毎週日曜日更新の当連載『フロントライン』は、現代競馬のキーマンとも言えるノーザンファーム天栄の場長・木實谷雄太氏に、競馬に関するさまざまなお話を伺うロングインタビューコラムです。聞き手:亀谷敬正。
▼今回の主なトークテーマ
・富士Sに向けたザダルの状態、意外な適性
・菊花賞に挑むドゥラドーレス、夏を挟んでの成長具合
・ハイレベルになりやすい秋の東京新馬戦
富士Sに向けたザダルの状態、意外な適性
――今回は今週末の菊花賞・富士S出走馬について伺います。まずは富士Sですが、ザダルが出走を予定しています。この馬はパワーが勝ってきている印象を持っています。
木實谷:確かに、お父さんはトーセンラーですが、ザダル自身は栗毛のゴツい身体をしていまして、母系が出ているのではと思っているんですよ。個人的にはダートも走るのではないかと思っていまして。
――血統的にも、母父が米国型のレモンドロップキッド、母母父は産駒がJRAでもダート短距離重賞で実績を残したブロードブラッシュですね。
木實谷:レモンドロップキッドの産駒は全体の成績を見てもダートに良績が偏っていますし、ザダルも一度ダートに使ってみたいと考えています。
ただ、ザダルに関しては重賞を勝っているように、もちろん芝がダメというわけではなくて、ここ2戦は馬場に足を取られて手前を変えられず、力を出し切れていません。東京マイルという舞台は悪くないですから、ここでいい競馬を見せてくれればと思っています。
菊花賞に挑むドゥラドーレス、夏を挟んでの成長具合
――続いて菊花賞です。以前お話いただいたように、ドゥラドーレスが夏の条件戦から直行ですね。
木實谷:札幌を使った後はノーザンファーム早来に移動しまして、向こうで疲れを取ってからこちらに戻ってきました。菊花賞に向けて、順調に調整進めることができています。
――ドゥラメンテは去年、菊花賞馬を出しましたし、ドゥラドーレスは母がハービンジャー×ダンスインザダーク。血統的に距離の問題はなさそうですが。
木實谷:ウインドインハーヘアの母系なので、距離が延びることへの不安はありません。
――個人的には菊花賞が京都の方が良かったかなとも思うのですが。阪神3000mという舞台設定についてはいかがでしょうか。
木實谷:場所というより、まずは折り合いですね。6月東京戦では掛かる面を見せて伸びきれなかったように、コース形態というよりも自分自身との戦いです。そういう意味では前回(藻岩山特別)、馬群のなかで競馬ができたのは収穫だったので、少しペースが流れてくれればチャンスはあるかなと思っています。
――この馬は能力を出せるときと出せないときの振り幅が大きい気がするのですが、原因はどこにあるのでしょうか? やはり折り合いでしょうか?