毎週日曜日更新の当連載『フロントライン』は、現代競馬のキーマンとも言えるノーザンファーム天栄の場長・木實谷雄太氏に、競馬に関するさまざまなお話を伺うロングインタビューコラムです。聞き手:亀谷敬正。
▼今回の主なトークテーマ
・関東馬の関西遠征、輸送時間の不利を克服するために
・注目3歳馬で考える種牡馬ドゥラメンテ、リオンディーズの可能性
関東馬の関西遠征、輸送時間の不利を克服するために
――今回は関西遠征についてお聞きします。馬の個体差もあるでしょうけど、関東馬の関西遠征は、厩舎のノウハウが結果に大きく影響しているように思うのですが、関西遠征に対してどのような考えをお持ちですか。
木實谷:東京・中山であれば当日朝の出発でいいですが、関西に遠征するとなると、前の日に行かなければいけません。輸送するということは、その日に乗れないということなので、輸送前の運動メニューや、輸送前のケアだったり、そういうノウハウは厩舎による面もあるのかもしれませんね。
――追い切りのパターンが変わってしまう影響もありそうですよね。
木實谷:仮に私が調教師の立場になって考えたとしても、今の時期、特に若い牝馬は長距離輸送が馬体重の減少とかにも繋がるでしょうし、調教メニューを普段とは変えざるを得ないと思います。
しかし、上級条件になれば番組数も限られてきますし、関西圏への遠征は必要不可欠だと思いますので、もっと積極的に検討し、ノウハウを積んでいきたいと思います。
――関西圏への遠征が少ないというのは、相手が強いからということなのでしょうか。
木實谷:相手関係というよりは物理的な問題も大きいのではないのでしょうか。美浦から京都・阪神と、栗東から東京・中山とでは輸送時間がだいぶ違います。美浦から京都・阪神の方が輸送時間は長いです。輸送時間が長くなれば馬への負担は大きくなりますし、必然的に関東圏での競馬を選択しているケースが多くなっているのだと思います。
――逆に関西馬が輸送面で不利になる競馬場はあるのでしょうか?
木實谷:福島に関しては、関東馬の方が輸送時間は短くて済みます。新潟だとむしろ栗東の方が近いぐらいですよね。北海道に関しては基本滞在競馬ですので当然互角です。
――個人的には、関東馬の栗東滞在をもう少しやれないものかとも思うのですが。
木實谷:国枝厩舎とか小島茂厩舎は、以前から栗東滞在をされていますよね。
――国枝先生は一時よりも栗東滞在が減りましたし、アーモンドアイは輸送競馬でも勝ちました。
木實谷:国枝先生は、今でも栗東滞在が必要な馬であれば、実行されると思いますよ。例えば、チューリップ賞から桜花賞というローテーションであれば、一度美浦トレセンに戻ってから再度輸送するよりも栗東に滞在した方が明らかにいいと思いますし。
ただし、所属馬を栗東滞在させることは、厩舎の戦力が分散することにもなりますので、それを踏まえてどうやっていくかだと思います。そんな中で木村哲厩舎も2月に入ってから栗東滞在で関西圏の競馬に臨んでいますね。今後も色々と試行錯誤して、馬が最大限パフォーマンスを発揮させられる調整過程を模索していきたいと思います。
注目3歳馬で考える種牡馬ドゥラメンテ、リオンディーズの可能性
――続いて気になる3歳馬についてお聞きしたいと思います。ジュニアCを快勝したインダストリアですが、デビューからの番組選択を見ると、マイラーと考えているのでしょうか?