競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。
今回のテーマは「函館のレコードラッシュ」について。
今週、最終週を迎える今年の函館競馬では数多くのレコードタイムが生まれました。
“レコードラッシュ”の始まりは、開幕日6/14(土)の第5R、芝1000mの新馬戦でした。3馬身差で逃げ切ったスワーヴリチャード産駒の牝馬カイショー(池添謙一)の勝ち時計は56秒4。これは、1979年に往年の名牝ハギノトップレディがマークした57秒2の2歳馬のコースレコードを46年ぶりに0秒8も更新し、古馬のコースレコード57秒0をも0秒6上回るものでした。
芝1000m戦での「56秒4」を上回るタイムというのは、実は新潟の「千直」でしか出ておらず、コーナーコースに限れば日本レコードです。開催初日から、函館の芝が野芝だった時代の昭和54年のレコードが更新されるというインパクトは強烈でした。
同じ日のメインレース、函館スプリントステークス(GIII)をハナ差勝ちした4歳牝馬カピリナ(戸崎圭太)のタイムは1分6秒6。2017年にジューヌエコールが同じレースでマークしたタイムを0秒2更新する、函館競馬場芝1200mのコースレコードでした。
開幕2日目の6/15(日)。この日も5Rの新馬戦でコースレコードが生まれました。芝1200m戦で新種牡馬フィレンツェファイア産駒の牝馬ルージュサウダージ(小沢大仁)がマークした勝ち時計は1分8秒4。従来の記録を0秒3更新するコースレコードでした。
ところが、このレコードはわずか1週で更新されます。翌週6/21(土)第5R、芝1200mで行われた牝馬限定の新馬戦。好位から抜け出し、3馬身差をつけて勝利したキタサンブラック産駒のブラックチャリス(浜中俊)の勝ち時計は1分8秒2。前週に出たレコードを0秒2更新し、函館の芝の新馬戦は、開幕から3戦連続でレコード決着となりました。
個人的に最大の衝撃だったのが、翌週6/29(日)の函館記念(GIII)。優勝したヴェローチェエラのタイムは1分57秒6で、1988年の函館記念でサッカーボーイがマークし“不滅”と思われていたレコードを0秒2上回ったのでした。
サッカーボーイによる37年前のレコードタイムについては、1年前の当コラム「サッカーボーイの函館記念が不滅のレコードである5つの理由」(2024.7.11公開)で詳しく検証したのですが、よもや1年後に更新されることになろうとは思っておらず、正直言ってショックでした。
“不滅”の記録が破られた背景には、これまで開催最終週だった函館記念の日程が開催3週目に移ったことなどもあると思いますが、それにしても、その記録を破った馬の名前がイタリア語で「ヴェローチェエラ(速い時代)」だったというのは単なる偶然でしょうか。
函館のレコードラッシュは開催の後半に入っても続きます。開催4週目7/5(土)の5Rで行われた新馬戦では、今度はダート1000mの2歳コースレコードが樹立されました。小林美駒騎手が騎乗した昨年の新種牡馬フォーウィールドライブ産駒の牡馬エムフォーが、2着に大差(1秒9差)をつけ圧勝。重馬場での勝ち時計57秒9は、従来の記録を0秒6更新するものでした。
芝がBコースになった開催5週目の先週は「芝1800m」でレコードタイムが続出しました。
7/12(土)の5Rで行われた芝1800mの新馬戦。ソダシの半妹で、モーリス産駒の白毛馬マルガが武豊騎手を背に人気に応えて逃げ切り勝ち。勝ち時計1分48秒1は従来の記録を7年ぶりに0秒2更新する2歳コースレコードでした。
翌7/13(日)の9Rで行われた2勝クラスの芝1800m戦「北海ハンデキャップ」では、3歳牝馬ミッキージュエリー(丹内祐次)が逃げ切って3連勝。勝ち時計1分45秒6は、クロコスミアが2017年にマークした1分45秒7を0秒1更新するコースレコードでした。
すると、同じ芝1800mを舞台に行われたこの日のメインレース、OP特別の「巴賞」では、ディープインパクト産駒の6歳牡馬ケイアイセナが1分44秒8をマーク。ミッキージュエリーが8年ぶりに更新したばかりの記録を、それからわずか1時間10分後、今度は0秒8も更新するという驚異のレコードでした。
さて、函館競馬はいよいよ最終週。今週もレコードタイムが出れば、開催6週すべてでレコードが生まれるということになります。
注目は日曜メインの函館2歳S(GIII)。芝1000mのレコードを46年ぶりに更新したカイショー、芝1200mのレコードを樹立したブラックチャリス。2頭の2歳コースレコードホルダーが揃った重賞は、どんなタイムで決着するのでしょうか。
芝1200m戦は先週も1分8秒台の決着となっており、今後の天候次第でレコードタイムが生まれる可能性は十分にあると思いますが、果たして・・・。