プロ馬券師・みねた氏が実践例を交えながら予想理論の金言を伝える『馬券師・みねたの金言』。今回の金言は“組み合わせの期待値について改めて考える(前編)”です。
なお、『競馬放送局』ではみねた氏の厳選勝負レース、重賞予想を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください。
▼今週の重賞ピックアップ
12月7日 中京11R チャンピオンズカップ ダート1800m
チャンピオンズカップは中京ダート1800mで施行。初角までの距離は300mを切っており、先行争いにおいて内枠が有利なコースです。ハイレベルなG1レース、強い先行馬も揃ったここは、メンバー構成的にも内枠がベターでしょう。
1番人気想定はナルカミ。レモンポップ、ミッキーファイトとダートの強豪を送り出す田中博康厩舎の有望株です。前走のジャパンダートクラシックは強かったですね。3歳ということで斤量が1キロ貰えるのは良いですが、古馬トップクラスを相手に逃げて勝つのは簡単なことではありません。また、唯一の敗戦が今回と同じ中京ダート1800mというのは少し気になります。
2番人気想定ルクソールカフェも3歳馬。武蔵野Sを0.6差圧勝。2走前のジャパンダートクラシックでは3着とはいえナルカミに2.4秒遅れを取りました。JRAでの適性という点ではナルカミより安心感はありますが、同程度のオッズだとしてナルカミ基準で考えると買いづらいところ。非常に評価の難しい1頭です。
3番人気想定はダブルハートボンド。前走のみやこSではレコードで古馬・牡馬を撃破しています。1800mでレコードを記録し、唯一の敗戦が2000m。この距離のスペシャリストと考えて良いでしょう。懸念材料があるとすれば、逃げ馬なので展開面。ナルカミと競るのか、控えるのか。ナルカミと競ると展開面では恵まれないのでどう乗るか。5.4倍だと少し辛く映ります。
展開面、臨戦過程を考えるとウィルソンテソーロ。ダート中距離戦線の王道を歩んでいる馬で、チャンピオンズカップは2年連続2着とこの条件にも実績があります。前走のJBCクラシック2.2秒差というのは負け過ぎにも映りますが、それゆえに純粋な力負けではないともいえますし、期待値も積まれたはず。先行集団の一列後ろから差せるのもいいですね。
期待値がありそうという点ではメイショウハリオも魅力的。前走のJBCクラシックは7番人気での2着好走でしたが、2走前には川崎記念を制しており、平安Sでの一度の大敗で人気が急落していました。実績に対して人気にならないタイプで、「お気に入り登録」してこの先も追いかけることをオススメします(笑)。末脚の確かなタイプで、ここは展開的にも向きそう。
ラムジェットは昨年の東京大賞典でフォーエバーヤングと0.3秒差。その影に隠れていますが、この世代では上位の能力を秘めています。前走のみやこSは4着止まりでしたが、4コーナー13番手では止むなし。展開面を味方につければ、馬券圏内突入の可能性は十分にありそうです。
強い先行馬がバチバチやりあって、消耗戦になりそうな一戦。馬券的にも考え甲斐のあるレースですね。なお、枠順確定後の最終結論および買い目は『競馬放送局』をご覧ください。
▼みねたの金言210
組み合わせの期待値について改めて考える(前編)
★ピックアップレース★
11月15日 京都9R 深草特別 ダート1200m 良
◎11ビッグドリーム
高○13ジェネラーレ
穴▲9ハリウッドブルース
穴△4スペシャルナンバー
穴☆15ヨシノヤッタルデー
注3エルサトアナ
注5ズバットマサムネ

―今回は11月15日京都9Rの深草特別を取り上げます。高○→◎→穴△という決着で3連複131.6倍、3連単494.9倍となり、レース後には「ベストの当たり方」とポストされていましたね。
みねた)印順の決着というわけではありませんが、見解文に「単勝期待値のあるタイプでは無いが軸では良い」と書いていたビッグドリームが2着で、単勝購入を推奨している高○のジェネラーレが単勝7.8倍で1着。そして3着に11番人気の人気薄ながら穴△評価としたスペシャルナンバーが3着ですから、払い戻し額が跳ねるという点で理想的な入線順だなと思いました。
―ビッグドリームは単勝1.9倍ですからオッズ切りの対象ですね。みねたさんがいつもおっしゃっている「2回に1回以上勝てる本命馬はそうそういない」という観点からも、このオッズではビッグドリームに単勝期待値がないのは納得できます。でも◎なんですね。オッズ的にはジェネラーレを◎にする世界線もあるのかな、と。
みねた)仮に単勝しか買えない環境だったらそうするでしょうね。まず、この馬の話からしましょうか。ただ、このコラムの愛読者であれば馬柱でピンとくると思いますよ。金言207を読んでください。
―「大幅条件変更を仕掛けた馬は引退まで追いかけろ」というテーマですね。
みねた)はい。簡単に言うと、「大幅条件変更を仕掛けられるような馬は、陣営が長く現役を続けさせたいと思っているから期待されているよ」という話です。素質を感じているからこそ可能性を探っているわけですね。
―この馬の場合、2走前ですね。
みねた)それまで14戦して1400mまでしか使われていなかった馬が、1150m→1800mという大幅な距離延長ローテを仕掛けられました。1.8秒差で結果的には距離が長かったかなという印象ですが、「1800mを使った」という事実が、陣営の期待度を裏付けます。そしてそこで負けることでオッズチャージもされます。この馬の場合は、そこから休み明け初戦の1400m戦でも二桁着順をひいたことで、一層、期待値が積まれました。
―そして今回はさらに距離を200m縮めての1200m戦。
みねた)このレースの直近6戦全てでハナを譲っていないぐらいですから、スタートの速さやテンのスピードには非凡なものがあるので、やはり距離は短いに越したことはないのでしょう。1800mを経験したことで粘りが増したという側面もあると思います。
―ベストの1200mに戻って能力全開、ということですね。
みねた)ハナを奪うスピードを考えるとベストは1000mだと思いますよ。だから目の前のレースを勝つ可能性を上げることだけ考えるなら1000mを使えばいいのですが、敢えて1800mを使っているのは、陣営が能力を評価しているのに他ならないのです。
―◎だったかのように、理由がスラスラ出てきますね(笑)。
みねた)もう1点補足すると、このレースは能力指標的にビッグドリーム1頭だけがS評価で、ジェネラーレはそれに次ぐ評価でした。1頭強い馬がいて、2番手も明確というレースにおいては、2番手の馬の単勝に妙味があります。これまでにも何度もお話ししていますが、競馬という競技はゴールの瞬間に1位でいることを競うもので、タイムトライアルではありません。S評価の強い馬が1頭だけいるレースでは、他の馬はそのS評価馬をゴールで交わしていることだけ考えれば必然的に1位になる可能性が高いので、レースプランを立てやすいですよね。
―ここではジェネラーレが逃げに徹してビッグドリームの追撃をアタマ差振り切りました。さて、ここで話を戻して、単勝期待値がないとわかっていたのにビッグドリームを◎にした理由についてお願いします。
みねた)「組み合わせの期待値」です。単体では期待値がなくても、他の馬と組み合わせることで期待値が取れるというやつですね。このレース、3連単の配当は494.9倍でしたが、仮にビッグドリーム→ジェネラーレ→スペシャルナンバーだったとしても376.0倍だったんですよ。
(次回に続く)
