リラベガが2戦目で敗れた2レース後、同じ福島芝1200mでバンブルビーに騎乗し勝利。道中は上手く脚を溜めて、キレイな差し切り勝ちでした。なかなか上手かった。
