プロ馬券師・みねた氏が実践例を交えながら予想理論の金言を伝える『馬券師・みねたの金言』。今回の金言は「出馬表という上質のミステリー」です。
なお、『競馬放送局』ではみねた氏の厳選勝負レース、重賞予想を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください!
★今週の重賞ピックアップ★
9月17日阪神11R・ローズS(芝1800m)
ローズSは阪神芝1800mで施行。初角となる3コーナーまで600m以上あり、先行争いにおいて内外の不利は少ないコース。ただ、馬場状態も良い秋開催ということもあり、極端な外枠はやや割引が必要かもしれません。
登録19頭中、前走の通過順位に3番手以内があるのは7頭。昇級馬が多くなりやすい3歳重賞であることを考慮すれば、そこまで多いとはいえません。
メンバーを見渡すと、「春の実績馬VS条件クラスからの上がり馬」という構図になりそうです。
上がり馬の筆頭格、そして1番人気に推されそうなのがブレイディヴェーグ。未勝利、1勝クラスを1.0秒差、0.5秒差で連勝しており、時計面も非常に優秀です。能力の高さで突破する可能性もありますが、春の実績馬や2勝クラスを突破済みの馬がいる中で、1勝クラス勝ち上がり直後での1番人気で期待値が見合うかというと微妙なところ。
同じく圧勝続きでここに臨むのがコンクシェル。こちらは1勝クラスの特別、2勝クラスの特別です。芝で0.9秒差はマグレで出せる着差ではありませんし、戦法が固まっている点にも好感がもてます。6倍のオッズなら、この馬の潜在能力に賭ける手はあるでしょう。
春の実績馬で最上位人気はソーダズリングでしょうか。実績は上位ですが、ハーツクライ産駒で、ここ2戦、脚をためる競馬を試みられていることからも、前哨戦よりも本番で狙ってみたいタイプではあります。
それなら、オークスで積極果敢に先行して4着に健闘したラヴェルの8倍に、馬券妙味は感じます。阪神JF、桜花賞と極端な枠に泣かされた感があるので、好枠が欲しいところ。
クラス間のレベル差に着目するなら、3勝クラスで0.2秒差・3着のリサリサは狙いたいパターン。課題は1800mへの距離延長です。
古馬相手の2勝クラスで0.2秒差・2着のマラキナイアも面白そう。人気の盲点になりやすい臨戦過程で、しっかり脚をためる競馬ができるのも魅力的。10番人気前後にとどまるようなら面白い存在です。
上がり馬を狙うにしても、春の実績馬を狙うにしても、結局、オッズ次第となりそうなメンバーです。重賞は、事前から最終オッズへの変動が少ないので、事前に購入する方も、しっかりその段階のオッズをチェックすることをオススメします。
【枠順確定後注目馬】
5 ブレイディヴェーグ
7 ラヴェル
8 ユリーシャ
10 マラキナイア
12 マスクトディーヴァ
14 コンクシェル
17 セーヌドゥレーヴ
週中の見解通り前に行ける馬が有利で変わりないが並びからはかなり難解になった。大外先行17セーヌドゥレーヴの57倍や3勝クラス大敗から参戦の8ユリーシャの85倍、捲る競馬で勝ち上がって来た12マスクトディーヴァが大穴で面白い。
なお、枠順確定後の最終結論および買い目は『競馬放送局』をご覧ください。
■みねたの金言97
『出馬表という上質のミステリー』
★ピックアップレース★
8月6日札幌11R・エルムS(ダート1700m良)
◎6セキフウ
○11タイセイサムソン
▲12ルコルセール
△3ペプチドナイル
☆10カフジオクタゴン
注14ベレヌス
注1ペイシャエス
[参考買い目]
単勝 6
ワイド 6-11.12.3
馬連 6-11.12.3.10.14.1
3連複 6-11.12.3-11.12.3.10.14.1
──8月6日の二重賞はレパードSが◎5ライオットガールが5番人気1着(単勝11.9倍)、エルムSが◎6セキフウが6番人気1着(単勝12.3倍)でダブル的中。今回は「かなり考えたが、いざ、結論に辿り着いてみると、この一択しかなかった」というエルムSについて教えてください。
みねた)なぜ、色々考える必要があったかというと、「コース形態で狙うべき馬と枠や脚質・メンバー構成が合致していないから」です。
──札幌ダート1700mは、初角となる1コーナーまでの距離が約240mと短い「コースパターンD」のコースですね。
みねた)そうです。初角までの距離が短いので、先行争いにおいては内枠が有利なコース形態です。ダートの場合、内枠には砂被りのリスクがあるのですが、これはどちらかといえば下級条件で考える要素で、重賞クラスまで上り詰めてくるような猛者は、少々、内枠で砂を被ってもしっかり走れるケースが多い。したがって、重賞のここは、シンプルに内枠の先行馬から検討するのがセオリーです。ただ、このレースは非常に厄介な並びになっていました。
──前走の通過順位に3番手以内があったのが、3ペプチドナイル、4ワールドタキオン、5オーソリティ、11ガンダルフ、12ルコルセール、13アシャカトブ、14ベレヌス。14頭中7頭で、先行馬の占有率は50%です。
みねた)先行馬の占有率が50%と高いので、先行馬は狙いにくいところ。その時点で、コース形態で狙うべき馬とメンバー構成が噛み合っていません。それでも、コース形態を重視して「内枠・先行」タイプを狙う手もあるのですが、その有力候補である3ペプチドナイルが、「同脚質並びの最内」という苦しい枠に入ってしまいました。これまた、コース形態で狙うべき馬と並びが噛み合っていないわけです。
──同脚質の馬が並ぶとスタート後にポジション争いが生じるので不利になりやすいんですよね。特に、外から被せられる内側ほど不利が大きいので、1番人気の3ペプチドナイルにとっては試練の並びといえそう。
みねた)1番人気では狙いにくいですよね。昨年のエルムSは9番人気のフルデプスリーダーに◎を打って的中させることができました(1着・単勝16.9倍)がフルデプスリーダーは前走マリーンS1着なのに9番人気と低評価でした。今年、同じ前走マリーンS1着だった3ペプチドナイルは1番人気。このコラムや単行本『競馬場と前走位置取りだけで恒常的に勝つ方法』で、パリミュチュエル方式においては少数派、すなわち過小評価される馬を狙わなければいけないと強調してきましたが、この2頭の人気は、それがよく分かる事例なのではないでしょうか。
──コース形態から有利なはずの「内枠・先行」タイプが狙えないのはよくわかりました。そこで白羽の矢が立ったのが◎6セキフウです。
みねた)結局、「逃げ馬の外」ですよね。金言18「同型脚質並びの隣の別脚質馬」です。すぐ内の3ペプチドナイル、4ワールドタキオン、5オーソリティが先行馬なので、必然的にその外の6セキフウの周りに馬がいないというストレスのかかりにくい状況が生まれやすい並びです。距離ロスをなくすために内に入れるという選択肢も取りやすいんですよね。
──単行本のタイトルでいうところの「競馬場」の部分で狙えなかったので、「前走位置取り」を重視した感じですね。
みねた)そうなりますね。このレースは面白くて、本来、差し馬を狙うのであれば、まず最初に「逃げハサミ」を探します。このレースの場合、どうですか?
──14頭立てで、先行馬の馬番が3、4、5、11、12、13、14ですから…「逃げハサミ」はいませんね。
みねた)そうなんです。先行馬が7頭もいるのに「逃げハサミ」がいない。では、「逃げ馬の外」はいかがですか?
──3、4、5の外になる6セキフウと11、12、13、14の…あっ、14は大外だから「逃げ馬の外」は6セキフウだけなのか。
みねた)ねっ、面白いでしょ。14頭立てで先行馬の占有率が50%もあるレースなのに、「逃げハサミ」が1頭もいなくて、「逃げ馬の外」になるのも1頭しかいない。これはかなりのレアケースです。コース形態からの先行馬狙いをやめて、差し馬を狙うと考えたら、私の展開と並びの理論からは6セキフウしかあり得ません。これが「かなり考えたが、いざ、結論に辿り着いてみると、この一択しかなかった」の真相です。
──なるほど。パズルを解いているような、ミステリーを読んでいるような気分です。
みねた)私は、読者の皆さんには「出馬表を読み込む面白さ」を知ってもらいたいと願っています。このレースなんかは、まさに出馬表から推理する競馬の醍醐味が詰まっていたのではないでしょうか。