プロ馬券師・みねた氏が実践例を交えながら予想理論の金言を伝える『馬券師・みねたの金言』。今回の金言は“捲りのあと”です。
なお、『競馬放送局』ではみねた氏の厳選勝負レース、重賞予想を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください。
▼今週の重賞ピックアップ
8月3日 札幌11R クイーンS 芝1800m
クイーンSは札幌芝1800mで施行。初角となる1コーナーまで200m未満で、いわゆる「コースパターンA」のコース。先行争いにおいて内枠が有利です(コースパターンの詳細は単行本『競馬場と前走位置取りだけで恒常的に勝つ方法』をご覧ください)。
登録21頭中、前走の通過順位に3番手以内があるのは8頭。比較的先行馬が揃っておりペースは流れそうです。
1番人気想定はアルジーヌ。前走のG1ヴィクトリアマイルはタイム差無しの4着で、当然、有力候補の1頭です。7-4と道中で動けており、G3で取りこぼすタイプでもありません。ただ、そうはいっても紛れのある舞台設定。◎はコースを味方にできそうな別の馬から選ぶのがベターでしょう。
2番人気想定はクリスマスパレード。こちらは前走G1ヴィクトリアマイルで0.4秒差の9着でした。ただ、本来の先行策ではなく、後手に回りながらも0.4秒差に踏ん張った内容は評価して良いでしょう。想定7.2倍は甘く映ります。
3番人気想定はレーゼドラマ。2週連続重賞制覇のキング騎手が手綱を取ります。前走のオークス16着は、長距離という特殊条件だけに度外視して構いません。ただ、フラワーCを勝っているとはいえ、今回は古馬との初対戦で、9.1倍は辛い印象。キング騎手の手腕は非常に怖いですが、期待値的には微妙なところ。
フェアエールングは目下、G3で3連続連対中。4走前から着順が1→2→1→2なのに対して人気は7→6→7→6という、典型的な持ち人気のないタイプ。今回も想定4番人気・9.4倍にとどまっています。想定オッズからもっとも食指が動くのはこの馬か。
アリスヴェリテは前走G1ヴィクトリアマイルで0.1秒差の5着。果敢に逃げてあわやのシーンを作りました。東京マイルというガチンコの舞台での逃げ粘りだけに価値があります。今回は先行力を味方につけられる舞台設定だけに、アルジーヌとの0.1秒差が埋まっても不思議ではありません。
テリオスララは阪神JF3着以来、8か月ぶりのレースとなります。持ち人気があまりないタイプで、休み明けが嫌われることも加味すると、いかにも期待値の出そうな馬です。想定通りの18.6倍なら妙味はありそうで、実際のオッズが特に気になる1頭です。
ライラックは馬柱は地味ですが、骨っぽい相手と戦ってきてのもの。昨秋のエリザベス女王杯の内容(0.5秒差・6着)からも衰えは感じられません。想定48倍なら穴で一考の価値はありそうです。
コース形態、メンバー構成的にも、先行タイプはどうしても内枠が欲しい一戦。枠順、並び、そしてオッズを考慮して、しっかり正解に辿り着きたいですね。なお、枠順確定後の最終結論および買い目は『競馬放送局』をご覧ください。
▼みねたの金言192
捲りのあと
★ピックアップレース★
7月5日福島9R 伊達特別 芝2000m良
◎2ゲンジ
高○7ルトンワージ
▲4ヤマニンエイドロン
△9シェーンシュティア
☆3アンドローゼス
注5タッチアンドムーブ
―今回のサンプルは7月5日福島9R。7番人気2着のゲンジに◎を打ち、注→◎→☆の決着。馬連7,420円、3連複9,600円の的中となりました。
みねた)これはわかりやすい穴馬でしたね。まずは前走の2番人気11着。人気を背負っての大敗というのは基本的に期待値を積みやすいです。
―馬柱からシンプルにわかるやつですね。しかも今回の激走は再現性があって、4走前に未勝利戦を勝った後の昇級初戦は3番人気に支持されるも7着。その次走では9頭立ての8番人気に人気は急落しますが2着。そして前走は2番人気に支持されるも11着。そして今回は10頭立ての7番人気で2着。
みねた)「人気が着順に依存するタイプ」と言えるでしょうね。この馬自体を追いかけている人は少なくて、「前走で好走しているから買ってみよう」という人が多い。前走で人気に支持した人こそ、人気急落したタイミングでも買わなければいけないのですが。
―その馬が本質的に持っている人気のなりやすさやなりにくさを「持ち人気」と表現したりしますが、この馬は1回の凡走で人気を下げているので、あまり持ち人気は無さそうですね。
みねた)流行りもののアイドルみたいですよね。特に嫌うほどでもないけどファンになるほどでもない。流行っているから応援するファンは一定数いるけど、落ちぶれてまで応援するファンはほとんどいないという。熱狂的なファンがいるのが持ち人気のあるタイプだとすれば、どちらかといえば持ち人気のないタイプということになるのでしょう。もちろん馬券的には大歓迎です。
―この馬については、Xでも「外捲り失敗した馬は狙い目になりやすい」と言及されていました。もう少し詳しく説明していただけますか?
みねた)前走の通過順位が7-6-2-3。これはもう、明らかに大きなロスですよね。すでに4コーナーでガス欠気味になっているわけですから。
―3コーナーで一気に進出して下がっていく。ダビスタで折り合いを欠いた馬みたいですね。
みねた)その割に1.2秒差に踏みとどまったのは、頑張った方です。基本的に外捲りというのはロスが大きくて、勝つためにオススメできる戦法ではありません。ディープインパクトとかオルフェーヴルとかの捲りは鮮やかですが、異次元の馬が異次元のレースをしているだけですから(笑)。
―では、捲りを打つメリットとはどこにあるのでしょうか?
みねた)力を出し切れるということでしょうね。だから格下相手に取りこぼすことが少なくなるので、弱メン相手の未勝利戦でどうしても勝ちたい時などは捲りを打つ意味があります。前回のコラムで取り上げたサクラアドリアなどはまさにそれですね。
―確かに、競馬はコンマ1秒を争っているのでちょっとのロスが明暗をわけるというみねたさんの考え方からしたら、外をブン回す捲りという戦法は対極にありますよね。
みねた)だから、能力以上の負け方をするので、期待値を積みやすいんですよね。捲り不発で派手な負け方をした馬が、次走でじっくり脚をためて巻き返すというシーンは多いですよ。
―期待値を積む以外に、捲りを打つことの効果みたいなものはあると思いますか?
みねた)鍛えられるという側面はあると思いますよ。調教では全能力を出して走ることはないでしょうから、苦しい経験をして肉体的にも精神的にも鍛えられることが次走以降に繋がっていく。もちろん新馬戦は別で、まずは脚をしっかりためる訓練をすることが大事ですが。
―2番人気11着という戦績であたりをつけて、前走をチェックしたら「捲り不発」で期待値が積めそうという情報がわかるという二段作戦ですね。
みねた)競馬を点ではなく線でみる習慣を身につけるのは大事でしょう。ゲンジを2番人気で買った人は7番人気の今回も買うべき。例えばこのレースで3番人気8着だったシェーンシュティアを買っていた人は、次走でシェーンシュティアのオッズが下がっていたら買う方がいいでしょうね。