毎週日曜日更新の当連載『フロントライン』は、現代競馬のキーマンとも言えるノーザンファーム天栄の場長・木實谷雄太氏に、競馬に関するさまざまなお話を伺うロングインタビューコラムです。聞き手:亀谷敬正。
▼今回の主なトークテーマ
・共同通信杯組(ジオグリフ、アサヒ)の動向
・プレサージュリフトで考える欧州血統の“ガッツ”
・トレセンに戻す状態のジャッジ、厩舎との連携
共同通信杯組(ジオグリフ、アサヒ)の動向
――今回も3歳馬の状況からお伺いします。共同通信杯・2着のジオグリフですが、2歳時から報道されていた喉鳴りの状況はどうでしょうか。
木實谷:喉鳴りの症状はデビュー前からあるものでして、こちらで調教している分には特に変わった印象はないです。
――共同通信杯は雨が降って馬場状態も稍重でした。パンパンの良馬場だったら、超スローにならず、持久力が要求されたかもしれませんね。
木實谷:そうですね。勝ち馬には瞬発力勝負で劣った印象ですが、雨が降ったのは呼吸器系に不安のあるこの馬にとってプラスに働いたと思います。
――ジオグリフはこれで皐月賞に直行でしょうか。
木實谷:ノーザンファーム天栄で状態を見てから、各方面との相談になりますが、基本的にはその方向で考えています。
――ジオグリフの父ドレフォンは、現3歳世代からとなる新種牡馬ですが、どのようなイメージを抱いていますか。
木實谷:適性的には多彩ですよね。現時点では、どちらかというと母系を出している感じがあります。そして、扱いやすい馬が多いです。扱いが難しいなという馬は少ないですね。ジオグリフに関しても、アロマティコの仔にしては比較的扱いやすいです。
――その意味では、ドレフォンはロードカナロアに似ている感じがします。ロードカナロアもお母さんの特徴を出して、乗りやすさもある。もちろん、ドレフォンの方がロードカナロアよりパワーのある仔を総じて出しますが。
木實谷:東京開催でも、ドレフォン産駒の天栄調整馬が初ダートで2頭勝利しました。パッと見は芝っぽい感じでも、ダート向きのパワーを伝えやすいのかもしれません。
――ちなみに、ダート適性はノーザンファーム天栄で乗っていて分かるものですか?
木實谷:身体の造りや走りで何となくのイメージは湧きますが、最終的には競馬を見てみないと判断できないですね。
――共同通信杯で5着だったアサヒは、母母がディープインパクトの母ウインドインハーヘアで、父がカレンブラックヒル。血統的に注目してるのですが、ノーザンファーム天栄にはカレンブラックヒルの仔はあまりいないですよね。
木實谷:いないですね。アサヒはフットワークが大きくて、長くいい脚を使えそうなタイプだとみています。
――個人的には、使い込んでいくと短い距離でも走れそうな感じを受けるのですが。将来的にはマイルより短い距離や、小回りの1800の方が個性を活かしやすいのでは、と思うのですが。
木實谷:現状ではあまり小脚が利くような感じではないので、短い距離はどうですかね。現状では1200mだと、最初の加速でかなり置かれるんじゃないかな、と思います。1200mを走らせようとするのであれば、走法だったり、筋肉の質をちょっと変える必要がありますね。
ただ、デビュー戦は1600mを除外になって1800mに出走する形になったように、元々はマイルの距離にも適性を感じていて、極端に短い距離でなければ十分に対応できるんじゃないかなとは思っています。
プレサージュリフトで考える欧州血統の“ガッツ”
――続いては、デビュー2戦目のクイーンCを快勝したプレサージュリフトです。ハービンジャー産駒らしく、直線でのスピード爆発力が凄く、豪快でした。能力高いですね。