毎週日曜日更新の当連載『フロントライン』は、現代競馬のキーマンとも言えるノーザンファーム天栄の場長・木實谷雄太氏に、競馬に関するさまざまなお話を伺うロングインタビューコラムです。聞き手:亀谷敬正。
▼今回の主なトークテーマ
・シュネルマイスターのラストラン、マイルCS回顧
・種牡馬イクイノックスが背負う期待
・有馬記念、スルーセブンシーズの最新情報
シュネルマイスターのラストラン、マイルCS回顧
――前回のジャパンC回顧と前後しますが、今回はマイルCSを振り返りたいと思います。シュネルマイスターは1人気で7着に敗れてしまいました。
木實谷:ジョッキーによると、最後の直線に入るところで少しバランスを崩したようなのですが、あのポジションだと余程上手くいかないと良い結果に繋がらないですよね。もう2列、3列前にいればと思いますが、今回もゲートで立ち上がってしまいましたし、そのあたりを修正できなかった私たちの技術不足だとも思っています。立ち上がるが分かっていての結果ですから。
――デキ自体には問題はなかったのでしょうか?
木實谷:はい、安定していました。ただ、その前も含めて悪い意味で全力を出して走っていない印象ですね。5歳になって、色々と刺激に慣れすぎているのかもしれません。
――追い込みきれないということでしょうか?
木實谷:レイデオロも同様でしたが、調教やレースの刺激に馴化してしまい、人間の扶助に対する反応が鈍くなってしまうのです。ですから、若駒の時の感度の良さをどう保っていくかが、私たちの課題ですね。
――もう1頭のレッドモンレーヴは9着でした。
木實谷:もうちょっと走って欲しかったですね。在厩調整だったので中間の状態は分からないのですが、勝ったナミュールとは富士Sで接戦しているわけですから、勝てないにしてもナミュールのちょっと後ろにはいて欲しかったなとは思います。枠的にも不利を受けない枠で、スムーズに回ってきての結果ですからね。そこはちょっと残念でした。今は来年の春の復帰に向けて乗り出しているところです。
種牡馬イクイノックスが背負う期待
――そして、シュネルマイスターはマイルCSがラストランで、社台スタリオンステーションでのスタッドインが決まりましたね。
木實谷:無事に送り出すことができたのは良かったと思います。血統的にも素晴らしい馬ですし、今度は産駒でGIレースを勝ちたいです。
――イクイノックスとシュネルマイスター、どちらも種牡馬としても期待していますが、考えてみると、どちらもノーザン、社台の血が薄いですよね。イクイノックスも父のキタサンブラックがヤナガワ牧場の生産馬ですし、母父キングヘイローは協和牧場。シュネルマイスターはドイツ生産馬。ということは、ノーザン、社台以外の牧場にもGI級の馬が実は潜んでいるのではないかと。
木實谷:ノーザンファームはもちろんですが、日本国内、どの世代にも力を出し切れずに引退してしまった馬がたくさんいるはずです。引き続き、1頭でも多く、能力を発揮できるように、技術向上に励んでいきたいと思います。
――そうですよね。イクイノックスは先週お話いただいたように、我慢したことで才能が開花した訳で。種牡馬としてのイクイノックスは晩成の仔を出すのかな~。
木實谷:そのあたりは興味深いですよね、どういう仔を出すのか。自分が携わっていた馬の産駒にまた携われるというのは楽しみですよ。牝馬だと1年に1頭だけですけど、牡馬だとたくさん関わることができますからね。イクイノックスであれば、たくさん良い繁殖牝馬が集まってくれると思いますので、ぜひ活躍して欲しいですね。まあ、たくさんいるということは、逆に言えばそれだけイクイノックス産駒同士がライバルになる訳ですが(笑)。
――コントレイルに勝たなきゃいけないですからね(笑)。
木實谷:ノーザンファームから産まれたエース候補ですからね。キタサンブラック、ロードカナロア、コントレイルあたりと上位争いができるようになってもらいたいです。イクイノックスは筋骨隆々すぎるわけでもないですし、少し幅がある牝馬につけたほうがいいかなとは思いますけど、そんなに繁殖を選ばないと思っています。
――それはいいですね。それこそ幅のあるアメリカ血統との配合で、育てやすさと仕上がりを補うこともできますし。
木實谷:そうですね。イクイノックスの血を繋げていけるよう、努力していきます。
――イクイノックスとアーモンドアイの仔も出るでしょうしね。どんな走りをするのか?の前に、どんな募集価格になるのか?も楽しみです(笑)。
有馬記念、スルーセブンシーズの最新情報
――さて、ここからは今週末のお話です。有馬記念には凱旋門賞4着のスルーセブンシーズが登場します。帰国後の状態はいかがでしょうか?