プロ馬券師・みねた氏が実践例を交えながら予想理論の金言を伝える『馬券師・みねたの金言』。今回の金言は“先行馬が揃った一戦の狙い方を復習する”です。
なお、『競馬放送局』ではみねた氏の厳選勝負レース、重賞予想を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください。
▼今週の重賞ピックアップ
12月21日 阪神11R 朝日杯フューチュリティS 芝1600m
朝日杯フューチュリティSは阪神芝1600mで施行。初角までの距離は400m以上あるので、先行争いにおける内外の有利不利は少ないコースです。
先週に続いて阪神芝1600mの2歳G1となりますが、個人的には、朝日杯フューチュリティSは中山芝1600mで施行した方がスリリングなレースになりそうな気がします。それはさておき、今年はA級マイラー候補がズラリと揃った印象で、ハイレベルな一戦となりました。来年のNHKマイルCを占う上でも重要なレースとなるでしょう。
1番人気想定はリアライズシリウス。2戦2勝で新潟2歳Sを制しました。格が上のレース、特に2歳戦では差し経験が重要になる中で、2戦ともに先行策というのはマイナスではありますが、内容は圧巻。芝1600mの重賞で後続に0.7秒差というのは相当能力が高くないとできない芸当です。1番人気・3.3倍が過剰人気ということはないでしょう。
2番人気想定はアドマイヤクワッズ。こちらも2戦2勝の重賞馬です。9番手から差し切ったデビュー戦も優秀ですが、こちらも前走のデイリー杯2歳Sが非の打ち所がない内容。道中6-7と脚をためた上で、レコードを叩き出しました。文句のない勝ち方で、有力な◎候補です。「リアライズシリウスとどちらが強いか」は走ってみないとわかりませんが、馬群の経験がある分、こちらの方が死角は少ないですね。
3番人気想定はエコロアルバ。これまた2戦2勝の重賞馬ですね。新馬戦が9-9から、2戦目のサウジアラビアRCも8-8から直線一気の差し切り勝ち。アドマイヤクワッズが素晴らし過ぎるので相対的に霞んでしまうのですが、十分に好内容ではあります。あとはオッズ次第。血統面などやや地味な印象なので、オッズが甘くなるようなら。
4番人気想定のカヴァレリッツォはデイリー杯2歳Sでアドマイヤクワッズとタイム差なしの2着。3着は5馬身引き離しています。敗戦自体はオッズが甘くなってプラスですが、3-2と理想的な競馬で負けてしまったのは気になるところ。とはいえ、十分に能力の高さは示していますし、「G1でのC.デムーロ」は魅力的。この馬もオッズ次第という面が大きく、現時点での評価は流動的です。
5番人気想定のダイヤモンドノットは京王杯2歳Sの勝ち馬。G2で0.5秒差は一定の評価をするべきでしょう。差し経験、1600m経験がないのはマイナスですが、豊富なキャリア、そしてルメール騎手騎乗はプラス要素。それらを勘案した上で、想定9.6倍が見合うかどうかという判断になります。
上位陣は強力ですが、上位から1頭崩れた時に台頭してきそうなのがスペルーチェ。新馬戦ではアドマイヤクワッズに0.1秒遅れを取りましたが、続く未勝利戦は8-7からしっかり差し切りました。想定34.5倍というオッズほど、上位と差はないと考えます。
ホワイトオーキッド、レッドリガーレは新馬戦の勝ち方が評価できる1戦1勝馬。未知の魅力に賭けるならこの辺りが候補に入ってきそうです。
なお、枠順確定後の最終結論および買い目は『競馬放送局』をご覧ください。
▼みねたの金言212
先行馬が揃った一戦の狙い方を復習する
★ピックアップレース★
11月24日 福島6R 2歳未勝利 芝1200m良
◎2ジャスパールビー
高○15ミスターマーボー
高▲12キトゥンズシルバー
穴△14カンレイスター
☆10セイカユウヒ
注1ニルマーネル
注5カレンデュラ
注8リラベガ

―今回取り上げるのは11月24日福島6Rの2歳未勝利。◎→高○→注で決着し、単勝6.5倍、馬連23.6倍、馬単43.7倍、3連複81.0倍、3連単381.8倍的中です。
みねた)決着自体はみねた理論の基本通り。ですから、このコラムの愛読者の方や単行本をお持ちの方にとっては難しくなかったと思いますよ。「先行馬が揃ったレース」におけるセオリー通りの決着でした。
―新しくコラムの読者になった方もいらっしゃると思うので、復習を兼ねて簡単に解説していただけますか?
みねた)このレースで前走の通過順位に3番手以内があったのは9頭。先行馬の占有率が56%という先行馬占有率の高い一戦でした。先行馬が揃ったレースでは、まず注目すべきは(1)内枠、(2)距離短縮の2点です。
先行馬が揃ってペースが速くなると、レースはタイムトライアルの様相を呈すので外を回していると物理的に間に合わなくなる。そのため内枠が有利になります。また、先行馬同士の比較においては、前回よりも距離が短くなって楽に感じる距離短縮馬にアドバンテージがあります。実際にレースでは1枠の馬が2頭馬券に絡み、1、2、3着馬は全て距離短縮ローテの馬でした。
―教科書通りの決着だったわけですね。にもかかわらず3連単400倍弱は望外の高配当とでもいいましょうか。
みねた)逃げ馬、先行馬を狙うファンは多いと思います。予想家の方にも、まずは逃げ馬、先行馬を出発点に予想を組み立てる方はいらっしゃいます。競馬は基本的に逃げ・先行有利だから当たり前といえば当たり前ですよね。例えば逃げ馬候補が1頭だけだったら迷うことはないでしょう(もちろん、わかりやすくなることでオッズが辛くなるという側面はありますが)。ただ、このレースのように逃げ9=逃げ先行馬が9頭もいると、選択しなければなりません。「逃げ(先行)馬を買う」に加えて「逃げ(先行)馬を比較して選ぶ」という手順が1つ加わることによって、難易度が上がるのです。
―このレースの場合、先行馬の中で(1)内枠かつ(2)距離短縮だったのがニルマーネルであり、ジャスパールビーだったと。(1)内枠や(2)距離短縮以外で、逃げ先行馬が揃ったレースの狙い方はありますか?
みねた)物理的な距離ロスがなければいいので、(3)行き切れそうな馬、というのは1つの選択肢になり得ます。このレースでいえば、前走で同距離の未勝利戦をテン33.4秒で逃げていた5カレンデュラが候補になるでしょうか。ただ、今回は自身の内枠にいる1枠2頭も前走逃げで、物理的に行き切れるかは微妙でしたね。
同脚質が揃っているので別脚質、すなわち差し馬を◎にするという選択肢もあります。その場合は、10-8-7みたいに道中で押し上げるタイプよりも7-9-9といった「位置取りを下げながら巻き返した馬」の方がベター。このレースでも、内目の枠にほどよい「位置取りを下げながら巻き返した馬」がいれば◎を打った可能性はあるでしょう。
―まとめると、先行馬占有率の高い一戦においての狙い目は(1)内枠、(2)距離短縮、(3)行き切れそうな馬、(4)位置取りを下げながら巻き返した(差し)馬、といったところでしょうか。
みねた)あとは、レースの格による狙い方の変化もあります。例えば、この福島6Rと同日に行われた東京スポーツ杯2歳Sも先行馬占有率が50%、12頭中5頭が前走逃げというレースでしたが、ローカル短距離の未勝利戦と2歳重賞では当然、意味合いが違います。このレースでは「どの先行馬が残るか」よりも、将来を見越して教育していることを重視して、新馬戦で5-7から2着、2戦目も6-5-5-5と脚をためていたパントルナイーフに◎を打ちました。
―ルメール騎手騎乗で3番人気7.3倍は美味しかったですよね。鮮やかな差し切り勝ちでした。
みねた)ちなみに1戦1勝の逃げ馬と2戦2勝の逃げ馬でも全く違います。2戦続けて逃げ切っている馬は今回も逃げる可能性が高いですが、1戦だけだと“たまたま”逃げただけという可能性もありますし、1戦1勝の逃げ馬が集結したら、大半の馬は今回、逃げられないわけですから。実際、1番人気に推されたダノンヒストリーは10番手から伸び切れませんでした。
―この日だけで「先行占有率の高い一戦」の狙い方がほぼ網羅されていましたね。福島6Rの個別の馬についての解説は、次回、お願いします。
