日曜日、中京競馬場ではGI・チャンピオンズカップが行われます。レース名に因んで出走馬の入場時に流れる曲が「ザ・チャンピオン」です。競馬ファンの間でも特に人気の高い入場曲で、1987年の暮れから2009年まで関西地区のGI競走時に使用され、現在では関西地区の八大競走と宝塚記念、そしてチャンピオンズカップで使用されています。
「ザ・チャンピオン」を作曲したのは、世界に冠たる作曲家・編曲家の鷺巣詩郎さんです。エヴァンゲリオンシリーズやシン・ゴジラ、シン・ウルトラマンなど庵野秀明監督が携わった作品の音楽を担当していることでも知られています。また、数多くのシンガーやアーティストの楽曲を手がけていて、そのひとりMISIAさんが歌声を響かせた東京オリンピック開会式での「君が代」の編曲も鷺巣さんが担当しました。
そんな鷺巣さんが35年前に依頼を受けたのが中央競馬のファンファーレと入場曲でした。1987年というのは日本中央競馬会の略称が「NCK」から「JRA」に変わるなど中央競馬のイメージアップが図られた年で、ファンファーレや入場曲も一新されたのです。
当時はアイドル歌謡や「笑っていいとも!」の音楽などを手がけていた30歳になったばかりの鷺巣さんは、JRAから録音のために召集されたセッションで、すぎやまこういちさん、宮川泰さん、前田憲男さん、服部克久さん、川口真さんといった、親子ほど年齢の離れた大御所の巨匠に混じり「何かの間違いだろ」と思ったそうです。
そんな鷺巣さんが手がけたのは、札幌・函館競馬場で使用されるファンファーレです。毎年、北海道シリーズが開幕すると、鷺巣さんが作った涼やかで青空に突き抜けていくような音色とメロディーの一般競走ファンファーレとともに、夏の訪れを実感する競馬ファンは多いはずです。また個人的にも、北海道シリーズの重賞ファンファーレは北の大地の壮大な重厚感が感じられて、お気に入りのファンファーレです。
最後に、皆さんに是非とも紹介したい作品があります(もちろん案件ではございません)。今年1月にリリースされた「SHIRO’S SONGBOOK 11」という2枚組のアルバムです。鷺巣さんのライフワークとも言える作品集「SHIRO’S SONGBOOK」シリーズの11作目で、「エヴァンゲリオン」「シン・ゴジラ」など自身の作品のセルフカバー33曲が収録された鷺巣さんの集大成。この中にアレンジも曲名も違う「ザ・チャンピオン」が2曲収録されているのです。
このうち2枚目に収録された「the champion(champion of the game)」は競馬場で流れる「ザ・チャンピオン」の完コピ版セルフカバー。と言っても、途中に競馬場では聴いたことがないギターソロが入っているなど、格好いいアレンジに仕上がっています。
一方、特に聴いていただきたいのが、1枚目に収録されている「the sport of kings (champion of the game)」という曲です。なんと「ザ・チャンピオン」が英語詞の合唱曲としてカバーされていて、そのイントロは札幌&函館競馬・一般競走ファンファーレのアカペラ合唱という、鳥肌が立つようなアレンジなのです。とにかくメチャクチャ格好いいので、是非一度、聴いてみてください。また、CDに同封された鷺巣さん本人によるライナーノーツがかなり面白いので、興味がある方はCDの購入もオススメします!
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大澤幹朗
1973年9月22日生まれ。千葉県出身。IBC岩手放送アナウンサー時代に岩手競馬のレース実況に携わり、メイセイオペラら名馬と出会う。2003年にフリー転身後、2006年よりグリーンチャンネル中央競馬中継キャスターに。2013年からは凱旋門賞など海外中継も担当。そのほか、WOWOWヨーロッパサッカー実況アナウンサーとしても活動中。