プロ馬券師・みねた氏が実践例を交えながら予想理論の金言を伝える『馬券師・みねたの金言』。今回の金言は“実績上位馬に対して懐疑的に捉えるトレンド 前編”です。
なお、『競馬放送局』ではみねた氏の厳選勝負レース、重賞予想を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください。
▼今週の重賞ピックアップ
10月5日 東京11R 毎日王冠 芝1800m
今週から秋の東京開催がスタート。その幕開けとなる毎日王冠は馬券的な相性が良く好きなレースです。極端な東京巧者ぶりに惹かれて大好きだったテレグノシスが勝っているというのも好きな理由の1つかもしれません。
その毎日王冠は東京芝1800mで施行。初角となる3コーナーまで300m以下という「コースパターンA」の形態なので、先行争いにおいては内枠が有利です。
登録13頭中、前走の通過順位に3番手以内があるのは5頭。開幕週でもありますし、先行馬は特に内枠が欲しい条件です。
昨年、一昨年と3歳馬がこのレースを制していますが、今年はダービー4着のサトノシャイニングが登場。世代トップグループの1頭で、過去の傾向からもこのレベルの3歳馬が参戦してきたら好勝負は濃厚でしょう。ただ、想定1番人気・2.1倍で買えるかどうかは別問題。本命候補は他を探すことになりそうです。
2番人気想定のホウオウビスケッツは昨年の毎日王冠2着馬。そのレースも含め、ホウオウビスケッツは大いに世話になっている“お手馬”です。前走の札幌記念は1番人気を裏切る形となりましたが、得意の舞台に戻るここは、当然、巻き返しを期待していいでしょう。想定オッズ6.5倍は悪くありません。
3番人気想定チェルヴィニアは昨年の二冠牝馬でジャパンカップ4着という実績馬ですが、今年に入ってからは9着、6着、そして前走のG3しらさぎSも2着止まりと不振に陥っています。ただ、過去の戦歴から強敵相手の厳しい流れがベターに思えるので復活の可能性は十分にありそう。問題は6倍台のオッズが見合うか、です。
シックスペンスは昨年の毎日王冠勝ち馬。1800mでG2を3勝している極端な“千八巧者”で、適性の偏りぶりはテレグノシスを彷彿とさせます。この舞台は間違いなく合っているでしょうが、前走の安田記念はさすがに負け過ぎという印象もあり、想定4番人気・7.0倍というのは判断が難しいライン。内枠をひいてスピード決着に持ち込みたいですね。
エルトンバローズは一昨年の毎日王冠勝ち馬。こちらも、舞台設定は悪くありません。前走の中京記念は1番人気を裏切る格好となりましたが、骨折明けでもありました。前回より上積みは必至で、前走でこの馬を買った人は、想定8.6倍とオッズが貰えそうな今回も評価すべきでしょう。中京記念を◎マピューズで的中できた私も、このオッズなら狙う可能性はあります。
期待値だけならロングランにも注目。高齢のせいかナメられがちですが、今年に入ってからG2(マイラーズC)を勝っています。想定9番人気・38.9倍なら。
実績馬のなかに面白い馬が潜んでいそうなメンバー構成で、あとは枠順に注目。秋のG1を占う意味でもサトノシャイニングのレースぶりは必見です。なお、枠順確定後の最終結論および買い目は『競馬放送局』をご覧ください。
▼みねたの金言201
実績上位馬に対して懐疑的に捉えるトレンド 前編
★ピックアップレース★
9月14日 阪神11R ローズS 芝1800m良
◎11カムニャック
高○5パラディレーヌ
穴▲10テレサ
穴△9タガノアビー
☆2ミッキーマドンナ
注7ミッキージュエリー
注8チェルビアット
―フローラSは◎→穴▲の決着で馬連35.0倍、馬単56.4倍、ワイド12.2倍を的中。ただ、このコラムを読んでいた方は、◎カムニャックには驚かれたと思います。週中展望では◎にする気配を感じませんでしたからね。以下、コラムを引用します。
オークス馬のカムニャックがここから始動。もちろん想定1番人気となっています。確かな末脚でG2、G1を連勝して能力の高さは実証済みですが、オークスでそれはバレてしまっていますから、単勝での期待値はなさそう。しっかり脚をためるレースぶりは本番向きなので、ここで取りこぼしたとしても本番で巻き返してくるでしょう。
みねた)はい、あの段階では自分自身、◎をカムニャックにするとは想像していませんでした。フローラS、オークスとも差し切り勝ちで、展開に恵まれたものではなく完全に実力勝ちですから、普通に考えたら2倍台…いや、1倍台に突入してもおかしくない戦績ですよね。そんな馬が購入時は3.8倍でした。正直、3倍台なら期待値アリアリでしょう。
―単勝オッズが1倍台や2倍台前半だったら単勝の期待値はないけど、といったところでしょうか。
みねた)消せる馬ではないので、ヒモにとどめる形になるでしょうね。
―カムニャックが想定より甘かったのはわかりましたが、週中展望からの流れだと、高○に評価したパラディレーヌもまた甘かったのでは? こちらも週中展望を引用します。
2番人気想定のパラディレーヌはオークス4着馬。戦績的にも妥当な人気で、期待値的には可もなく不可もなくといったところ。カムニャックが買われて、想定通りの6倍もらえるなら悪くはないでしょう。
みねた)こちらも予想原稿執筆段階では8.3倍。「週中展望で6倍あれば悪くない」と書いていましたが、内心は「そんなにつくわけないだろう」とも思っていたので、8倍は望外のオッズだし、除外馬が出ての最終オッズ5.9倍というのは十分に甘かったといえるでしょう。実際、どちらを本命にするか悩みましたが、迷ったら「並び」です。
―展開予想を標榜していますもんね。
みねた)ローズSの場合、パラディレーヌはヴーレヴーとミッキージェリーと2頭並んだ逃げ馬のすぐ内に入ってしまったのが懸念材料でした。一方のカムニャックは逃げ馬テレサの外。カムニャックとパラディレーヌはどちらも期待値があると考えていましたが、並びの差でカムニャックを上位に取りました。「迷ったら並び」はセントライト記念もそうですね。
―◎はファイアンクランツでした。
みねた)このレースの◎候補はファイアンクランツとミュージアムマイルの2頭。ミュージアムマイルは私が使っている指数が抜けていて、実績面に関しても皐月賞1着、朝日杯FS2着と申し分ありません。この2頭で迷い、ファイアンクランツが「逃げハサミ」だったので◎にして、ミュージアムマイルを高▲としたのですが、ファイアンクランツがまさかの外枠発走。展開予想最大の弱点が発動してしまいました(笑)。このミュージアムマイルの2.6倍も甘かったですね。
―これが前回のコラムのラストで触れていた「今のトレンド」ということでしょうか?
みねた)はい。一言で言えば、「明らかな実績上位馬に対して懐疑的に捉えるトレンド」です。ローズSのカムニャック、セントライト記念のミュージアムマイル、そしてオールカマーのレガレイラを思い浮かべてください。期待値を考える上では「実績的に○倍ぐらいが妥当だろう」という想定が重要になりますが、これらの馬たちはいかがですか?
―カムニャックは先ほどから挙がっている通り、フローラSとオークスを差し切り勝ち、ミュージアムマイルは皐月賞馬、そしてレガレイラは前年のグランプリホース(有馬記念の覇者)。どれも1倍台になっていても不思議ではなさそうです。
みねた)3頭に共通しているのは「G1馬である」という点です。しかも後者の2頭は今回と同じ中山コース施行のG1レース。それでいてカムニャックが2.9倍、ミュージアムマイルが2.6倍、そしてレガレイラは3.3倍です。レガレイラについては週中展望で「力を出せれば上位争いは必至で、想定3.2倍は実績に対してかなり甘いのでは」と書きましたが、実際はそれ以上のオッズとなりました。やはり実績馬に対して辛く、適性のありそうな上がり馬を甘く評価するトレンドを感じずにはいられません。これは期待値馬券をしっかり把握している人間にとっては僥倖です。強い馬が甘い=的中率も高くなるので、連敗に耐える時間は少なく、短期間で資金を回して増やしていけるわけですから。
―「実績的に○倍ぐらいが妥当だろう」という視点を忘れなければ、勝ちやすいターンに入っているということですね。
みねた)はい。これは非常に重要な視点なので、次回、オールカマーをサンプルにさらに深掘りしていきましょう。