プロ馬券師・みねた氏が実践例を交えながら予想理論の金言を伝える『馬券師・みねたの金言』。今回の金言は大事なのは“比較”ではなく“予想”です。
なお、『競馬放送局』ではみねた氏の厳選勝負レース、重賞予想を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください。
▼今週の重賞ピックアップ
11月2日 東京11R 天皇賞(秋) 芝2000m
天皇賞(秋)は東京芝2000mで施行。初角まで120mほどしかない「コースパターンA」の中でも、特に初角までの距離が短いコースで、先行争いにおいては内枠が有利です。
登録15頭中、前走の通過順位に3番手以内があるのは4頭。先行争いはそれほど激しくはならず、どの馬が先に動くのかを見極めるのも1つのポイントになりそうです。
3歳トップクラスが2頭参戦し、古馬勢も多士済々。楽しみなメンバーが揃いました。
1番人気想定のマスカレードボール、2番人気想定のミュージアムマイルはともに3歳馬。春クラシックの王道を歩んだ2頭です。マスカレードボールは天皇賞(秋)と相関性の高いダービーを2着していますし、ミュージアムマイルは皐月賞馬で中距離では底を見せていません。どちらも有力候補であることは間違いないでしょう。2頭の比較では、マスカレードボールが想定3.0倍とミュージアムマイルが想定5.4倍なら後者に妙味がありそうに感じます。
3番人気想定はシランケド。2着のエネルジコが菊花賞を3着のディープモンスターが京都大賞典を制したように、新潟記念はレベルの高い一戦でした。6-5-7-7と道中で二度脚を使いながら勝ち切った内容も価値があります。ただ、エネルジコが春クラシック不出走であるため、前出の3歳馬2頭の力関係は量れません。また、実績的にこの馬が古馬の人気最上位というのはやや違和感もあります。「知らんけど」と舐められているタイミングで買いたいタイプではあります。
メイショウタバルは春のグランプリ宝塚記念を快勝。正直、直近の成績を考慮すると宝塚記念での11.4倍は売れ過ぎの印象で、今回の想定10.5倍の方が買いやすく感じます。ただ、典型的なピンパータイプのピン=1着後というのは買いのタイミングではないようにも思えます。
タスティエーラは昨年の天皇賞(秋)で◎を打ち、9番人気(53.8倍)2着と期待に応えてくれた馬。今年は想定5番人気・10.6倍ですが、香港のG1で3着、1着とさらに実績を積み上げて臨むことを思えば、非常に甘いオッズに映ります。◎候補。
ジャスティンパレスは2年前のこのレースを1.55.6で駆けてイクイノックスの2着。あと一歩詰めを欠く現状で、今回も善戦止まりの可能性もありますが、突き抜ければお釣りがくる想定オッズ(11番人気・25.8倍)です。
ホウオウビスケッツは昨年の3着馬。高配当的中の一翼を担ってくれた馬です。毎日王冠2着からの臨戦は昨年と同じ。その毎日王冠は勝ち馬レーベンスティールに全てが向いた感があり、3歳トップグループの一角サトノシャイニングには先着しての2着は悪くありません。
毎日王冠の内容を加味すると◎は古馬から選ぶのが妥当かなという印象ですが、それも並びとオッズ次第。しっかり吟味して正解を導き出したいと思います。
なお、枠順確定後の最終結論および買い目は『競馬放送局』をご覧ください。
▼みねたの金言205
大事なのは“比較”ではなく“予想”
★ピックアップレース★
10月5日 東京11R 毎日王冠 芝1800m良
◎9レーベンスティール
○8ホウオウビスケッツ
▲10サトノシャイニング
△2エルトンバローズ
☆6チェルヴィニア
注1ロングラン

―◎→○→▲の完璧決着だった毎日王冠、前回は◎レーベンスティールについて伺いましたが、今回は「◎エルトンバローズと迷った」世界線について掘り下げてみたいと思います。
みねた)こちらの買い材料もこのコラムや単行本『競馬場と前走位置取りだけで恒常的に勝つ方法』を読んでいただいている方ならすぐにわかったと思います。まず先行馬の配置。このレースで5頭いた先行馬(前走の通過順位に3番手以内がある馬)の馬番は2番、7番、8番、10番、11番でした。2エルトンバローズだけが離れて配置されており、有利な並びでしたよね。
―しかも外の2頭はそれぞれ並びになっているので、先行争いでロスが生じそうです。
みねた)そうですね。それに加えて東京芝1800mはコースパターンA(コースパターンの詳細は単行本『競馬場と前走位置取りだけで恒常的に勝つ方法』参照)ですから、「内枠である」という事実も大きなアドバンテージ。エルトンバローズは「1頭離れて配置された先行馬+有利な内枠」、レーベンスティールは「7番、8番、10番、11番が先行馬という並びでの逃げハサミ」とどちらも強烈な並びだったのです。最終的にレーベンスティールを選んだのは、前回お伝えした通り、レーベンスティールのすぐ内が強い逃げ馬であるホウオウビスケッツだったから。仮に7番と8番、つまりシルトホルンとホウオウビスケッツの並びが逆だったら、おそらくエルトンバローズを◎にしていたと思います。
―会心の的中でしたが、実は紙一重だったということですね。そして迷いに迷ったエルトンバローズが4番手評価になっているというのもみねたさんらしいなと。
みねた)レーベンスティールに◎を打つ=レーベンスティールの好走に期待するということは、ホウオウビスケッツがきちんと先行している想定になりますよね。ホウオウビスケッツが先行しているということは、エルトンバローズにとって楽な展開になっていないということでもあります。
―「印から逆算した買い目の組み立て」ですね。
みねた)いくら◎で迷ったからといってエルトンバローズに○を打つことになりません。馬券ファンの方は、能力が高いとか期待値がありそうだとか、良いと思った順に印を打っているケースが多いと思いますが、これって実は、“予想”というよりも“比較”なんですよね。では“予想”とはなんなのか?という話ですが、大事なのは「走っているレースの想像」でしょう。この馬が勝つレースならどの馬が逃げているのか?その馬が逃げた場合、展開はどうなるのか?という。ここなら、「レーベンスティールが走るパターンだと、エルトンバローズが特に恵まれる要素はないな」ということですね。
―「予想ではなく比較」、確かに世の中にはみねたさんよりも競馬の知識が豊富な人はたくさんいると思います。ただ、それを“比較”の材料としてしか生かせてないのかなと思いました。ちなみに、タラレバの話ですが、仮にエルトンバローズに◎を打っていたら、その時の印はどうなっていたか考えてもらえませんか?
みねた)その場合、(力のある先行馬の)外になるディマイザキッドの評価を上げるでしょう。ただ、直近2走がG3で8着→4着ですから能力面で足りるかは微妙なライン。実績十分のホウオウビスケッツよりも高く評価していいものかと悩むでしょうね。ディマイザキッドとホウオウビスケッツのどちらを○にしても間違いではありません。エルトンバローズが内からすんなり先行するなら、行った行ったになる可能性が高いのでレーベンスティールの評価は下げることになるでしょうが、あとはホウオウビスケッツやサトノシャイニングなど強い順に並べることになりそう。そうすると、結局、予想ではなく比較になっちゃってますよね。
―レーベンスティールとエルトンバローズそれぞれが好走するパターンは五分五分だったとしても、レーベンスティールならその先の決着パターンが限られるけれど、エルトンバローズだと流動的だということですね。
みねた)そういうことです。正直言うと、私も最初はエルトンバローズに◎を打っていたんです。ところが、その先を考えていくと、「あれ、◯▲が打てないぞ」となって、◎レーベンスティールに着地したんですよ。
