競馬キャスター、ならびに単行本「馬場のすべて教えます2」の著者としてもお馴染みの小島友実さんによる連載『コジトモの馬場よもやま話』。
今回のテーマは「愛知県産珪砂の量が増えた中京ダート」について。長年に渡り“馬場”を取材してきた第一人者からの馬場情報は必見です!
今週からは中京、新潟、札幌競馬が始まりますね。重賞は日曜日に中京競馬場で東海ステークス、新潟競馬場で関屋記念が行われます。
東海ステークスは去年まで1月にダ1800mで行われていましたが、開催時期が7月に移行し、格付けはGIIIになり、距離はダ1400mに変更。実質、昨年まで7月にダ1400mで行われていたプロキオンSとの入れ替えの形になります。
ということで、今回は東海ステークスが行われる中京ダートについてお伝えします。
前開催の2回中京競馬が3月30日に終了。その後、ダートコースでは例年通り、クッション砂の洗浄作業が行われました。このクッション砂の洗浄を行う理由については拙著「馬場のすべて教えます2」にも書きましたが、改めて説明しますね。
JRAではすべての競馬場のダートコースの砂を1年に1回、機械で洗浄して再利用しています。ダートは使っている間に馬の脚の衝撃などで細かく砕けて泥分が増えたり、ゴミが入ったりするので、そのままにしておくと排水性が悪くなる要因になります。そこで、砂洗浄機と呼ばれる機械でコース上の砂をすべて洗浄するというわけです。
コース上にある砂をすべて集めてきて、洗浄し、きれいになった砂だけを再利用します。細かく砕けた泥分などが取り除かれるので、砂が足りなくなってしまいます。ですからその分、新しい砂を足す必要があります。
JRAでは長年、青森県産の砂を使用してきており、洗浄によって足りなくなった分も青森県産で補ってきました。しかし、当コラムでも何度か紹介している通り、2020年頃からはこの青森県産の良質な砂が採れにくくなっています。そのため最近、JRAではそれぞれの競馬場に必要な要素を補える産地の砂も使用し始めています。
中京のダートコースでは2021年9月の開催から青森県産の砂をベースに、愛知県瀬戸市産の“珪砂(けいしゃ)”を混ぜるようになりました。2021年当時は青森県産が約90%で、愛知県産が約10%でしたが、2023年には愛知県産が37%に増加。2024年はまだ青森県産が占める量の方が少し多かったのですが、今年の夏開催では青森県産が約45%、愛知県産が約50%、新潟県産が約5%になりました。
そうです。今夏の中京開催からは愛知県産が青森県産を上回ることになるのです! 最近は各競馬場で青森県産以外の砂の割合が増えていますが、青森県産以外の砂が青森県産を上回るのは中京競馬場が初めてです!
“珪砂”はガラス製品や陶器の原料としても使用されている砂。異物が混合しておらず、衝撃に強いため粉砕しにくいという特徴があります。
そのため、近年はダートで使用する砂に適しているとして、園田競馬場、姫路競馬場、門別競馬場、船橋競馬場、大井競馬場がオーストラリア・アルバニー産の珪砂を使用。また、名古屋競馬場や笠松競馬場、金沢競馬場で使用されている砂は中京競馬場と同じ愛知県瀬戸市産の珪砂です。
珪砂はその見た目から、白い砂と評され、SNSで話題になることも多いです。なお、地方競馬場ではこれらの珪砂が単体で使用されています。
