毎週日曜日更新の当連載『フロントライン』は、現代競馬のキーマンとも言えるノーザンファーム天栄の場長・木實谷雄太氏に、競馬に関するさまざまなお話を伺うロングインタビューコラムです。聞き手:亀谷敬正。
▼今回の主なトークテーマ
・初戦2着のゾロアストロ&アウダーシア、デビュー戦を回顧
・ノーザンファーム勢に鬼門? 夏の芝1200m戦
・今週末デビュー予定の2歳馬情報
初戦2着のゾロアストロ&アウダーシア、デビュー戦を回顧
――今回は新馬戦初週にデビューした注目馬の振り返りからお願いします。まず、8日の東京芝1400mを勝ったパープルガーネットは、デビュー前の当欄で初戦向きだと仰っていた馬です。
木實谷:はい、良い仕上がりで臨めたと思います。インコースで包まれて厳しい展開でしたが、よく抜け出してきたと思いますし、ここで勝てたのは大きいですね。
――その一方で、1番人気に推された7日東京芝1600mのゾロアストロは、スタートで大きく出遅れての2着でした。
木實谷:出遅れが大きく響いて、うまくレースに参加することができませんでした。ただ、最後は脚を伸ばしてきましたし、能力の高さを感じることができる内容だったと思います。
――8日東京芝1800mのアウダーシア(2番人気)も同じような形での2着でした。
木實谷:アウダーシアもスタートで完全に立ち遅れて、差して2着。同じような内容の競馬になってしまいました。ただこちらは、調教の段階で不安な部分もありましたので、しっかりと脚を使ってくれて、ほっとしたというのが正直なところです。スタートダッシュの課題については、私も含めてスタッフ、調教師も感じているところなので、今後に活かしたいと思います。
天栄の馬はゲート試験に受かると、一度放牧してからデビューということが多いので、再入厩の際にはゲート練習を行うのですが、ゾロアストロも金曜日にしっかりゲート練習を行ったのにも関わらず実戦に結びつきませんでしたし、取り組みを変えていきたいと思います。
――競馬の内容を考えると、ゾロアストロもアウダーシアもすぐに勝ち上がりそうですが、初戦で負けたことで、今後のローテーションは変わってきますでしょうか?
木實谷:変わるといえば変わりますが、そんなに気にはしていません。まだ6月ですからね。むしろ負けた方が1回多く楽に競馬を経験できるので、それなりのメリットもあると思っています。チェルヴィニアもエンブロイダリーもそうでしたし、新馬勝ちでいきなり重賞に挑戦するよりも、負けて未勝利を使った方が良いケースもあると思います。
――ゾロアストロもアウダーシアも、負かされたのは堀厩舎の評判馬でした。今後、逆転の可能性は大いにありますよね?
木實谷:そうですね。先ほどお伝えしたように、どちらも次に繋がる内容だったと思いますし、ここからしっかりと成長を促すことができれば、勝ち馬を逆転することは可能性としてあると思います。当然無事であればというのが大前提ですが、勝てなかったことは、それはそれでむしろメリットになるようにしたいと思います。
どの馬にとっても、キャリアを積んでいくことは絶対に必要ですからね。もちろん勝てば勝ったで、成長を促せるというメリットもありますが、そこは馬によりけりになりますね。
ゾロアストロとアウダーシアに関しては、仮に勝っていて次に重賞を使うとなっても、また出遅れてしまうと、それで勝てるほど重賞は甘くないですからね。重賞の前に改めて競馬を経験できるというのは良かったと思っています。
ノーザンファーム勢に鬼門? 夏の芝1200m戦
――ここからは夏競馬に関して伺います。夏競馬に入ると、10R以降の番組は芝1200mとダ1700mの施行回数が多くなります。ローカルの芝1200mといえばロードカナロア産駒ですが、芝1200mはノーザンファーム生産のロードカナロア産駒より、他生産のロードカナロア産駒の方が好成績を残しています。この実感はお持ちでしょうか?