毎週日曜日更新の当連載『フロントライン』は、現代競馬のキーマンとも言えるノーザンファーム天栄の場長・木實谷雄太氏に、競馬に関するさまざまなお話を伺うロングインタビューコラムです。聞き手:亀谷敬正。
▼今回の主なトークテーマ
・約2年ぶりの勝利、ボーデン復活の背景
・馬体重とオッズの関係
・ノームコアの初仔など今週末デビューの2歳馬情報
約2年ぶりの勝利、ボーデン復活の背景
――今回はちょっと気になる馬がいまして、5/12(日)の錦Sを勝ったボーデン(12人気)です。よく復活したなと思いまして。あれは転厩効果か、それとも去勢効果、どちらでしょうか?
木實谷:去勢の影響で身体が減ったのか、転厩による調整の違いで身体が減ったのか分かりませんが、走った理由は単純に身体が絞れたということですよ。やはり走る競技なので、太っていると最後に苦しくなってしまいます。
――シンプルな理由なのですね。去勢によって気性的なものが変わった影響はありませんか?
木實谷:去勢したからといって、性格が丸くなるとは限らないです。また去勢の効果が出てくるのは一般的に半年から1年後と言われていますからね。ボーデンは2月に去勢して、今が5月ですから、去勢の効果が出てくるのはこれからだと思います。
この馬に関しては、シンプルに馬体重だと思いますよ。これまでのレースでも最後に一瞬は伸びかけるのですが、身体が重いからすぐに諦めちゃう。身体が重いから気持ちも萎えちゃう、という走りでしたね。それが絞れたことによって最後まで走れるようになったということだと思います。
馬体重とオッズの関係
――やっぱり馬体重は大切なのですね。AI系の予想でも馬体重の動きを見て大量投票するのが多いので。実際、馬体重の増減によってオッズが大きく下がる馬がいますね。
木實谷:戦歴と馬体重の関係性をAIが理解しているのですね。
――そうです。ただ、ボクの場合は前日に予想を公開しているので、「体重が絞れてくる」ということまで予想して当てなければいけない。それでオッズが同じなのは何か不公平だなと(笑)。例えばオーストラリアだと、前もって馬券を買ったら、その時点のオッズで払い戻されますし。サロンメンバーには『直前オッズと事前オッズが同じだと売り上げは下がるし、将来日本の競馬で儲けるためには海外移住が必要になるかもしれない』と言っているんですよね。
何が言いたいかと言うと、ノーザンファームは従来のJRAの厩舎システムでは産み出せない馬づくりを実現していると思うのです。外厩という制度で歴史を変えたように、馬券販売もノーザンファーム天栄のような革命があってもいいのに、と思っています。
木實谷:いや、何も変わってないです(笑)。