競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。
今回のテーマは、サウジカップデー各レースの振り返りです。
2026年のサウジカップデーが終わりました。競馬の世界のアラビアンナイト。今年もまた忘れ得ぬ一夜になりました。
中継の開始直前には、隣国カタールでのアミールトロフィー(G2・芝2400m)でディープモンスターが勝利したという嬉しいニュースも届きました。
ディープインパクト直仔の8歳馬。7歳秋で重賞初勝利を挙げ、今度は初の海外遠征で、2着にキングジョージの勝ち馬ゴリアット、3着に香港ヴァーズの勝ち馬ジアヴェロットを下しての重賞2勝目とは恐れ入りました。3年連続の参戦で過去2年は3着だったサトノグランツは4着。ビザンチンドリームは最下位に終わり、ドバイ転戦は取りやめることになりました。
▼G3サウジダービー(G3・3歳/D1600m)
今年から「ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービー」の欧州・中東シリーズの対象レースに追加されたサウジダービーは、地元サウジアラビア調教馬アルハラムが直線で力強く突き抜け、2着のオブリタレーション(アメリカ )に1馬身1/4差をつけ勝利しました。
前走のサウジ2000ギニーでは持ったままで後続に7馬身差をつけ圧勝していたアルハラムは、これでデビューから無傷の4連勝。日本やアメリカからの遠征馬を退けて重賞タイトルを獲得し、この後は3/28のUAEダービー(G2/メイダンD1900m)に向かいます。
アイルランド生まれのイフラージ産駒。イフラージといえば、産駒が次々とG1タイトルを獲得する中で去年、17歳で急死したウートンバセットの父で、祖母の父にはアホヌーラの名前もあります。アラビア語で「聖域」を意味する「アルハラム(Al Haram)」。30ポイントを獲得し、ケンタッキーダービーにも出走したい意向を示しており、サウジアラビアの大物から目が離せなくなりました。
これに対し、直線では突き抜けるのかと思うほどの手応えに見えたサトノボヤージュでしたが、タフな馬場が堪えたのか最後に失速しての3着。予定通りに帰国します。
高柳大輔厩舎の2頭は、ワンダーディーンが直線で伸びて4着。トウカイマシェリはレース直前に落馬のアクシデントもあって12着でした。今後、ワンダーディーンはUAEダービーへ。5着ケイアイアギトもドバイに転戦する一方、地方・北海道から参戦し9着に終わったベストグリーンは帰国して北海道スプリントCを目指すということです。
▼リヤドダートスプリント(G2・3歳以上/D1200m)
リヤドダートスプリントはBCスプリント2着馬イマジネーションが力を見せて豪快な差し切り勝ち。表彰式ではボブ・バファート調教師の笑顔が弾けました。2着もジャストビートジオッズでアメリカ勢のワン・ツーフィニッシュ。この路線のアメリカ勢の層の厚さがあらためて証明されました。
日本馬の最先着はアメリカンステージの4着で、矢作厩調教師はドバイに転戦する意向を示しました。去年3着のガビーズシスターは6着。ドンアミティエは7着。重賞3勝のヤマニンチェルキは馬場が合わず12着に終わりました。
▼1351ターフスプリント(G2/芝1351m)
欧州G1を2勝しているラザットに注目が集まった1351ターフスプリントは、アメリカの5歳セン馬リーフランナーが、そのラザットとの競り合いをクビ差制して勝利しました。去年9月のG2エディーDステークスに続く重賞2勝目となったリーフランナー。招待されればドバイのG1アルクオーツスプリント(芝1000m)に向かう可能性があると米メディアが伝えているほか、2着ラザットも予定通りドバイ入りしました。
一方、日本馬は、パンジャタワーが5着、フォーチュンタイム6着、シンフォーエバーは13着でした。
▼ネオムターフカップ(G1・芝2100m)
今年からG1に昇格したネオムターフカップは、イギリスのセン馬ロイヤルチャンピオンが2着に4馬身3/4の差をつけ圧勝し、8歳にしてG1初勝利を挙げました。2着も欧州の7歳セン馬ファクトゥールシュヴァルで、欧州のセン馬のワン・ツー。どちらも次走はドバイターフとなる見込みです。
連覇と初のG1勝利を目指したシンエンペラーは4着。矢作調教師は招待されていたドバイシーマクラシックには向かわない意向を示しました。松永幹夫調教師と横山典弘騎手の同期タッグで挑んだヤマニンブークリエは逃げて直線半ばまで粘る見せ場十分の競馬で5着。岩田望来騎手とのコンビで臨んだアロヒアリイはゲートの課題が浮き彫りになり7着に終わりました。
▼レッドシーターフハンデキャップ(G3・芝3000m)
きれいな2つの隊列のままレースが進み直線での上がり勝負となったレッドシーターフハンデキャップ。制したのは、ディープインパクト系種牡馬スタディオブマン産駒のサンズアンドラバーズでした。ジョセフ・オブライエン厩舎は当初3頭出しの予定のところ、メルボルンCの2着馬グッディートゥーシューズが取り消しとなったことで、重賞初勝利時の鞍上D・マクモナグル騎手がスライドで騎乗していました。
勝利したサンズアンドラバーズの次走についてJ・オブライエン調教師はドバイゴールドカップ(G2/芝3200m)への参戦を示唆したということです。
日本から参戦したシュトルーヴェは8着、ヴェルミセルは11着に終わりました。
▼サウジカップ(G1・D1800m)
1年前は、1351ターフスプリントでのワン・ツーも含め4勝を挙げていた日本調教馬が、今年は未勝利のままメインカードを迎えました。日本勢にとっての良い流れを作ることができず、重圧を背負わせてしまいやしないか心配しましたが・・・。日本の年度代表馬と鞍上にとっては全く要らぬ心配でした。
3年連続のサウジアラビア遠征となったフォーエバーヤング。そこには、2年前とも1年前とも全く違う、大人になったフォーエバーヤングの威風堂々とした姿がありました。
過去2着3回のボブ・バファート調教師が並々ならぬ思いで自慢の2頭を送り込んだ一戦。インに閉じ込められても慌てず動じず、4コーナーで一瞬空いたスペースに飛び込むと、あっという間に先頭へ。懸命に追いすがったBCダートマイルの覇者ナイソスを全く寄せ付けず、次走に向けて余力を残したようにも見えた圧巻の横綱相撲でした。
1着賞金1000万米ドル(約15億7000万円)世界最高賞金レースで矢作芳人調教師は3度目の勝利。5着ルクソールカフェは日本円で約1億5700万円、6着サンライズジパングは9420万円(1ドル157円で計算)を獲得しました。
日中は33度にもなったというリヤドの地で、サウジカップ史上初の連覇を涼しい顔で達成したフォーエバーヤング。次なるターゲットは、もちろん史上初の「中東ダブル」。1年前の忘れ物を取り返して偉業を成し遂げたとき、その存在は時代を越えた「伝説」となっていくことでしょう。
