毎週日曜日更新の当連載『フロントライン』は、現代競馬のキーマンとも言えるノーザンファーム天栄の場長・木實谷雄太氏に、競馬に関するさまざまなお話を伺うロングインタビューコラムです。聞き手:亀谷敬正。
▼今回の主なトークテーマ
・亀谷からの質問「日曜追い」について
・豪遠征のローシャムパーク&ジオグリフ最新情報
・桜花賞出走のエンブロイダリー&ブラウンラチェット
・ニュージーランドT&阪神牝馬S出走馬情報
亀谷からの質問「日曜追い」について
――調教について気になっていることがありまして。最近、日曜日に追い切りをする厩舎が増えていると思うのですが。
木實谷:全部の厩舎を見ているわけではないので、増えているかどうかは分かりませんが、たしかに日曜日に追い切る厩舎はありますし、1週前の土曜日にしっかり追い切る厩舎もありますね。
――土曜日や日曜日に追い切りを行うメリットは何なのでしょうか?
木實谷:馬によりけりですね。馬によっては水曜日が良い馬もいれば、木曜日が良い馬もいますし、日曜日が良いという馬もいると思います。今の時期の3歳牝馬で、土曜日に競馬を使う馬は、日曜日追いでも良い気はしますけどね。回復までに時間がかかりますので。
古馬の場合は競馬の日から近くても良いと思います。古馬だったら前日でもしっかり乗りますし、例えばグランアレグリアはレース前日にも追い切っていましたからね。
――馬によっては、直前に強い負荷をかけた方が良い馬もいるでしょうし。
木實谷:その見極めが大事だと思います。馬それぞれなので、何曜日に追うのが良いというのは一概には言えないと思います。
――その日の馬場状態次第で、負荷のかけ方も変わってきますよね。
木實谷:そうですね。馬場に敷いているものでも負荷は変わってきますよね。同じウッドチップでも深さによって負荷も違いますし、雨の状況でも変わってきますね。チップの馬場は条件によって大きく負荷が変わるので、調教する側が負荷の掛かり具合を見極める勘も問われると思いますよ。
――ポリトラックの方が馬場は安定はしているんですね。
木實谷:はい。管理としてはポリトラックの方が楽ではありますね。例えば、何秒で乗ればこれぐらいの負荷がかかるというのが分かりやすいです。チップだと同じ秒数で乗っても、その日の馬場状況によって負荷がまったく変わってきてしまいますので。
――ポリトラックだとチップよりも時計が出ますよね。脚元への負担という点ではどうなのでしょうか?
木實谷:やっぱり時計が遅い方が脚元の負担は少なくなりますね。
豪遠征のローシャムパーク&ジオグリフ最新情報
――ここからは今週末のレースについて伺います。今週は日本とオーストラリアで大きなレースが行われますが、まずはオーストラリアのクイーンエリザベスSに出走するローシャムパークから近況を教えてください。
木實谷:有馬記念の後もまったく問題なく、すっかり丈夫になりましたね。安定しています。折り合いに課題のある馬ですし、むしろ2000mになるのも良いと思います。距離が詰まる分にはジョッキーも安心して乗れるでしょう(笑)。
ランドウィック競馬場の馬場は、2000mだと結構差しも決まっているので、函館記念やオールカマーのイメージで走れれば十分食い込めるんじゃないかと思っています。
――ジオグリフは前週(4/5)のドンカスターマイルを使って、連闘でクイーンエリザベスSの予定と聞いています。
木實谷:状態次第ではありますが、ドンカスターマイルから連闘で参戦する予定です。ジオグリフは前走の東京新聞杯でゲートにぶつかって瞼の上を切ってしまったのですが、その治療を終えてからは順調ですよ。
クイーンエリザベスSには昨年のコックスプレートを圧勝したヴィアシスティーナや、昨年末の香港ヴァーズでも2着に善戦したドバイオナーなど、強力なメンバー構成になりそうですが、この時期のランドウィック競馬場は雨が多くて、馬場が悪くなる想定で、この雨に向いていそうな2頭を連れていくので、そこも含めて期待しています。
――昨年、田中博康先生と視察に行かれた際、「こういう馬場は問題ない」と話されていましたね。適性を見極めての遠征、その成果を楽しみにしています。
▲亀谷も同行した昨年のオーストラリア視察(左が木實谷氏、右が田中博康調教師)
桜花賞出走のエンブロイダリー&ブラウンラチェット
――続いては、桜花賞に出走するエンブロイダリーとブラウンラチェットについてお聞かせください。