プロ馬券師・みねた氏が実践例を交えながら予想理論の金言を伝える『馬券師・みねたの金言』。今回の金言は“下級条件での着差は気にしなくていい”です。
なお、『競馬放送局』ではみねた氏の厳選勝負レース、重賞予想を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください。
▼今週の重賞ピックアップ
7月13日 福島11R 七夕賞 芝2000m
七夕賞は福島芝2000mで施行。初角となる1コーナーまでは500m以上あり、枠順による内外の有利不利はありません。
登録15頭中、前走の通過順位に3番手以内があるのは7頭。中距離重賞にしては先行馬が揃った印象です。
函館記念は1番人気想定だったハヤテノフクノスケが蓋を開けてみれば6番人気、一方、先週の北九州記念では10倍ぐらいあれば面白いと考えていたヤマニンアルリフラが1番人気(そして1着!)。夏のローカル開催ということでオッズが読みづらく、週中の段階ではあまり人気に対する先入観を持たずに取り組むのが良いかもしれません。
そんな中、七夕賞で1番人気が見込まれるのはドゥラドーレス。前走エプソムカップでも1番人気(2着)で、リステッド競走11着の次走でも2番人気に推された履歴からも持ち人気のあるタイプでもあるので、ここは想定通りの人気になりそうです。前走が16番手からの競馬だったので距離延長はプラスでしょう。一連のレースぶりから能力が高いのは間違いありませんが、1番人気・3.0倍が見合うかは微妙。5倍ぐらいもらえるようなら一考の余地がありそうです。
2番人気想定はシリウスコルト。目下連勝中で前走はG3を完勝しているだけに、これも納得の人気でしょう。7番人気→3番人気→8番人気ときての2番人気なので、あまり買いたくないタイミングではありますが、58.5キロというハンデが嫌われて望外のオッズになる可能性もありそう。この馬は特にオッズを注視したいですね。いずれにせよ、脚質的に内枠が欲しいところ。
3番人気想定はコスモフリーゲン。いわゆる「先行昇級」なので、狙いたい臨戦過程ではありません。先行馬占有率の高めな一戦でこの手の馬が人気なら、他が甘くなる分、歓迎です。◎候補はこの馬以外になりそうです。
七夕賞で馬名セブンマジシャン。2走前が7着で前走が7番人気、サイン的にはこの馬でしょうか(笑)。3勝クラス2着からの臨戦で格的には見劣りますが、4キロ減の斤量を考慮するとコスモフリーゲンとの比較ではこちらが上か。ただ、1600m→2000mの延長ローテはマイナスです。
リフレーミングは1番人気で小倉記念を制した次走の中山記念が12番人気。そして今回が想定5番人気と持ち人気があるのかないのかわからない不思議なオッズをつけています。小倉記念では脚をためて差していますし、昨年の七夕賞でも0.6秒差・5着と悪くない競馬。想定通りの5番人気・10.6倍なら期待値はあるのでは?
ニシノレヴナントは二桁着順が多く馬柱の見栄えはよくありませんが、G1、G2のハイレベルメンバー相手のもの。2走前のOPではきっちり2着しています。この2着がなければ期待値的にはベストだったと思いますが、それでも周辺の大敗が目くらましになって甘いオッズになりそう。想定9番人気・22.3倍なら。
強い相手との大敗続きで馬柱の見栄えが悪いという意味ではパラレルヴィジョンも同様。こちらは上級条件の2000mでは結果が出ていないので、距離克服が課題です。
「忘れた頃の一発」を忘れずに警戒したいのはマテンロウオリオン。3走前、4走前はそれぞれ0.2秒差・0.3秒差に踏みとどまっています。鞍上も含めて怖い存在。
夏のローカルハンデ重賞ということで、格上馬と昇級馬が入り乱れる難解な一戦。枠順とオッズを見極めて、しっかり仕留めたいですね。なお、枠順確定後の最終結論および買い目は『競馬放送局』をご覧ください。
▼みねたの金言189
下級条件での着差は気にしなくていい
★ピックアップレース★
6月22日阪神9R 高砂特別 芝2000m良
◎8イケイケドンドン
穴○9ホウオウサンデー
▲4ヴィスマール
△1ヤマニンループ
☆6アイキャンドウイッ
注3パンデアスカル
―今回は6月22日阪神9Rの高砂特別を取り上げます。◎イケイケドンドンが勝って、◎→▲→△の決着。単勝11.8倍、馬単28.3倍、3連単96.7倍等が的中したわけですが、よくイケイケドンドンを◎にできましたね。2走前がローカルの1勝クラスを逃げてアタマ差の辛勝、昇級初戦の前走は1.5秒差の9着。あまり買い材料は見当たらないような…。
みねた)そうですか。この馬の馬柱をしっかり眺めれば、期待値はかなり高そうにみえますけどね。
―では早速、その思考を教えてください。
みねた)この馬の前走をみてください。まず、臨戦過程が先行昇級ですよね。先行昇級とは道中3番手以内の先行策で勝ち上がって昇級初戦を迎える馬のことを指します。一般的に、先行昇級馬はペースの違いに苦しむことが多く、期待値をとりにくい傾向にあります。それに加えて距離延長ローテでもありました。
―2走前が2000m、前走が2600mですね。
みねた)競走馬も前走より距離が長くなるより、短くなる方が楽だと思います。そう考えると、前走から600mの距離延長というのはしんどいですよね。イケイケドンドンの場合、ただでさえ先行昇級の上に一挙の距離延長と、苦しく感じる要素が2つも重なっていたのです。
―なるほど、これが距離短縮ローテだったら、先行昇級の苦しさと距離短縮で楽に感じる部分が相殺されて、ある程度、負担が軽くなるということですね。
みねた)私の考え方だとそうなります。そして、この馬の前走は、もう一つ苦しい条件が重なっていました。わかりますか?
―同じ小倉コースですし、馬場状態も稍重→良だから苦しく感じる要素はなさそう…。
みねた)正解はコース形態です。単行本『競馬場と前走位置取りだけで恒常的に勝つ方法』(オーパーツ・パブリッシング)では、コース形態を初角までの距離によってA~Fの6パターンに分類して解説していますが、それは、初角までの距離の長さが先行争いにおける内外の有利不利に影響を及ぼすからです。
―初角までの距離が短いと、先行争いにおいて外枠が不利になるんですよね。
みねた)すぐコーナーを迎えるコースでは、どうしてもコーナーワークで内の馬に前に行かれてしまいますからね。イケイケドンドンの前走は小倉芝2600mでした。小倉芝2600mの初角までの距離は約240m。私は初角までの距離300m未満を「短い」と定義しているので、小倉芝2600mはコースパターンAに該当します。
―外枠不利で知られる中山芝1600mや東京芝2000mと同じカテゴリーになるのですね。
みねた)そうなんです。そしてイケイケドンドンはこの時、8枠12番からの発走でした。
―レースVTRを観てみると、スタートから押してハナを奪いに行ったものの自身より内の2頭に出し切られて3番手からの競馬になっています。直線では一瞬伸びかけたものの、最後は馬群に飲み込まれました。
みねた)そう考えると、1.5秒差・9着というのは、全く悲観する内容ではありませんよね。もちろん、この戦績で1番人気と2番人気だったら売れ過ぎだと思いますが、最終的に5番人気・11.8倍ならば期待値は十分あります。
―ただ、そうはいっても、美浦の地味目な厩舎所属ですし、2走前が辛勝。なかなか買いにくい気もするんですよ。
みねた)そういう馬だからこそ、2走前に勝った時も73.2倍もついているんですよ(笑)。舐められがち、要するに持ち人気が低いタイプで、それは馬券ファンにとっては歓迎材料です。また、2走前が辛勝だったので、展開に恵まれてたまたま勝ったようにみえるのも、人気にならない要因でしょうね。ただ、私は1勝クラスレベルでは、あまり着差を意識しないようにしています。というのも、一部の連勝で駆け上がっていくような馬を除けば、1勝クラスで勝ったり負けたりしている馬の能力はあまり変わらないと考えているから。着差がついていても、それは色々な要因が全てプラスに働いた結果であり、そんなに価値はないと捉えています。裏を返せば、辛勝だからといって、特段、割り引く必要もありません。
―この馬について、見解文で「全く走らない可能性も高いがこのメンバー相手に4人気なら期待値はある」と書かれていて面白いなと。その真意について教えてください。
みねた)これは珍しいことではなく、何なら、毎回、見解文に書き添えたいぐらい、当たり前に考えていることなんですよ。
(次回に続く)