プロ馬券師・みねた氏が実践例を交えながら予想理論の金言を伝える『馬券師・みねたの金言』。今回の金言は“競馬に勝ちたいなら、1つのことを極めよう”です。
なお、『競馬放送局』ではみねた氏の厳選勝負レース、重賞予想を公開しております。今週末の予想にもぜひご期待ください。
▼今週の重賞ピックアップ
11月23日 京都11R マイルCS 芝1600m
マイルCSは京都芝1600mで施行。初角まで400m弱ほどの距離があるので、先行争いにおいて内外の有利不利はありません。
登録22頭中、前走の通過順位に3番手以内があるのは6頭。おそらく先行馬占有率は33%になりそうで、中団からやや前目につけられるぐらいの馬にアドバンテージがあるでしょう。
1番人気想定はジャンタルマンタル。2歳時から3年続けてマイルG1を制している現役屈指のトップマイラーです。国内でのマイル戦では4-1-0-0。その性能の高さは説明不要でしょう。ここでも当然、最有力候補の1頭です。あとは想定オッズ2.1倍が見合うかどうかだけ。
2番人気想定はアスコリピチェーノ。こちらもまだ国内では5-2-0-0と連対を外していません。ジャンタルマンタルと直接対決だった昨年のNHKマイルCでは後塵を拝しましたが、直線で大きな不利があってのもの。あれで決着がついたとは言えないでしょう。当時は2.9倍同士で人気を分け合いましたが、今回の想定オッズは5.9倍。勝率に3倍も開きがあるとは思えず、期待値の観点ではこちらが上のように映ります。
3番人気想定は昨年の覇者・ソウルラッシュ。心情的には団野騎手で臨んで欲しいところですが、今回はC.デムーロ騎手での参戦となります。今春のドバイターフでロマンチックウォリアーを降したタッグで、この乗り替わりで好走率が上がったのは間違いないでしょう。安田記念、富士Sはともに3着止まりですが、差は僅か。想定6.1倍なら有力な◎候補でしょう。
富士Sでジャンタルマンタルに先着したのがガイアフォース。2走前の安田記念もジャンタルマンタルに0.2秒差の2着ですから、この馬もマイル路線のトップグループを形成する1頭であることは間違いありません。想定11倍なら期待値はありそう。
上位人気勢が強力なので、穴なら別路線組。特に中距離路線からの転戦組に目がいきます。レーベンスティールは前走で毎日王冠を勝利。前年の天皇賞(秋)ではドウデュースと0.5秒差という実績もあり、能力の高さは疑いようがありません。唯一のマイル実績が二走前のしらさぎSで7着。これをどう捉えるかですが、想定16倍なら検討の余地あり。
チェルヴィニアは昨年の牝馬二冠馬で、ジャパンカップでも0.4秒差の4着。近走成績は今ひとつですが、ずっと上位人気に推されてきた馬が今回は6番人気・24.7倍。買い時感はあります。
ラヴァンダは前走のアイルランドTを上がり32.4秒の脚で差し切り。7-8-10としっかり脚をためて伸びたレース内容も濃いものです。想定29.9倍なら面白そう。
ヒモでの大穴候補はロングラン。毎日王冠は7着止まりでしたが、春にはマイラーズCを制した馬で、想定101倍なら。
上位人気勢は強力ですが、「飛ばないだろう」と思った馬でも負けるのが競馬でもあります。しっかりオッズ差も精査して、答えを導き出したいですね。いずれにしても好メンバーが揃って楽しみな一戦です。なお、枠順確定後の最終結論および買い目は『競馬放送局』をご覧ください。
▼みねたの金言208
競馬に勝ちたいなら、1つのことを極めよう
★ピックアップレース★
11月1日 東京10R 紅葉S 芝1600m良
◎10チェルビアット
高○9キュクヌス
高▲12ニシノライコウ
穴△11アスクセクシーモア
☆5ヒシアマン
注2ウォーターガーベラ

―今回取り上げるのは11月1日東京10Rの紅葉S。◎→高○→☆で決着して、馬連44.2倍、馬単70.2倍、3連複26.5倍、3連単223.1倍を完璧に的中しました。このレースのポイントの1つは2番人気のチェルビアットを◎にできた点ですよね。ヒシアマンが2.1倍と被っていただけに。
みねた)これはわかりやすかったのでは? 私の使っている能力指標でもチェルビアットとヒシアマンの2頭がS評価で、ともに血統や厩舎などのプロフィールも煌びやか。手綱を取るのはレーン騎手とルメール騎手と、まさに“両雄”という雰囲気でしたが、臨戦過程は対照的でした。
―ヒシアマンは1勝クラス、2勝クラスと連勝中、一方のチェルビアットはローズS・13着からの臨戦。
みねた)クラスの違いというのは、このコラムでも何度も触れてきましたよね。格上から自己条件に戻るというのは非常に狙いやすいパターンです。このレースの場合、ヒシアマンは5-5-4からの差し切りで前走のレースぶりは悪くありませんが、G2から3勝クラスへの格下がりになるチェルビアットと比較したらかなり差があります。にもかかわらず、ヒシアマンが2.1倍でチェルビアットが4.2倍というのは、いかに馬券ファンが前走に影響を受けているかが再確認できましたね。
―「G2とはいえ13着では…」と感じてしまうんですよね。
みねた)着順を意識せずに考えると、G2のローズSで2番人気→自己条件の3勝クラスでも2番人気って、バーゲンセールみたいに思えませんか? さらに2走前、3走前も精査するとNHKマイルCが3着で桜花賞が6着。「G1で3着6着の適距離に戻り、G1で3着したコースになる」と考えたら、条件面もかなり恵まれています。もしNHKマイルCからの直行ローテで使われていたら、さすがに1番人気になるはずです。人間は感情の生き物ですから、「G2とはいえ13着では…」と感じてしまうのも無理はないのですが。
―前走大敗でも格下がりに妙味がある。クラスの壁というのは、想像以上に大きいということですね。
みねた)人間に置き換えて考えてみてください。格上のところでやっていた人が、その後にレベルを下げたら楽じゃないですか。上のレベルだと10番手ぐらいの存在でも、下のレベルになれば1位になることはザラにあります。しかも自分が勝てるから気持ちよくできる。Aチームではベンチウォーマーだけど、Bチームに入ったら無双する選手はたくさんいます。
―それ、ご自身にスポーツ経験があったり、子供がスポーツをやっている親御さんはイメージしやすいでしょうね。
みねた)やっとAチームに入れた。でもそこから今度はスタメンを目指す戦いがある。これはしんどいですよね。上を目指して戦い続けるのはメンタル的にも肉体的にも大変です。そう考えると、昇級馬と自己条件戻りの馬には大きな差があるし、上の条件で大敗した馬が自己条件で巻き返すのは、いたって自然なことだとご理解いただけるのではないでしょうか。
―チェルビアットはドンピシャで当てはまっていました。
みねた)そこに加えて「逃げハサミ」です。この日は京都7Rも◎モズケイスターで厳選勝負レースを当てているのですが、実はこの馬も「逃げハサミ」でした。
―伝家の宝刀、逃げハサミですか。
みねた)この2レースに共通しているのは、挟んでいる相手も強かったという点です。モズケイスターの内側にいたのはS評価の逃げ馬、チェルビアットを挟んでいた両脇はA評価の馬。このコラムで逃げハサミの考え方を紹介した後に、「全然、逃げハサミなんて来ないじゃないか」というお叱りのDMをいただいたことがあるのですが、逃げハサミならなんでもいいということじゃありません。挟まれている馬自身の能力が足りなければ論外ですし、今回のように挟んでいる馬の強さも重要です。
―挟んでいる馬も強い方が望ましい、と。
みねた)「速い馬や強い馬が進路を作ってくれるから進路取りで恵まれる」というのが逃げハサミのメカニズム。それを紐解けば、進路を作る両脇の馬が強い「逃げハサミ」の方が信頼できるという結論に行き着きます。弱い馬だと進路を切り拓く前にバテてしまいますから。メンバーレベルが高い重賞において「逃げハサミ」の信頼度が高いのも、その証明です。
結局、行き着くのは「競馬に勝ちたいなら、1つのことを極めよう」ということ。様々な馬券術の上っ面をなぞるのではなく、これと決めた方法を徹底的に極めていく。闇雲に「逃げハサミ」を買うのではなく、「逃げハサミ」のメカニズムを極めていけば、自ずと狙うべきパターンが見えてきますよ。
