競馬キャスター・大澤幹朗氏がお届けする、知れば競馬の奥深さがより味わえる連載『競馬キャスター大澤幹朗のココだけのハナシ』。
今回のテーマは、今月14日に行われるサウジカップについて。
今月14日にサウジアラビアのキングアブドゥルアジーズ競馬場で行われるG1サウジカップ(D1800m)で、レース史上初の連覇を狙うフォーエバーヤング(牡5/栗東・矢作芳人)は、火曜日に栗東での国内最終追い切りを終え、水曜日、現地へ向け出発しました。
フォーエバーヤングのサウジアラビア遠征は3年連続になりますが、過去2年のレースは、いずれも「伝説」となっています。
▼2024年2月24日
G3サウジダービー(D1600m)1着
2023年10月の京都での新馬戦(D1800m)は4馬身差、11月のJBC2歳優駿(JpnIII 門別D1800m)は2着サンライズジパングに1馬身半差、12月の全日本2歳優駿(JpnI 川崎D1600m)は7馬身差の圧勝。2歳時を無傷の3連勝で終えたフォーエバーヤングは、3歳シーズンの初戦として、サウジカップデーのアンダーカードG3サウジダービーに出走しました。
海外ブックメーカーが圧倒的1番人気に評価する中、初の海外遠征だったフォーエバーヤングは、スタートでタイミングが合わず中団からの競馬に。コーナーでは外々を回る苦しい展開になりました。
先に抜け出したベントルナート(米国)を、直線でブックンダンノ(米国)が捕らえると、これを大外からフォーエバーヤングが猛追。ゴール前は際どい決着となり、アタマ差でフォーエバーヤングが制しました。
このレースで2着だったブックンダンノは、その後3歳時にG1ウッディ―スティーブンスS、4歳時にG1フォアゴーSとダート7FのG1を2勝。一方、2頭から6馬身離れた3着だったベントルナートは、BCスプリントを3歳時に2着、4歳時には見事に勝利し、2025年のエクリプス賞で最優秀短距離馬に選ばれました。
上位3頭が、その後それぞれの距離路線でG1を勝利し、2頭がエクリプス賞を受賞した一戦は「伝説のサウジダービー」となったのでした。
▼2025年2月22日
G1サウジカップ(D1800m)1着
4歳になったフォーエバーヤングは2年連続でサウジアラビアに遠征。世界最高賞金レースのG1サウジカップが2025年の初戦となりました。
日本からは他にも、ウィルソンテソーロ、ラムジェット、ウシュバテソーロが参戦。前年のGI東京大賞典の上位4頭が揃うという強力なメンバーでしたが、これに立ちはだかったのがロマンチックウォリアーでした。
前年の香港カップでは日本のダービー馬タスティエーラや3冠牝馬リバティアイランドらを相手に楽勝して3連覇を果たした香港の英雄は、それまで一度も日本馬に負けたことがない「日本馬キラー」。
海外遠征でも、5歳時にオーストラリアのG1コックスプレートを、6歳時には日本のGI安田記念を制している7歳セン馬は、中東に遠征することになり、前走はドバイターフの前哨戦G1ジェベルハッタ(芝1800m)を圧勝。今度は「最初で最後」のダート戦に挑むことになったのです。
スタートを決めた大外14番ゲートのフォーエバーヤングはダッシュを利かせて先団につけることに成功。これをロマンチックウォリアーは直後でピタリとマークしました。4コーナー手前で先に動いたのはJ・マクドナルドのロマンチックウォリアー。外に出すと先行勢を一気に捲って先頭へ。あっという間に交わされたフォーエバーヤングらは、このまま突き放されてしまうかに見えました。
しかし、他馬が次々と脱落していく中、手応えを残していたフォーエバーヤングだけは違いました。残り200mで手前を替えると、坂井瑠星騎手はロマンチックウォリアーの外に出して猛然と追い込み開始。一度は2馬身ほど離された差を、残り100m、50mと、じわりじわり詰め、最後は力でねじ伏せるようにして、クビ差逆転したのでした。
かたや、国内無敗、ケンタッキーダービーとBCクラシック3着という日本のダート王。かたや、この時点で芝のG1レース10勝という香港の英雄。奇跡的に実現した最初で最後の対決は珠玉の名勝負となりました。
この2頭と、3着に食い込んだウシュバテソーロとの差は「10馬身半」。このレースでのレーティングは、フォーエバーヤングが128、ロマンチックウォリアーは127となり、歴史的一戦の評価は数値でも証明されたのでした。
そして2026年。BCクラシックを制し、史上初めてダートホースとしてJRA賞の年度代表馬に選ばれたフォーエバーヤングの集大成となる5歳シーズンも、砂漠の国サウジアラビアからスタートします。
今年のメンバーにロマンチックウォリアーの名前はありませんが、ダート競馬の本場アメリカから、去年のBCダートマイルを制したナイソス(牡5/B・バファート)が参戦してきます。2000mのBCクラシック優勝馬と、1600mのBCダートマイル優勝馬が、ダート1800mでぶつかる「頂上決戦」です。
フォーエバーヤング3度目のサウジアラビアへ――。物語の最終章が始まります。
▲東京競馬場で開催中のフォーエバーヤングBCクラシック優勝記念展示
