毎週日曜日更新の当連載『フロントライン』は、現代競馬のキーマンとも言えるノーザンファーム天栄の場長・木實谷雄太氏に、競馬に関するさまざまなお話を伺うロングインタビューコラムです。聞き手:亀谷敬正。
▼今回の主なトークテーマ
・馬体の大きさ、食べる食べないと血統
・適性で分ける育成プラン、坂路調教について
馬体の大きさ、食べる食べないと血統
――今回もノーザンファーム天栄の育成馬からお話を伺います。今年引退する牝馬にジェンティルドンナの全妹ドナアトラエンテがいます。デビュー当初は随分と小柄でした。
木實谷:デビュー当初(デビュー時418キロ)は体が小さくて大変でした。馬体を維持するのも一苦労でした。今はデビュー当時から比較すると体重も50キロくらい増えて、別馬みたいです。
どの馬も基本はそうですけど、若い時はエサを食べて欲しくても、思ったように食べてくれないですし、食べられたとしても身にならないタイプもいます。
――若いときは食べないのですか?
木實谷:放牧地では食べるんですけどね。草や寝藁は食べるのですが、肝心の穀物や高エネルギーのものはあまり食べないという感じです。
――人間の子供と大人の食べる量が違うのと一緒ですかね。
木實谷:そうですね。なので、若い頃からちゃんと食べられるというのは才能だと思います。
――ちなみに、食べる、食べないというのに血統は関係しますか? ディープインパクトの牝馬は神経質で食べない仔が多そうなイメージがあります。それこそドナアトラエンテもそうですけど。
木實谷:そう言われると、ディープの牝馬は食べないタイプが多いと思います。ディープに限らず、小柄な牝馬はだいたい食べないですね。小さいから食べないのか、食べないから小さいのかは分からないですけど、テンションが高い馬も小さい馬に多いですね。
――体の大きさで言うと、ディープインパクトの全兄・ブラックタイドは、ディープと違い大柄でした。ブラックタイドの産駒であるキタサンブラックも500キロを超える大型馬でしたが、種牡馬キタサンブラックの仔は食べますか? 産駒は大きい仔が多いですよね。
木實谷:キタサンブラック産駒は、特に牡馬はよく食べますよね。ラスールなど牝馬もこの時期の牝馬にしては食べる方が多い印象です。
――食べるといえば、クロフネの仔は顎が大きいからよく食べるというのを聞いたことがあります。顎、口の大きさが遺伝するから、それで大きくなるんだと。
木實谷:クロフネの父であるフレンチデピュティの仔は顎まわりが強い仔が多かったですね。顎がすごく発達しているんですよ。もしかしたら、アメリカ血統、ヨーロッパ血統とか、血統で色々傾向があるかもしれないですね。
――ディープは食わないタイプの種牡馬なので、母父が食欲旺盛になりやすい血統だと走る馬が出やすい、ディープインパクト×フレンチデピュティのように・・・・・・。そんな簡単なわけないですよね(笑)。
適性で分ける育成プラン、坂路調教について
――では話題を変えますが、ノーザンファーム天栄の育成馬は、芝の雨馬場での成績が、軽い馬場での成績より総じて低下する傾向にあります。これについては、どう考えていますか?